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言葉を話せるようになる頃には、月に数回あった発作も医者の言うとおり段々と減ってきた。
しかし、今度は皮膚の炎症にも悩まされた。生まれた時から薄い繊細な様子はあったが、赤く発疹がでるようになったのだ。炎症止めのクリームをせっせと塗ってもらうが、一度炎症がでた部位は治るまでには時間がかかる。一瞬で悪化し、完治までは長いのだ。
3歳になったソフィアはその日も発作で寝込んでいた。ベッド横にはシリウス。
「ケホッ…ゼーゼー、ゼーゼー……ここに…ぬゅりぬりしてほしいで…しゅ…」
寝ていたはずの妹が突然そんなことを言った。
首の下にあたるところをソフィアは押さえている。
「ぬりぬり?炎症止めのクリームか?」
シリウスは近くに控えていたステラを見る。
「ちがう…の。スースーしりゅの。」
「スースー??する?」
「ゼーゼーなくしゅ、スースーしゅる。」
……
シリウスとステラは顔を見合わせたが、わからない。なんだろうかと話をしたが、スースーぬりぬりでは情報が足りないのである。ソフィアを二人で覗き込むが、ソフィアは苦しげな呼吸をしつつ眠ってしまっていた。
ソフィアは発作がある度に必ず夢を見た。
夢の中でも発作でベッドに寝ている…
二人の大人に顔を覗き込まれる。
「お父さん…お母さん…」直ぐに誰なのかが理解できる。
「お薬飲んだら、直ぐに治るよ。」
お父さんが寝ていた私を抱え起こし、薬を飲ませてくれた。顆粒なので飲みにくいし苦い…でも、苦しいのが治るのだ。知っている。何度も繰り返したことだから。
ゆっくり水で飲み込むとまたベッドに戻してもらう。
すると今度はお母さんがパジャマのボタンを一つ外し、ゼリー状の薬を首から胸元にかけて優しく塗ってくれた。気持ちがいい。
しばらく撫でてくれてからパジャマを整え、頭の下に冷たいマクラを敷いて温かい布団に包まれた。