表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/68

37

「旦那様。やはりドルト家の手先が増えてまいりました。」

「ふんっ、やはりか。問題はないのだろう?」

「はい。ビビ様たちも監視されてるようで全て何処かに弾かれて行きます。」

「流石だな……。ドルト家は次期王妃を狙っているが、ガブリエラでは到底無理。そんな器ではないと分からないのだから、世話が焼ける。」

「全くです。こちらに火の粉が降りかからないように致します。」

「ああ。頼むぞ、ローレン。」

「かしこまりました。」




ソフィアは数を確認しながら、せっせとスニーカーを創っている。全て騎士団へのものだ。最近は屋敷に居る時間のほとんどをスニーカー創りに充てている。


「お嬢様、休憩しましょう。」

「そうね、ありがとう。」

ステラは完成したスニーカーをまとめ、紅茶の準備をしてくれる。

明日は王城に最後になるスニーカーを届けに行くのだ。そう、終わりは近い。

ふぅ。頑張ったわね。これが終わったら、「さくら」の準備に集中できる。テオとローラの為にも早くオープンさせたいのだ。



翌日、朝からお父様と共に登城する。

馬車の中での定位置、お父様の膝上に座らせられた。

何故かビビたちにも一緒にとお願いしていた、お父様。

ステラの持つバスケットの中で三人は既にお昼寝?中……さっき起きたばかりだが……。


王城に着くと、先にお父様は陛下の執務室に向かう。ソフィアとステラ、ビビたちは王城にあるルルヴィーシュ公爵家の控え室でしばらく休んで待つことになっている。

荷物は衛兵が運んで行ってくれた。

のんびりと庭園の花を楽しみながら歩く。

朝が涼しくなり始めた季節、穏やかな風が吹く度に花がたゆたっている。

綺麗ね……庭師が手入れしている庭園は、季節を先取るような色合い。

ビビたちは興味なく眠っていたが、ステラと二人で足を止め、暫し眺めていた。


「これは、これは。ソフィア嬢!」

突然物陰から声を掛けられた。

!!どなたかしら?

距離は少しあったが、全く見覚えのない紳士だ……しかも勢いよく歩いてくる……。

誰?誰?内心ビクビクしながら、ソフィアはその場に立ち尽くす。

だんだん近付いて来た様子に、怖い!

ソフィアは瞬間的に思った……あと少しで目の前に……どうしよう

と、、、


ぴょーーーん!!!(わぁーぁー……。)


紳士は一気に空に舞い上げられ、遠くに飛ばされてしまった。叫び声もほとんど聞こえない。


あれっ?……ソフィアは慌ててステラを見たが、驚いた様子はない。それどころか、またか……と小さく呟いていた。

「ステラ!どういう事?なにが起こったの?」

答えたのはビビだった。

『ソフィアを狙っていたからね。お城の森に飛ばしたよ。大丈夫!木の上だから!』

何が大丈夫か分からないが、命の危険はないのだろう。

「えっ?私が狙われた?何故?……。」

ビビを見ると既に眠っている。代わりにステラが

「最近、屋敷でもあるんです。不審者をビビ様たちが撃退してくれること。

お嬢様の活躍が不満な輩でしょうけれど、気になさる事はございません。お嬢様を完璧に御守り致します。」

と胸を張って答えていた。


……いやいや、そんなの聞いてなかったよ!

安全なのは、分かるけど……心配してないけど……教えておいて欲しいよ!

ソフィアはドキドキした心臓を押さえ、深呼吸している。

そうか……私が外に出るようになって、状況が変わった人達がいるのね……まぁ、予想は出来るけど……。

はぁ、めんどくさい。

でも、動かし始めた様々な事を諦める訳にはいかない!!

周りの人達には申し訳ない思いもあるが、このまま私は突き進む!


創生の魔法があるのだ!

私は有効に使って――皆で、健康に、なる!

そうだ―――!!

健康は正義!!!



ソフィアは独りで立ち直り、足取り軽く控え室に向かった。



控え室でしばらくビビたちとお茶を楽しんでいると、お父様がやって来た。

先程の報告は聞いていたようで、ビビたちにお礼を言っている。少し困ったような顔をして「大丈夫か?」と聞かれた。

「はい。私はやるべき事をやりますので、宜しくお願いします。」と言うと、一瞬目を見開いたお父様は「任せておきなさい。」と優しく微笑んでいた。



陛下の執務室。

陛下とジル様が待っていた。

ソフィアが挨拶する間もなく、駆け寄って来た陛下に抱き上げられる。

「ソフィア~!大丈夫だったか?あの男は我がコテンパンにしてやるからな!

それにしても、今日も可愛いなぁ~。このまま王城に住んだらどうだ?」

んんっ?陛下……今日はいつも以上にやばいですね……最近お忙しいと聞いていましたが、大丈夫ですか?大丈夫じゃないですね……。

「陛下。お久しぶりでございます。お疲れのようで心配ですわ。無理なさらないでくださいませ。」

「ソフィア~!そうなんだ。ベンが厳しいのだ。やっぱり王城に住むといい。」


……まったく意味がわかりません。


「陛下。ソフィアは王城に住みません。私の娘ですから!」

お父様が私を横から奪い、不機嫌な顔をした陛下だが、

「まずは座りませんか。」とのジル様の声に渋々ソファに座ったのだった。


「ソフィア様。先程、騎士団全員分のスニーカーを確認致しました。これで、サッカーボール・ルールブック・スニーカーと騎士団に支給する事ができます。ありがとうございます。」ジル様の言葉でほっとする。やっと終わった。

「無事に完成させられて良かったです。」

「ソフィア。早速これから騎士団に支給するのだが、一緒に行こう!なぁ、ベン。それくらいよかろう?」

「……仕方ないですね。まぁ、いいでしょう。」

「よし。それなら、試しにボールを蹴らせてみよう!ソフィアも見たいだろう?」

お父様をちらりと見たが、諦めた顔をしている。

「はい。では、是非御一緒させてください。」

せっかくなので、ソフィアも見てみたい気持ちはある。陛下は忙しいのに大丈夫なのかが心配だったが、お父様の様子だとピークは越えたのだろう。なら、少しだけ楽しませてもらってもいいかな!ソフィアも頑張ったのだ!



陛下、お父様、ジル様、ルイ、ソフィアで騎士団の団長室を訪れた。

ビビたちは控え室で留守番中。ステラはビビたちの見張り役である。



ドリエントル騎士団団長室。

すっきりとした室内ではあるが、質の良い重厚な家具が整えられている。

迎えてくれたのは騎士団長のアーサー様、

副団長のジャック様だった。

「ようこそお越しくださいました。

本日は貴重な品を拝領しましたこと、心より感謝申し上げます。」

「アーサー、ジャック。押しかけてすまないな。今日はソフィアが来ていてな。発案者だから、見せてやってくれ!」


あっ、あ―――!!陛下さらっとバラした!!創生の魔法の事は言わなかったとはいえ、私が発案者だって言った―――!!

お父様とジル様も頭が痛そうにしてるでしょー?勝手に話したんだ!?陛下…………。

ソフィアもガクッとする。

陛下、疲れで思考回路がめちゃくちゃなんじゃないでしょうねぇ……?


「あっ、発案者の事は内緒だぞ!!」


……アーサー様、ジャック様。お願い致します……。



コンコン。

「失礼します。準備が整いました。」

キビキビした動きで騎士が報告する。

「どうぞ。観覧席へ。」ジャック様が扉を開けてくれた。

騎士団の訓練場を見渡せる二階部分に観覧席が配置されている。陛下を中心に姿を現すと、訓練服を着た騎士たちがスニーカーを履いて跪いていた。200人は居るだろうか。

「本日は訓練日になっております、第一騎士団、第四騎士団、第七騎士団でごさいます。」アーサー様の説明に陛下は頷いた。

「ジルとルイで見本を見せてやってくれ。」

お父様の言葉でジル様とルイが訓練場の真ん中に進んで行く。サッカーボールも追加で創っていたので、100個はあるだろう。

慣れるとある程度まとまった数を一度に創れるようになったので、個数ほどスニーカーにもサッカーボールにも魔法をふるったわけではない。そうではないが、やはり大変だった……改めてそう思う。


二人を囲むように騎士たちが動く。あれこれルールも交えながら説明していたが、参考までにと付け加えてくれていた。

そうなのだ。是非、訓練に役立つ方法で使ってもらいたい。

何度かサッカーボールを蹴ったりしてみせると、騎士たちは興味深そうに真剣な顔をしていた。


訓練場に散らばり、それぞれが試し始めると

「ぉお!」とか「すごい!」と声があがっている。騎士たちは鍛えているせいか、運動神経がよいせいか、間もなく動きがそれらしくなってきた。新しい道具が楽しいのか子供のように夢中になり、大きな掛け声も響き始めている。

良かったわ。ソフィアがニコニコして見ていると、陛下もお父様も満足気な様子をしているのが分かった。



しばらく観覧した後、そのまま続けさせてくれと陛下が言い訓練場を出ることにした。

退席の最後にふとソフィアが振り返ると……

足を止め、ソフィアを見ている騎士たちに気付く。あれは……ソフィアに小さく手を振っている騎士たち。

あぁ、先日の第一騎士団の人達だわ!!

ソフィアが微笑んで手を振り返すと、今度は大きく手を振ってくれた。

ふふ。また、差し入れしなくてはね。



そうして、訓練場を後にしたのだった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ