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エドモンド第二王子

ソフィアは久しぶりにのんびりと過ごしている。朝、お父様のお見送りをして、午前中は私室でシロのお絵描きをしている様子を眺めていた。

お昼は庭に出て、ビビたちと一緒にサンドウィッチを食べる。

午後からは図書室に行くことにし、シロとステラと一緒に向かった。

公爵領の本邸には荘厳な、国に次ぐと言われる蔵書数の図書室がある。

王都邸の図書室は規模は違えど、幅広い分野の蔵書が収められていた。

シロに王子様とお姫様がでてくる絵本を選んであげると、シロは喜んで壁際のソファによじ登り、早速絵本を開いていた。

ソフィアは何がいいかしらと本棚の間を歩き始める。ん~っ、何だか今日はゆったりしていて……かえって落ち着かないのよね。

最近は効率よく作業をこなす為に動いていたので、すっかり忘れていた日常だ。

シロに読み聞かせしようかしらと思って振り返った時、重厚な扉がゆっくり開かれる。


「ソフィア!」


?……一人?!珍しい。


「エドお兄ちゃん。いらっしゃいませ。」

ふふ。呼び方は間違えないよ!


「ソフィア。元気だったか?

今日は兄上とシリウスは王城で剣術稽古だろう?寂しいと思って、エドお兄ちゃんが来たよ!」

「まぁ、嬉しいです!今日はお忙しくなかったのですか?」

「午前中で勉強を終わらせたから大丈夫だ。ソフィアは読書か?」

「そう思っていたのですが……気分がのらなくて……お話にお付き合いくださいますか?」

「勿論だ。それは、お兄ちゃんの役目だからな。」

ふふ。お兄ちゃんの役目なのね。


皆で談話室に移る。

ステラが準備してくれた紅茶とお菓子をいただきながら、もうすぐ兄上の誕生日で城内は慌ただしいなどと話すエドモンドの話を聞いていた。

楽しそうに話すエドモンドの様子に、

仲の良い王子たちで良かったとソフィアは思う。継承争いでバチバチなんてのはごめんなのだ。





エドモンドは穏やかな笑顔で自分の話を聞くソフィアを

僕の妹は本当に可愛い。ソフィアは最高だ!妹選手権で優勝!!などと勝手に思いながら見ていた。

兄上もソフィアを可愛いがっているが、妹としてではなく女の子として好きなんだろうなとエドモンドは感じていた。

特に最近はそれを感じることが多い。

ソフィアはまだ5歳だ。ソフィアが兄上を特別に思っている様子はないが、この先どうなるかはわからない。


エドモンドはアルベルトが王太子となった時、ソフィアが婚約者となっていることを望んでいる。

アルベルトの隣にソフィア以外が並ぶのなんて想像出来なかった。


僕は兄上のことが大好きだし、尊敬している。

将来は国王となる兄上を側で支えられるような存在に自分はなりたいのだ。

その為に今、頑張って勉強しているとさえ思っている。

国王の一番側で支えているのが、王妃となったソフィアなら、これ以上嬉しいことはない。

それまで兄上とソフィアが面倒事に巻き込まれないように、目を光らせなければ!

ソフィアは僕の妹として、美しく気品溢れる令嬢に成長するだろう。楽しみだな!

側で見守れるのはお兄ちゃんの特権だ!!


その時、シロにじぃーっと見られているのに気付いた。

そっとエドモンドの上着の裾を握って、隣に座っている。

「シロ。膝においで。」ポンポンと膝を叩いてみせると嬉しそうに乗ってきた。

「エドおにーしゃま!」と言っている。

良かった……おじさんと呼ばれるかと内心ドキドキしていたのだ。

頭を撫でてやると目を細めて気持ちよさそうにしたが、一人で膝の上に乗ったまま絵本を開いて、読んで?……眺めている。


「ふふ。お兄ちゃんで良かったですね。」とソフィアが笑った。

やっぱり天使のように可愛い!!

僕は妹がこんなに素敵だから、結婚はしなくてもいいな……。


まだまだずぅーっと先の事をエドモンドは真剣に考えていた。


でも、兄上とソフィアが結婚したら、

僕はソフィアの弟?!……、……

イヤイヤ、駄目だ。

生涯、ソフィアのお兄ちゃんで居させてもらう!そこは申し入れをしなくては!!

シリウスはそんな事しなくてもずっとソフィアと兄妹か……羨ましいなぁ……。


今日はエドモンドものんびりした気分なのだろう。

平和な時間が談話室に流れていた。



「ソフィア。先日、ポップコーンを創ったそうだな。」

「そうなんです。一緒に作ってみますか?」

「いいのか?」

「もちろんです。テラスに準備して皆でつくりましょう。」

うん。心も天使、僕の妹。





手の空いている使用人たちと一緒にテラスでアルミホイルをフリフリする。ガーデン用のコンロで簡単に出来た。

ポンポンと鳴りながら香りが漂い、ビビたちが森から飛び出して来た。

それぞれ好みの味付けにして、交換しながら食べてみた。


ワイワイ楽しんでいると……お兄様が帰っていらしたようだ。

出迎える前にテラスにやって来たお兄様は、アルベルト様と一緒だった。

……仲良しですね……何よりです。

「エド!来ていたのか。」

「兄上!お疲れ様です。お兄ちゃんとして、妹の様子を見に来ていました。」

「……、そ、そうか。」

「エド!!ソフィアのことは、兄として毎日しっかり私が見ているに決まっているだろう!」

……あ―っ、始まった。


「アルベルト様。お兄様。お疲れ様です。

皆でポップコーンをいただいていたのですけど……あっ!いいものをお持ちしますので、お掛けになっていてくださいませ。」

「いいもの?」

「そうです。いいものです、ふふ。」


ソフィアは急いで厨房に行く。思いついたのは、いわゆる日本のクリームソーダ。

最近の公爵家ではアイスクリームは常備されていた。炭酸水に甘味、食用色素で色をつけ氷の入ったグラスに入れた。最後にバニラアイスクリーム。さくらんぼはなかったから、許して欲しい……。

ステラに手伝ってもらい、テラスに戻った。


お兄様たちはすっかりクリームソーダに夢中だ。剣術稽古で疲れた身体に甘さは適していたようで、ふぅぅ……息を吐いてゆっくりし始めている。良かったわ。

と、思っていたら……自分たちも好みのポップコーンを作ると言い出した。そこに、ビビたちも参戦して騒ぎ出す。

ソフィアはわかりましたから、順番です!と作り方を教え始めた。これがいつもの賑やかさ。





そんな様子をエドモンドはまた、のんびりした気分で眺め始めた。

さっきまでは先々のことを考えていたが、やっぱりこの賑やかな時が今は一番、心地よい。

時間は確実に進むが、今を楽しんでいたいと思う。


この大切な人達とはずっと一緒に居よう!と心に決めて、エドモンドも輪の中に戻っていった。

今日も楽しい一日だ!!





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