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魔法省に行く日の朝。

お母様が王妃様からお茶のお誘いがあったからと、一緒に登城することになった。

ステラが運んでくれたトランクを見て、お母様が驚いている。トランク3つもあるからだろう。

「ソフィア。家出でもするつもりだったのかしら?」

「ち、違います、お母様。色々とお土産といいますか、差し入れといいますか……。」

ソフィアはもごもごとしていると、

「ふふ。分かってるわ。大丈夫よ。それより言われていた物は大丈夫?」

「はい。やはりこれに致しました。」

ソフィアは胸を張って、両親からの誕生日プレゼントだったペンダントを撫でた。

魔法省のジル長官から、宝石がついた装身具を準備してほしいと言われていたのだ。できれば、普段から着けれるものを、と。

勿論、ソフィアには一択だった。

宝石はいくつか持っていたが、着けて安心できるのは一つだけ。

「そう。プレゼントして良かったわね。うふふ。では、行きましょう。」お母様は微笑んでソフィアの手を引いてくれた。

はっ!!お母様と手を繋ぐなんて、珍しいことだ!嬉しくなって、お母様を見上げると優しい眼差しを向けられた。お母様、美しいわ!!ぎゅっとお母様の手を握って、馬車に向かったのだった。



王城に着くと玄関の横でジル長官が待っていてくれた。

お母様は案内役の衛兵と共に王妃様のところに向かって行った。

「ソフィア嬢。お待ちしておりました。」

「ジル様。ご機嫌よう。今日は宜しくお願いします。」

「今日はビビ様たちは……。」

「あぁ、呼べば直ぐに現れます。もう呼びますか?」

「なるほど。では、魔法省へ続く入口に着いてからお願い致します。」

「はい。あの……ジル様。できればソフィアと呼んでもらえませんか?」

ジル様は驚いたように「流石にそれは……、……。」困らせているようだ。

「これから長い付き合いになると思います。あまり畏まられては、今後の作業等にも遠慮が出てしまいます!」キリッとした顔でジル様を見る。

「……では、ソフィア様とお呼びしても?」

まぁ、落とし所か。

「はい。」それからステラが持っていたトランクを、ジル様の付き添いで来ていた人と一緒に持ってくれた。ステラはソフィアの侍女として、特別に魔法省に立ち入ることが許されている。



魔法省は王城内の行政機関が集まるエリアにはないと聞く。業務の都合上、長官室と来客を迎える用に応接間はあるが、留守番役が待機していることが多いという。

何処から行くのだろう?背の高いジル様の後をトコトコついて行く。

長官室の前を素通りし、突き当たりを左に曲がるとたいして大きくないシンプルな扉があった。どうぞ。付き添いの人が扉を開けてくれたので、ありがとうと扉を潜る。

んっ――と。六畳くらいの何もない部屋だった。壁も床も天井も全て白く、窓はない。

「ソフィア様。ビビ様たちをお呼びいただけますか?」

ソフィアは戸惑いながらビビたちを呼んだ。『『『はーい。待ってましたー!!!』』』

元気に光の中から現れたビビたちに、付き添いの人はビクッと驚いた様子だった。

「ソフィア様。宝石はお持ち頂けましたか?」ジル様に問われ、これを!とペンダントを持ち上げた。一目見て、

「これは素晴らしいもので御座いますね。

では、こちらに魔法省に続く鍵の力を付与させていただきます。」ジル様は失礼しますとペンダントのトップ部分を優しく両手で包み込み、なにやら呪文らしきものを唱えた。

ペンダントが光り、ジル様の手の隙間から光が漏れ出たと思ったら

「完了です。」エッ!早っ!!ペンダントを見てみたが、見た目の変化はなかった。流石、長官!!と思っていると、

『へっ―!!なかなかやるね!』

『いにしえの呪文だね。』

『これが鍵となるんだ。』などとビビたちが周りで眺めている。


「では、参りましょう。」ジル様が正面の壁に片手を着いたと思ったら、そのまま壁の中に消えた……、エッ!!と思ったら、付き添いの人が鍵を持っているソフィア様に触れたまま壁を抜けてくださいと言う。

彼はジル様の側近でルイというらしい。

ステラは怖がるようにソフィアの腕に掴まり、トットが頭、左肩にポポ、ビビはソフィアに抱っこされた。

そのままエイッ!!と壁を抜けると、目の前にあるのは森の小道みたいだった。

20メートル先ぐらいに長方形で石造りだが、前世の学校みたいな建物が見える。

かなり大きい建物だ。周りは木々が生い茂る森。わぁー!!と声をあげると、

「あれが魔法省になります。」とジル様が言う。王城の敷地内なのだそうだが、いくつかある入口で、鍵を使わなければ辿り着けないのだという。

ほう!なかなか守りが固い!!

最後に来たルイと一緒に、森を抜けて玄関まで歩いた。

ビビたちは『ほう。』とか『へぇ〜。』『なるほどね。』などと言いながらキョロキョロしている。

ジル様とルイが、両開きの重そうな玄関扉を開けてくれた。


正面のホールの先にドーンと石造りの立派な階段が聳えている。踊り場からは左右に別れて階段が続いていた。誰もいない広い空間は神聖な空気が流れている感じがする。

「どうぞ。」とジル様が先導して階段を登って行く。転ばないように確実に階段を登って踊り場に着いた時、ザッッとホールから音がした。

振り向いた先に見えたのは、整然と並んだ魔法省の職員たちだった。皆、ローブを着ていたが帽子を外しているので、深々と下げられた頭が見える。様々な色の髪。さっきまで物音一つしてなかったのに、凄い!!


「今日は魔法省に創生の魔法を使う者で在られる、ルルヴィーシュ・ソフィア公爵令嬢、ならびに創生の魔法を使う者を守護する者、

ビビ様、トット様、ポポ様をお迎えした。皆、これから御指導いただく事もあるだろう。心してお仕えするように。」ジル様が言う。エッ!?そんな感じ?とソフィアは思ったが、お言葉をお願いしますというジル様に、あ然としながも、覚悟を決める。


「皆様、頭をお上げくださいませ。」

職員たちが顔をあげると同時に、ビビたちがまたもや大きくなった。何?顔合わせはコレにすることにしたの?しかも今日は大きいうえに、光輝かせている。三人共にターコイズブルーの光の中にいた。

うん、私だけ霞むね……いいけど。

仕方ないので一歩前に出た。


「皆様、初めまして。ルルヴィーシュ・ソフィアと申します。こちらが私を守護する者、ビビ、トット、ポポです。」

ビビたちはピカッと一瞬、光を強める。

「創生の魔法を活かせるよう、これから努めてまいります。皆様にお力添えいただけたら幸いに存じます。どうぞ宜しくお願い致します。」丁寧にお辞儀をし顔を上げると、皆キラッキラに輝く瞳をしていた。

うん、貴重な魔法にビビたちだもんね……分かる。

職員たちはソフィアの美しい瞳とサラサラの髪、真っ白すべすべ肌の清楚な雰囲気に妖精を重ねて見ていたりしたのだが、本人は全く気づくことはなかった……。




長官室の応接セットのソファ。やっと一息と紅茶をいただく。ふぅ。ジル様もソフィアの正面に腰を下ろした。

「ソフィア様。お疲れですか?今日は各担当の上層部と顔合わせをと思ったのですが、次回でも構いません。ソフィア様の体調が最優先だと陛下にも宰相閣下にも厳重に申し使っております。」

アハハ……。

「大丈夫です。皆様を前にちょっと緊張したのですわ。今日はお土産もありますし、是非お会いしたいです。できれば、仕事の様子を拝見できれば嬉しいと思っていましたの。」



休憩後、会議に使うという部屋に案内された。中には10人程の幹部らしい方々が待っていて、ジル様が一人一人紹介してくれる。

ビビたちは窓際に置かれていたソファで昼寝を始めてしまった……自由……。

やっと席に着くと、先日献上した完成品について質問が次々とあった。

皆の勢いに押されつつも、丁寧に応える。

今度は私のターンだなと各担当部署の説明を聞く。ステラから鞄を受け取り、中から筆入れとファイルを取り出す。

ファイルに挟んであった白紙に鉛筆で次々とメモをとる。自室以外では日本語は使わない。

一生懸命メモをとっていたが、途中で定規を使ったり、筆入れから覗いたコンパスが皆には気になって仕方ないようだ。

あぁ、そうね。と筆入れに入れていた物を出して見せた。

文房具はだいぶ充実させていた。創生の魔法で創れるものが多い。

定規、コンパス、ファイル、パンチ、クリップ、スティックのり、付箋……簡易な鉛筆削りもある。皆、使い方を考えつつまじまじと見ていた。


「今日は皆さんにお土産があるのです。」

するとルイとステラがトランクから次々と箱に入れられたものを机に置いた。

「どうぞ開けてみてください。」

ソフィアの声を聞いて、幹部たちは蓋を次々と開けた。

「おぉー!これは!!」

「はい。私が今日、使っていたものです。よかったら、お仕事に使ってみてください。」

「よいのですか?このような貴重なものを!!」

「はい。今は私の魔法を知っている方にしか使っていただけないので。感想をいただけた方が改良に役立ちます。」

「わぁ!!」と大量の文房具に声をあげつつ、喜んでくれた。

「ソフィア様。ありがとうございます。」

ジル様にもお礼を言われ、嬉しくなる。

なんだか、皆ソワソワした雰囲気になったので、顔合わせはここまでになった。



長官室に戻りつつ、魔法省に食堂はあるのかと聞けば、あると言われた。

キラリ!ソフィアの瞳が輝く。

厨房にお邪魔してもいいかと聞けば、訝しげな顔をされたが、料理長に話しておいてくれると言う。

もうすぐ、昼食の時間になってしまう。

何がいいかと悩みつつソフィアは廊下を歩いた。




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