19
アルベルト王子の登場によって凍りついた広間だったが、コツコツと厳かに鳴り響く靴音……。
「母上!」お兄様がほっとしたように声を出す。
「まぁまぁアルベルト殿下、ご機嫌麗しゅうございます。本日は珍しく、ベンもおりますのよ。お茶を御一緒くださいませんか。我が家で改良したアイスクリームもございます。是非、お試しくださいませ。」
「改良したアイスクリーム?だと?!それは楽しみだな。……よし、そうしよう!!」
さぁ、こちらにと母はスムーズにアルベルト様を誘導して行った。
「はぁ、助かった。流石、母上……。アルの突撃訪問には困ったものだな。まったく。」
お兄様は一気に息を吐き出し、何故か私を抱きしめて精神安定をはかっている。
使用人たちも残り僅かになっていた料理を背に隠すようにして、アルベルト様の目に付かないようにしていたようだ。一斉に脱力していた。
談話室に場所を移し、両親と兄、そしてアルベルト王子と紅茶をいただいた。
アルベルト王子には
全種類盛り盛りのアイスクリームプレートが準備された。
(うっっ、お腹冷えそう……と思ったが)
アルベルト王子は瞳をキラキラさせて、次々とスプーンで食べ進めている。
「ん~っ、どれも美味しい!!
これはアーモンドか?うん、私はこれが一番好きだな。」
アイスクリームに夢中のようだ。
弟のエドモンド王子にも食べさせたいと言うので、お土産にご準備しますとお母様が応えている。
満足してくれたようだ。
お父様も世間話などで場を和ませ、おそらく特に用件があった訳ではないアルベルト王子は暫く雑談した後、アイスクリームを持ってほくほく顔で王城に帰って行った。
……やはりソフィアの創生の魔法については陛下に御報告しておいたほうがいいだろうな……お父様の慎重に発した言葉にお母様とローレンは頷いていた。
お兄様は渋い顔をして、再びソフィアを抱きしめた。
創りだした物を公爵家だけで扱うのは勿体ないし……王家に報告はちょっと面倒だなとも思うが仕方ない、これも今後の為だ。
自分の健康な身体を目指しつつ、この世界にも様々なものを還元したい。せっかく創生の魔法を与えられたのだから!!
よし、私やるわー!!体力をつけて頑張らないと!!
ソフィアは一人やる気に満ちていたが、家族や側近は心配そうにソフィアを見つめていた。
数日後、お父様から陛下への報告が済んだと伝えられた。
陛下は病弱なソフィアにまさか!!と驚いていらしたらしいが、100年かそれ以上とも言われる、
創生の魔法を使う者と守護する者の出現に
いたく感動されていたそうだ。
ソフィアの幼さもあるので、当面は城の中でも限られた者だけに知らせることになった。
但し一度登城し、現在の状況報告をしなければならないとのこと。
勿論、ビビたちも一緒にだ。
う~ん。正直めんどくさい……。城内は多くの貴族が行き来している……ほとんど屋敷内で過ごすソフィアにはストレスでしかなかったが、わかりましたと応えて覚悟を決めたのだった。
登城は一ヶ月後。
社交が盛んなこの時期は皆、忙しいのだ。
面倒な人に会いませんように!!
ソフィアは心の中で祈っていた……。