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街歩きとして許されたのは下町ではなく、貴族や豪商などが扱う富裕層のエリアだ。

キョロキョロと目移りしながら、兄に手を引かれて歩く。あっ、穀物店。絶対に見たかった一つだ。「お兄様、あの店に行きたいです!!」

うぉぉ、店の中には様々な商品が整然と並べられている。思ってた以上にこの世界には種類があるようだ。大麦、白米、玄米、小豆、はとむぎ、黒ごま、白ごまは外せないとメモを取りつつ、公爵家に届けてもらうようお願いしてもらった。うふふ、嬉しい。

ビビたちも興味深そうにステラのバスケットから顔を出していたが、大人しくしていた。

次は野菜やフルーツ。肉、魚と回りそれぞれ注文した。

ソフィアが想像していたより、他国との交易が盛んで流通も進んでいるようだ。

どんどん楽しくなり、足取りも益々軽くなるソフィアだったが、兄たちからストップがかかる。

ちょうど商店街が途切れ、王都民の憩いの場である中央広場に着いたところだ。

広場には芝生が広がり、中央には女神の噴水がある。広場を囲むように木々も植えられ、家族でピクニックをしている様子もあった。

今は夏の始まり。昼に近づき陽射しも強くなり、気温も上がってきているようだ。


「ソフィ。お昼にしよう。」

お兄様の言葉に合わせてバルトとソフィアが大きな木の木陰に敷物を広げ、昼食の準備を始めた。ビビたちもバスケットから飛び出し近くを散策し始めた。楽しそう!!と思いながらもソフィアは兄と一緒に敷物に腰を下ろす。

ふぅ、やっぱり疲れたわね……座ってみて気づく。目の前には公爵家のシェフが準備してくれたサンドウィッチやサラダ、フルーツと次々に並べられた。ビビたちも戻って来たわねと思っていると、

『『『ソフィア、アイスクリーム食べたい!!』』』と開口一番に言う。

んっ?アイスクリーム?と思ったら、女神の噴水を挟んで反対側にお店が出ていたらしい。


この世界にアイスクリームはあるのだが、魔道具の性能の問題か前世の物のようにキンキンに冷えてる感じはしない……が……

目の前に並べられている物と兄の顔を見て、良いわね!!と閃いた。

「バルト。お願いできる?」と言うと

「かしこまりました。」と買いに行ってくれた。

バルトが戻るまでに食事を済ませる。この陽気のせいもあるのか、バルトが買ってきてくれたアイスクリームはやはり残念な感じにソフィアには見えた……

ビビたちは喜んで飛びつきそうになるのを「待って!!」

とソフィアは止めた。

「お兄様、フルーツを凍らせてくださる?」

兄にデザートのブルーベリーやラズベリーを差し出した。

「ん?凍らせるのか……?……わかった。」

兄は首を傾げながらも得意の氷の魔法で凍らせてくれた。

ソフィアはそれをアイスクリームの上にのせ、緩めのバニラアイスクリームに混ぜる。少しずつ色がブルーベリー色になりながらアイスクリームも冷えてきた。

ビビたちはソフィアの手元を見ながら、目を輝かせている。よし、こんなもんかな。

ソフィアは人数分に分けて、どうぞと差し出した。

シリウス、バルト、ステラもこんなにしっかり固まったアイスクリームは初めてだ。しかもベリー入り!!

「美味しい……。ソフィ、甘さと酸味が私好みだ!!それに食べ易い固さになっていて、喉に冷たさが広がる!すごいな!!」

それほど甘い物を好まない兄には好評だ。

「体の熱が引いていきますし、味も美味しいです。」

「お嬢様、こんなに美味しいアイスクリームは初めてです!!」

バルトとステラにも気に入ってもらえたようで嬉しくなる。

ビビたちは、冷たいね~!!美味しい!!もっと―!!とキャッキャッとはしゃぎながら食べていた。

ソフィアも食べてみる。

満足できるアイスクリームだ。もう少し改良できるわねと考えながらも美味しくいただいた。


食後はみんなでゆったりとしていた。

木陰に爽やかな風が吹き抜けるたびに、

眠くなってきてしまう。

いつも屋敷の庭以外にほとんど外に出ないソフィアだ。疲れるのは当然で、今日はここまでにして、また来ようと兄に言われた。

無理してまた寝込みたくはなかったので、ソフィアも頷いた。バルトとステラが手早く後片付けをして、帰りはバルトに抱きかかえてもらって馬車まで戻ることになった。

中央広場を出て来た道を戻ろうとした時、風にのってひどく懐かしい香りがした。

「!!待って……お兄様!!!」

「ソフィ。どうした?今日はもう、」

「お願いです、お兄様!この香り!!この香りの元へ!!たぶんあちらの方……。」

ソフィアは大通りの角を曲がった方を指さしてシリウスに懇願している。

「うっっ……。ん~っ、ちょっとだけだぞ。」シリウスはソフィアに当然甘い。





ソフィアが辿った香りは一件のこじんまりとした商店からしたものだった。

バルトから下ろしてもらい、扉に付けられたベルを鳴らしながら、ソフィアはドキドキと中に入った。

―――やっぱり―――


「いらっしゃいませ。」店の奥から二十代半ばくらいの青年が顔を出した。

「こんにちは。これは味噌ですわね。」

「!!味噌をご存知ですか?!そうです。これは我が家に代々伝わる調味料なのですが、この国ではあまり普及していなくて……お嬢様のような方が知っておられるとは、驚きです。」

ソフィアはにっこり微笑んで、味噌の懐かしい香りにほっとした気分になる。すると今度は黒い液体が目に飛び込んできた。


!!!これ!!!

「こちらは……醤油ですか?!」

「そちらもご存知で!!嬉しいですね!そうです、そちらは醤油になります。」


すご―――い!!キターー!!何ここ!何?

代々伝わるって、、、先祖が転生者?しかも日本?!!やったーー!!

ソフィアはワクワクしながら、店内を興奮気味に見て回る。酒、麹、みりん……信じられない、神様ありがとう!!

いずれ、健康にいい食事も考えようと思ってはいたのだが……これは有難い!!慣れ親しんだ日本食が直ぐにでも作れるぅ~!!あはは~!!頭の中ではクルクル回って踊っている気分だ。



ソフィアは興奮する気持ちを落ち着かせながら、お店の商品をひととおり注文した。

ルルヴィーシュ公爵家に届けて欲しいとお願いすると、公爵家の名前を聞いて青年は驚いてビクッと体を震わせる。慌てながらも丁寧にお辞儀をして、公爵家にお届けしますと応えてくれた。

青年に見送られながら、商店を後にする。



バルトに再び抱きかかえられ、心地よい疲労感を感じていたソフィアは馬車に着く前に眠ってしまった。



――新しい発見が沢山あった一日である――






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