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街へ出かける日。
朝からソフィアはうきうきしている。
実は昨日、初めて創生の魔法を使った。
ビビたちが見守る中、まずは前世の仕事を活かして化粧品を創ってみた。
この世界にももちろん化粧品は存在するが、
効果的にはまだまだ改良できる。
公爵邸の庭、厨房の食料庫にあるもので、
植物・果物由来のものを試しに創ることにする。材料を揃え、まずは成分を抽出するために魔法を使った。
集中してイメージすることが重要らしい。
魔法の光が材料にかざした手の中でキラリと光る。
そっと材料をのせた皿を見るとソフィアのイメージするものが出来上がっていた。
すごいわ。形状もイメージどおり。
分量のメモを取りながらガラスのビンに入れていく。再びビンに手をかざし魔法を放つ。
ガラスビンが光ったので、完成だ。
効果をみるにはデータを取るべきね。
自室の机に向かって欲しいデータを書き出してみた。
ビビたちが空中をウロウロしながら、ソフィアの書いている様子を眺めてた。
ト『それ、ソフィアならわかるんじゃない?』ん?それって、効果のこと?
どれどれ……う〜ん。
ビ・ポ 『集中して欲しいデータをイメージする。そして手は対象物にかざす。』
「はい。」ソフィアは言われたとおりやってみる。
パァーっと目の前に透明の画面が現れ、調べたい項目と評価が映し出された。これをみればこの製品の効果を知ることができる。
なんて便利!!!でも、この画面。ソフィアとビビたち三人にしか見れないようで、一緒いたステラは首を傾げていた。
創生の魔法をつかえば、化粧水などであれば材料から一気に製品まで創れると教えてもらったが、それでは効果を知るのが大雑把になってしまう。
ソフィア的には許せないことで、先ずは成分の抽出。効果に合わせた調合をし、創生の魔法で完成させる。
との方法にした。初めてにしてはなかなか上出来ではなかろうか。何種類か調合を変えて創ってみた。ステラも協力してくれると言うので化粧水・乳液を試してみてもらう。
後は気になっていた、日焼け止め…。
前世のものから比べるとやたらとべっとり重い感じがしていた。
手をかざしてみる。う〜ん。効果的にはそれほど悪くないようだ。なら、もっとサラッと薄づきできるようにしたい。日焼け止めの容器を包み込んで魔力を注ぐ。キラリ。よし、と中身を確かめるとイメージどおり。
やった!!創生の魔法、サイコー!!!
ソフィアはノートに次々と書き込んでいく。文字は日本語だ。前世の記憶が戻ってからはこの方が効率がよかった。日本人だった時間の方が長いものね…。
しかし、羽根ペンとインクがどうにもまどろっこしくてならない。せめて、鉛筆が欲しい……ん?鉛筆。私、鉛筆創れるかも!
小学生の時、身近な物の歴史を調べる授業があった。サラは鉛筆と消しゴムを調べたのだ。わ―っ、サラ!グッジョブ!!
鉛筆は黒鉛、粘土、木材などか必要だ。
消しゴムは天然ゴム、硫黄、植物油だったか。う〜ん。ちょっと心配だか創生の魔法で何とかなるかな……。
これは自分で集めるのは難しいと判断し、ローレンにお願いした。
早速、手配してくれたローレンによって夕食前にはソフィアに材料が届けられた。
おぉ、流石に公爵家!などと思っていたら、母に問われた。何を創るの?と。ソフィアは鉛筆と消しゴムの絵を書いてみせ、使用法を説明する。母は興味深そうに聞いて、作業するなら部屋をと空いている部屋まで与えてくれた。それと、化粧品を創ったのなら、自分も試したいとモニターの申し込みをされる。
??何故?
つい先程、ソフィアの自室の出来事がお母様に伝わってる?ステラをチラリと見たがブンブン首を振っていた。
公爵家の女主人、恐るべし……。
夕食後、作業するために部屋を移動し鉛筆、消しゴムを創る。
お兄様も興味があると付いてきた。この屋敷でもソフィアの創生の魔法について知ってる者は限られる。非常に貴重な魔法なので、悪用されないようにしなければならないと両親から既に何度も言われた。
シリウス、ソフィア、バルト、ステラにビビたちが部屋に入った。
ソフィアは創る手順と出来上がりを頭の中でイメージする。先ずは鉛筆。材料に手をかざし一気に創りあげた。集中力を増すとともに魔法の光が強くなる。キラリと光って出来上がる。カラカラと12本。消しゴムは5つ出来た。ふぅっと力を抜くと体が重かった。今日はそういえば、だいぶ魔力を使った。ステラが紅茶を淹れてくれたので、一息入れることにする。作業の部屋と言っても応接セットはある。空いているスペースが広く作業や執務も出来そうな大きめの机が置いてあった。
一度ソファに落ち着くとビビたちが膝・頭・左肩にそれぞれ乗った。温もりが伝わってきて、ほっとする。
シリウスとバルトがまじまじと鉛筆をみている。「これで文字を書くのだろう。どこの部分で書くのだい?」兄が不思議そうにしているので、鉛筆を削った状態のスケッチを見せて説明した。とりあえずナイフで削ってもらおうと紅茶を飲みほすと大きな机の方に戻ろうと立ち上がる……ん?体の重さが無くなってきていた?!ビビたちを見るとソフィアの目の前に浮かんでうふふとニコニコしている。!!「ありがとう!!」ぎゅっとビビたちを一纏めに抱きしめて頬ずりした。キャッキャッと嬉しそうな三人にもう一度お礼を言って解放する。
バルトに鉛筆を削ってもらおうとスケッチを見せた。かしこまりましたと懐からナイフを出し慎重に削ってくれた。
うん。綺麗な出来上がり。皆が見てる前でスケッチの端の方に名前を書いてみせる。
「なるほど!!」とお兄様が言った後で消しゴムで消してみせた。初めてにしてはなかなかの出来だ。ちゃんと消えるかと心配したが、大丈夫だった。創生の魔法やっぱりサイコー!!と思っていると、兄は早速自分で試していた。
そんなふうに前日もバタバタと過ごしたがビビたちが一緒に寝てくれたお陰もあってか、魔力消費の疲れもなく、朝を迎えたのだった。
化粧品の使用感は上々。一日で直ぐに変化は出ないだろうが、ステラからは香りも気持ち良く、しっとりとしてハリがでたと言ってもらえた。高評価。嬉しい。効果を確認してあるし、間違いないだろう。
公爵家の馬車にシリウス、ソフィア、バルト、ステラ、ビビ、トット、ポポ。
ソフィアとビビたちは窓のカーテンの隙間から外の景色に釘付け。ソフィアは初めての街歩きなのだ。揺れると危ないからと兄に支えられながらも、窓から離れられない。
貴族の屋敷が建ち並ぶエリアから段々と王都の中心付近になって、馬車止めで降りると兄にしっかりと手を繋がれた。ビビたちはステラが持って来たバスケットに入れられ、レースのハンカチを掛けられた。既に顔はハンカチを持ち上げて、外を見る体制になっている……。話さなければ普通のうさぎ、鳥、りす。大人しくしてくれているなら問題はない。
いよいよだ。昨日創った鉛筆も持って来た。サラッと塗れるようになった日焼け止めも完備。ステラも使い心地の良さに喜んでいた。
帽子も被って、いざ、しゅっぱーつ!!