12
来客をお見送りし、使用人たちが慌ただしく後片付けを始めた頃、ソフィアは身体に嫌な予感を覚えた。
ステラを呼んで、急いで自室に戻ったソフィアは発熱していた。
………やっぱりかぁ。
昨夜から色々あったもんなぁ――それは熱もでちゃうよなぁ…
などとあたりまえの事のように飲む込みと
着替えと寝支度を済ませベッドに潜り込んだ。
夜が深まるにつれ熱が上がる。公爵家の専属医師を呼び、診てもらったが疲れから発熱したのだろうと言われた。
いつもの如く、父と兄が心配して側に張り付いていたのだが、母が来て二人をそれぞれの自室へと追い出した。
更に今夜は自分がソフィアの側にいるからとステラも先に休ませた。
「ご用があればお呼びください。直ぐに参ります。」とステラも逆らわず下がって行った。
ソフィアは熱のためうつらうつらとしていた。
母の看病のお陰で段々と熱が下がり、意識もはっきり戻ってくる頃には既に外は明るくなりつつあった。
「お母様…。」
「ソフィア。大丈夫?辛いところは?」
「大丈夫です。だいぶ楽になりました。お母様こそ、お疲れではないですか?」
「平気よ。夜会に出る方がよっぽど大変だわ。うふふ。」と母は悪戯っぽく微笑んだ。
ソフィアもふふっと微笑み返す。
「…ソフィア。何か困ってる事はない?」
「??困ってることですか?体調の事でしょうか?」
「もちろん体調の事でも、日常の生活の事でも何でもかまわないわ。……ただ…あなた昨日、森の方を気にしていたでしょう?何かあったのかしら?」
ソフィアは息を飲んだ。皆で庭を回った時、ビビたちが気になって何度か森を見たのは確かだ。
それに母は気付いていたのか。
ソフィアも悩んではいたのだ。泉のこと、ビビたちのこと、そして創生の魔法が使えるらしいことを話すべきか否か……。
実際に創生の魔法を使った事はまだ無い。
少し目を伏せてソフィアは考えたが、直ぐに決心した。
子供のソフィアにできることは限られている。今後、創生の魔法を使うとしても家族の協力を仰がなければならないだろう。
そして病弱なソフィアには一番危惧することがある。
誰にも相談せずに悩むのはきっとストレスが溜まる。
そう、ソフィアは健康になりたいのだ。それこそ前世からの願いである。
ここは信頼する人たちと共に魔法を研く事がベストなのだ!!
ソフィアは母を見上げて言った。
「お母様、お話したいことがあります。」
「そう。分かったわ。私だけの方がいいのかしら?」
「いいえ。お父様とお兄様。できればステラとバルト、そしてローレンも。」
母は少し考えて…
「わかったわ。まずは体調を戻しなさい。
話は二日後に聞くということにしましょう。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「では、もう少し眠りなさい。」
「はい。お母様。おやすみなさい。」
ゆっくりと目を閉じたソフィアは、今度は深い眠りについたのだった。
――ビビたちとも話をしておかなければ――