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誕生日のパーティーが始まった。
招待客は第一王子、ブリトール伯爵夫妻、
バーネット子爵夫妻と息子のカイル。
小広間に準備された大きなテーブルには所狭しと料理が並べられた。親しい人ばかりなので立食型にし、部屋の数カ所にゆっくりと座れるソファが配置されている。
「アルベルト殿下。素敵なお祝いをありがとうございます。」
ソフィアはアルベルトに笑顔でお礼を言う。
「あぁ、可愛いだろう?きっとソフィアが喜ぶと思ったんだ!」
アルベルトからは大きな白いクマのぬいぐるみが届いていた。瞳は紫色。ソフィアがやっと抱えられる大きさ。ふわふわモコモコしているので重さは感じず、造りもしっかりしてるのでソファに座らせると存在感があった。
そして、丁寧に仕上げられたドレスを着ている。着替え用のドレスも二着あった。
アルベルトには弟しかいないので、女の子のイメージがぬいぐるみなのだろう。
それに他国から届いた珍しいフルーツを数多くプレゼントしてくれた。
「ソフィア。今日は顔色もいいし、更に可愛いくなったようだな。5歳になったんだから、アルベルトお兄ちゃんと呼ぶといい!!」
(意味が分からない。5歳になると、王子をお兄ちゃん呼びに変えるとか…そんな訳がないのだ。)
「アルベルト!!ソフィアの兄は私だけだ!!」シリウスが慌ててやって来た。
「殿下をお兄ちゃん呼びにするなら、もちろん僕はカイルお兄ちゃんだよね~!」
シリウスの後ろからバーネット子爵の令息が顔を出した。
「カイル、お前も兄ではないだろう!!」
カイルはバーネット子爵家嫡子。アルベルトとシリウスと同じ歳だ。そしてステラの弟である。
バーネット子爵夫人はリリアンヌの侍女だった。公爵家に嫁ぐ前から仕えていて、一緒に公爵家にやってきたのだ。
今は娘のステラがソフィアに仕え、息子のカイルはシリウスの友人である。公爵家との繋がりは深い。
茶色の髪にミルクティー色の瞳を持つステラ。赤みがかった茶色の髪にこげ茶色の瞳のカイル。ステラは17歳になる。
「なんだよ、シリウスばかりお兄ちゃんなんてずるいだろう。」
「そうだ。三人でお兄ちゃんになればソフィアも安心だろう。」
「………。」
「何を言ってる!!ソフィアの兄は私だけだし、充分ソフィアは安心している!!」
10歳男子三人が、ワーワー言っている…。
ソフィアは大人しくしていた。
しばらく騒いでいたが、
アルベルト様、カイル様、呼びで落ち着いたらしい。
カイルは元々カイル様だったが余計なことは言わない…。
お父様たち紳士たちには頭を撫でられ、時には抱き上げられながら、大きくなった、可憐になった、元気そうで良かった、おめでとう!と祝ってもらった。
婦人たちはソファに座ってゆったりとお祝いをしてくれた。
途中からは庭にも出て、バラやユリを眺めて回った。
皆に祝ってもらって嬉しくてしかたないソフィアはいつもよりも数段元気でハツラツとしているように映った。
周りも嬉しそうにそんなソフィアを見守っている。パーティーは笑い声が絶えない、温かい雰囲気に満ちていた。
ソフィアが度々森の方に目をやり、じっと眺めているのに気づくのはリリアンヌだけだった。