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プロローグ

「お嬢様、おはようございます。」

ゆっくりと寝室を覆っていたモスグリーン色のカーテンが引かれた。

落ち着いた雰囲気のカーテンだか、下部分には小鳥やうさぎ、りすなど森の動物が蔓草やハーブ等と一緒に可愛らしく刺繍されている。

「おはよう、ステラ。今日も気分のいい朝ね。」


ルルヴィーシュ・ソフィア公爵令嬢は朝の眩しい光に目を細めつつ、元気にベッドから起き上がると嬉しさを噛み締めた。

ソフィアの専属侍女ステラは、優しく微笑むとテキパキと主の身支度を整え始める。今日もお嬢様がお元気でよかったと心ではほっとしながら…



「お父様、お母様、お兄様、おはようございます!!

今日も私、元気とやる気いっぱいですわ!!!」

食堂の扉をくぐると共に発せられた声に、父・母・兄は優しい微笑みを浮かべながら顔を向けた。

「おはよう。」

「おはよう、ソフィア。」と応えてくれる優しい両親。

兄に至っては駆け寄ってきて

「おはよう、ソフィ。今日も可憐で可愛いよ!!」とぎゅっと抱きしめてくれる。

それに全身で嬉しさを感じながら、兄の腕の中から顔を上げて満面の笑みで応えた。(うん、今日もしあわせ!!やる、がんばる。がんばるぞ~、ぉおー!!)

兄は変わらず抱きしめながら、頭にスリスリ擦り寄ってきているが、

「お父様、登城の際にこちらをお持ち頂けますか。財務大臣から奥様へのプレゼントにと依頼があったのです。奥様のお好きなカラーリボンでラッピングしてありますが、メッセージカードにお使い頂ければとカードも数種御用意しました。もしよろしければと、お伝えくださいね。」

「お母様は今日はブリトール伯爵家のお茶会でございましたね。こちら注文を頂いていた商品でございますの。5名分ございましたので、それぞれ宛名を記載しました。使用方法も同封しましたので、宜しくお願い致します!!そうそうサンプルを作ってみたので、お持ち頂けたら嬉しいですわ。」

「お兄様は騎士団で鍛錬があるのでしたね。休憩の際はこちらをお水に混ぜて必ずお飲みください!!休憩もなるべくこまめにです!!この時期は熱中症になりやすいのですわ。気をつけてくださいね。絶対です!!絶対ですよ!!絶対!!!」

「屋敷の者たちも今日はお天気が良くて気温が上がりそうだから、そうね私、午前中にクッキーを作りますわ。あの栄養価の高いクッキーとお兄様と同じスポーツドリ…ぅうん、ケホケホ、熱中症予防水を休憩時に取るようにね!!」そうだわ、それから

…………

………

……

息つく間もない程、前のめり、勢いよく言われた本人たちと周りの侍女侍従メイドたちは毎日のこととはいえ苦笑いだ。目は若干遠くを見ている。うん、いつものことなのだ。

この見た目と中身のアンバランスな様子は…



ソフィアはアメジストのような紫色の煌めく瞳、光の加減では紫とも青とも見える真っ直ぐ艶やかな背中の中程まである長い髪。

陶器というよりはガラスのように、触れたら壊れるかもしれないと思わせる繊細で真っ白な美しい肌の持ち主なのだ。身長はスラッと平均身長よりは高く、しなやかな様子がまさに公爵令嬢…に相応しく高潔に見える。

対外的には深窓の令嬢(貴族、しかも公爵家に生まれた者として矜持は忘れない…と決めている。)と言われるに相応しい、完璧な誰もが憧れるルルヴィーシュ公爵令嬢である。


しかし外見とは違い、屋敷の中ではハツラツと活動的。侍女のステラに「お嬢様!!」と声を上げられることもしばしば…公爵家の広大な庭を駆け回ってることも日常なのだ。お転婆と言われてもおかしくない12歳である。

季節の変わり目や疲れすぎで発熱・ダウンもまだあるが……好奇心・探究心旺盛で、ずば抜けた集中力の持ち主。



しかし、こんな様子を周りが安心して見ていられるようになったのはここ数年のこと。幼い頃のソフィアは非常に病弱でベッドで過ごすことの多い、大人しいと言われる子供だった。

それはソフィアにとっては前世と同じと感じることだったのだが…


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