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第071話 水着っていいよね! ……見る分には


 俺が本部長から依頼を受けてから1ヶ月弱が経った。

 その間、俺達≪魔女の森≫はダンジョンでの泊まりの練習をしていた。

 本部長からの依頼を達成すれば、安眠枕が全員使える分が手に入るが、練習はしておいたほうが良いと判断したからだ。


 これまでに何度かダンジョンで泊まったのだが、やはり、2番目の見張りの担当がキツそうだった。

 俺を除けば、一番体力があるのは瀬能だが、その瀬能でもキツいようだ。

 これも練習だと思い、ちーちゃんにも2番目の見張りをやらせてみたのだが、翌日、見事につぶれていた。


 パーティーメンバーからも異論は出なかったので、ちーちゃんは一番楽な最初の見張りにすることが決定した。


 そんなこんながありつつも、なんとかダンジョンでの泊まりにも慣れてきたところで、ついに1学期最悪のイベントを迎えることになった。


 期末テストである。

 


 俺は自室で瀬能にもらった過去問を中心に必死に勉強している。


「クソ! なんで専門がこんなに難しいんだよ!」


 俺は自室のテーブルで唸っている。


「お前、よくエクスプローラをやってこれたな。じゃあ、次な。ダンジョン救護法が成立したのはいつだ?」


 シロが教科書を見ながら、問題を出してくる。

 過去問と教科書をあっという間に理解したシロは家庭教師を買って出てくれたのである。


 もう認めよう……

 シロは間違いなく俺より頭が良い。


「知らねーよ。そもそも聞いたことねーわ!」

「答えは2年前だ。お前、何で知らないんだよ? 2年前も現役だろ」


 知るか!

 そもそも年々、ダンジョン法は増えているし、改正されている。

 いちいち覚えてないし、興味もない。


「やべー。法律が全然できない……」


 ダンジョン学園で学ぶ専門は、ダンジョンやエクスプローラに関する法律や倫理などである。

 歴史なんかもある。

 たいした歴史もねーくせに。


「相棒は何故か倫理は出来るんだよなー。なんでだ?」

「倫理なんか良いように書けばいいんだよ」


 倫理や道徳なんて良い子ちゃんがやりそうなことを書けば、大抵は正解だ。

 

 人を殴ってはいけません!


「さすが生粋の嘘つき」

「誰が嘘つきだ!!」

「お前はよく内心と真逆のことを言っているだろーが」

「うるせー! 本心をさらけ出してたら、とっくの昔に、皆に見捨てられるわ!!」


 特にシズルには、とっくの前に見捨てられてしまっていたであろう。

 なにせ、いつもおっぱいやらエロいやら、我ながらひどいことを思っている。


「まあ、そうだろうなー」

「人間は嘘をつくんだよ。そんなことよりも法律だ。マジでヤバいぞ!」


 このままでは、また補習になり、皆から白い目で見られてしまう。


「もう良い点を取るのを諦めろ。瀬能の過去問を見る限り、法律は近年に改正された法律か、新しくできた法律が多い。これにヤマをはれ」

「よし! それでいこう!!」


 もう法律の試験に関しては、赤点回避を目標でいこう。


「他は大丈夫か?」

「多分な。俺は多少、寝なくても問題ないから一夜漬けでいく!」

「まあ、頑張れ」

「よーし!!」


 俺はこの日からほとんど寝ずに試験勉強に勤しんだ。

 そのおかげあってか、なんとか赤点は回避し、補習を免れたのである。




 ◆◇◆




 期末テストも返却され、1学期が先ほど終了した。

 明日からは夏休みであり、教室内のクラスメイト達も浮かれぎみで、合宿遠征などの夏休みの予定を話している。


「なんとかなったな」

「良かったね」


 俺とシズルは、先ほど返却された法律の試験結果を見ながら安堵していた。


「お前、何点だった?」

「90」


 どうやったら、そんな点が取れるんだ?

 カンニング?

 俺は54点だぞ!


「きっと、俺とお前とでは頭の出来が違うんだろうなー」

「そんなことないよ。ちゃんと授業を聞いているか、聞いていないかの差でしょ」


 正論ですな。


「まあいいや。補習は免れたし、これで文句も言われないだろ。きっと、ウチの両親も泣いて喜ぶぞー」

「いや、赤点を回避しただけじゃないの」


 お前は俺とホノカがどんだけバカだと思われているかを知らないんだよ。

 

 ちなみに、ホノカはアカネちゃんよりも点数が低い。

 まあ、中間試験では補習じゃなかったみたいだけど……


「来週は名古屋かー」

「楽しみだね。ルミナ君は依頼があるみたいだけど」


 本部長から依頼があったことは、パーティーメンバーにも伝えてある。

 またパーティーを抜けるのかと、責められるかなーと思っていたが、報酬が安眠枕だと伝えると、皆、喜んでいた。


「まあ、1日だけだけどな。それ以外は遊ぶ」

「ダンジョンにも行こうね」

「そうだな」


 本当は行きたくないけど、シズルとカナタはダンジョンに行くのも楽しみにしている。


 俺とシズルが楽しいおしゃべりをしていると、教室の扉がガラガラと音を立てて開いた。

 そして、扉を開けた小柄な女子2人が教室に入ってきて、俺達の所にやってきた。


「……おまたせ」

「……お姉さま、補習は大丈夫だった?」


 ロリ姉妹こと、アヤとマヤである。


「余裕、余裕」

「ギリギリのくせに」


 うるせー!


「お前らは?」

「……余裕」

「……今回はクラスの勉強会があったから」


 アヤとマヤも補習はなんとか回避したらしい。

 こいつらも俺と同様に、不真面目なバカである。


「良かったな。じゃあ行くか」

「どこかに行くの?」


 俺がロリ姉妹と出ようとすると、シズルが聞いてきた。


「買い物」

「……お姉さまの水着を買いに」

「……お姉さまの水着を選びに」

「そうなの?」


 シズルがついてきたそうなそうな目でこちらを見ている。


「……お前も来る?」

「何で嫌そうなのよ」

「だって、バカにするじゃん。苦笑いを浮かべるじゃん」

「しないわよ」


 本当に~?


「じゃあ、お前も来い。俺は水着なんか知らないから意見が欲しい」

「うん。私も自分の分も買いたいし」

 

 やったー! シズルの水着姿が見れるぞー!


 俺達はシズルも加えた4人で町内の百貨店に出かけることにした。




 ◆◇◆




 俺達は百貨店の水着コーナーに着くと、周囲には多くのダンジョン学園の学生がいた。


「皆も買いに来てるんだね」

「うーん、居づらい」


 お姉ちゃんとホノカの3人で下着を買いに来た時にも思ったのだが、こういう空間は非常に居づらい。

 とはいえ、男子がゼロというわけではない。

 おそらく、カップルであろう男女がキャッキャッしながら水着を見ている。

 まあ、男子の顔は気まずそうだが。


「大丈夫。お姉さまは完全に馴染んでいるよ」

「うん。まったく違和感がない」


 それはそれで嫌だわ。


「水着って、色々あるんだなー」


 俺は展示されている水着を見回す。


「まあ、男子よりは多いんじゃない? ルミナ君はどんなのがいいの?」


 その質問は俺が好きな水着か?

 それとも俺が着たい水着か?

 前者ならエロいの、後者ならエロくないのだ。


「うーん、お前はどう思う?」


 俺はシズルの質問の意図が不明のため、質問を質問で返した。


「うーん、ルミナ君は見た目が派手だから、ビキニでいいんじゃない?」


 どうやら質問は後者だったらしい。


 危ない、危ない。

 お前はエロいから布の面積の小さいのが良いって言うところだった。


「ビキニって、あれ?」


 俺は近くにあるビキニらしき水着を指差す。


「うん。あれ」


 肌色成分が多くないか?

 俺があれを着るの?

 あんなのグラビアでしか見たことねーぞ。


「グラビアアイドルじゃん!」

「あれくらい普通だと思うけど」


 ダメだ……

 シズルは普段からエロい防具を着ているし、元歌手で過激な衣装に慣れているから、感性が壊れている。


「お前らはどう思う?」


 俺はドスケベなシズルは役に立たないと思い、アヤとマヤに意見を求めた。


「私達もビキニで良いと思う」

「うん。お姉さまは胸が大きいし、スタイルもいいから」


 えぇ……

 お前らもかよ……


「普通の、ないの?」

「普通のって、どんなのよ?」

「いや、そう言われると、困るんだけど」

「お姉さま、TPOを守ろう」

「そうそう、変に恥ずかしがって、似合わない水着を着ると、余計に目立つよ?」


 うーん、そうかもしれん。

 こういうのは勢いで乗り切ったほうがいい。

 下手に隠すからエロくなるって、エロ本先生もおっしゃっている。


「じゃあ、そうしようかなー?」


 なんか流されている気がするが、俺は女歴が短いので、ベテランの女共(失礼)に任せたほうがいいな。


 俺は言われるがまま、ビキニにすることに決め、店員さんに聞きに行った。

 そこからは店員さんに流されるまま、あれよあれよと決まっていき、試着室に連れていかれ、水着に着替えた。


「俺は何をしているんだろう……」


 俺の前には鏡があり、そこにはエロい金髪女が微妙な顔をして立っている。

 

 もちろん、俺だ。


「相棒、急に冷静になるなよ」

「俺、男に戻れるかなー?」


 大事なものを失ってない?


「相棒、自己暗示だ。お前が得意の自己暗示とお祭り根性で乗り切れ。下着姿でファッションショーをしていた時を思い出せ!」

「これはコスプレ、これはコスプレ、これはコスプレ、これはコスプレ…………」


 俺は自己暗示をした後、鏡の自分を見る。

 そして、前かがみになり、右手を右ひざに置く。


「いける?」

「いける、いける!」


 次に、上半身を反り、両手を頭の後ろに持っていく。


「どう?」

「最高!」

「よし!」


 俺はシロのチェックを済ますと、更衣室の扉を開ける。


「お待たせ!」

「おー」

「お姉さま、いいよー」

「似合ってる、ね」


 皆が称賛してくれた。

 シズルの視線が若干、気になるが。


「もうこれでいいや。お前らはどうすんの?」


 俺はこれを買うことに決め、アヤとマヤにどうするのか聞く。


「私達も買うよ」

「うん」

「スク水にしろ。ハヤト君が喜ぶぞ」


 きっと泣いて喜ぶ!


「嫌」

「そういえば、お姉さま、掲示板に勇者様(笑)はロリコンって、書き込んだ?」

「書いたぞ」


 俺はしょっちゅう人の悪口を掲示板に書き込んでいる。

 

「やっぱり」

「ハヤトが絶対にあいつだって、怒ってたよ」


 図星を突かれて、焦ったんだな。


「ちょーウケる。シズルは何を買うん? ってか、お前もビキニにしろ。俺一人は嫌だ」


 俺はシズルを仲間に誘う。

 散々、人に布面積が少ないものを勧めておいて、自分は肌を隠すのは許さんぞ!

 お前のほうがスタイル(胸)、良いだろ!


「うん、私もビキニにするよ」


 やったぜ!


 この後、ロリ姉妹とシズルは何度も水着を試着していった。

 普段なら、早くしろと怒るところだが、今回は何故か許せた。


 そして、シズルの水着姿を見た時は、早く男に戻りたいと再認識できた。


 うひひ。




 

攻略のヒント

 ダンジョン学園の専門の授業は、法律、倫理、歴史、総合、実技である。


 法律…………ダンジョン法を中心とした法律関係

 倫理…………エクスプローラとしての倫理観

 歴史…………ダンジョン出現後から今日までの経緯

 総合…………ジョブ、スキル、モンスターなどのダンジョンに関するもの

 実技…………エクスプローラとしての技術


『ダンジョン学園HP ダンジョン学園で学ぶ項目(専門)』より


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