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第042話 ≪魔女の森≫始動


 俺達のパーティー≪魔女の森≫は3階層ビッグラットとゴブリン相手に連携確認を行っていた。

 

 最初はカナタの魔法を中心に倒し、その後は他のメンバーも戦闘に参加した。

 

 そして、気づいた。

 敵が弱すぎることに。


「連携確認も何も、一発で倒してるね」

「だな」


 戦いを終え、俺の横にやってきたシズルが話しかけてくる。

 

 俺は当初、もう少し躓くと思っていた。

 しかし、ちーちゃんの指示が的確なうえ、後輩2人は良くちーちゃんの指示に従ってくれている。

 また、前衛にいるシズルも後ろから飛んでくる魔法に動じなかった。


 そういえば、シズルには≪度胸≫があったな。


 さっきもビッグラット3匹と対峙していたが、シズルが1匹、カナタが2匹を一撃で倒したところである。


「ねぇ、ルミナちゃん。3階層でやることはもうないよ。予定にはなかったと思うけど、オークのいる6階層まで行かない?」


 後方にいたちーちゃんも近づいてきた。

 

「うーん、俺もそう思う。カナタもアカネちゃんも思ったより動けるしな。カナタ、魔法はまだいけるか?」

「はい。ファイヤーしか使ってませんし、まだ余裕です」

「ていうか、私は槍で3匹倒しただけですー」


 これまでビッグラットとゴブリン相手に一撃で倒してきたため、ヒールの必要性がなかった。

 

 ヒーラーであるアカネちゃんは不満だろうな。

 

 俺に至っては、ゴブリンを1匹ほど蹴り飛ばしただけだ。


「6階層まで行くか……シズルは?」

「私も大丈夫。ビッグラットは慣れたものだし、疲れはないよ」


 シズルはビッグラットの様なモンスターと相性が良い。

 そのため、2人で活動していた時はビッグラット相手に経験を積ませていた。


「じゃあ、6階層まで行くか。俺達は暴行事件のせいで、6階層はかなり経験しているが、お前らはオークとやったことあるか?」


 この前までは暴行事件のせいで6階層までしか行けず、俺とシズルとちーちゃんは6階層で半月以上もオークを狩っていた。


「私は何回か戦ってます。でも、後方で回復してるだけですね。さすがにオーク相手に近接戦闘は怖いです」

「僕も何回かです。オークは火に弱いので、相性は良いですよ」


 どのみち、ちーちゃんを含め、こいつらを前に出す気はない。


「ちーちゃんは引き続き、後輩を頼む。パワータイプのオークなら俺も相性が良い。後ろに抜かすことはない」

「任せといて」


 ちーちゃんなら問題ないだろう。


「シズル、お前は遊撃をやれ」

「いいの? 前衛がルミナ君1人になるけど」

「オークなら何体来ようが問題ない。予定とは多少狂うが、後輩共もオーク相手に十分やれるだろうし、お前もオークの経験は十分だろ?」

「まあ、飽きるくらい倒したしね」


 本当にな。

 もうオークは見飽きた。


「よし、では6階層に行くぞ」


 俺達は当初の予定より奥の6階層に向かうことにした。


 6階層に向かう道中は俺とシズルが索敵を行い、その間にちーちゃんが後輩共に指導を行っていた。

 

 ちーちゃんは≪学者≫のスキル≪記憶術≫で勉強していた為、モンスターや罠の特性に詳しい。

 

 後輩共もちーちゃんの教えを真面目に聞いており、俺はものすごい楽ができている。


「ちーちゃんが仲間になってくれて良かったな」

「本当ね。チサトさんって、優秀すぎない?」

「あれは完全に見た目で損してる」


 ちーちゃんはいつもパンクな格好をしているため、ヤンキーみたいに見える。

 でも、本当は勉強家であり、真面目な人だ。


 本来なら、どのパーティーも欲しがるだろうし、協会も職員に勧誘するだろう。


「私達は運が良かったね。でも、あの脅しみたいな勧誘はひどいよ」

「ちーちゃんはあれくらいしないと、グズグズするだけだ。優秀な人だが、人間関係が下手くそだわ」

「チサトさんもルミナ君には言われたくないと思う」


 俺だって、友達はそこそこいるぞ。

 嫌う人間はそれ以上にいるけど。


「だろうな…………話は変わるが、お前に確認しておきたいことがある。このパーティーの6人目だが、男でも良いか? 知っていると思うが、女のタンクは少ないんだ」


 というよりも、まったくいない。

 

 タンクをやりたがる女は少ないし、そもそもタンクになれるヤツは体格が良いヤツだ。

 当然、男より体格に劣る女には適性がないことが多い。


「うん。女性のタンクが少ないことは知ってる。少なくとも、ウチの学年にはいないね」

「ああ。担任の渡辺じゃねーや、伊藤先生に聞いたんだが、学生の女タンクはいないそうだ」


 実は後ろの3人が加入した時点で、俺はタンクを探していた。

 

 元芸能人であるシズルのことを考えると、女子が良いと思ったのだが、結果は空振りに終わってしまった。


「私は男子でも良いよ。チサトさんも言ってたけど、カナタ君1人は可哀想だよ」


 だから俺は?

 …………ハァ、もういいや。


「お前が良いなら男子で探してみる。なるべく変な男は避けるつもりだ」

「お願い。私の事もだけど、チサトさんも前のパーティーを抜けたのは男女関係のトラブルだからね」


 そういえば、そうだった。

 忘れてたわ。


「いっそ、土井が入ってくれると、助かるんだがな」


 土井はクラスメートであり、ハヤト君のパーティーのタンクだ。


「土井君だったら問題ないだろうけど、無理でしょ。あそこは幼なじみのパーティーだから引き抜けないよ」


 勇者のハヤト君、土井、そして、双子の松島姉妹は幼なじみである。

 

「だよな。誠実なタンクか……いるかな?」

「それこそ、土井君に聞いてみたら? 同じジョブの繋がりもあるんじゃない?」


 そうかも。

 俺やシズルは特別職だから同じジョブの繋がりなんてないが、メイジなんかは勉強会を開いていると聞いたことがある。


「そうしてみるわ」

「気を遣ってくれてありがとね」


 俺は優しいからな。

 けっして、点数稼ぎじゃないぞ。

 本当だぞ!


「気にするな。よし、6階層についたな」


 俺達が6人目のパーティーメンバーについて話し合っていると、目的地である6階層に到着した。


「ちーちゃん、いける?」

「いけるよ。基本的にカナタが火魔法を使う。そのつもりで」

「了解」

「了解です」


 俺達は確認を終え、オーク狩りを行うことにした。


 俺はアイテムボックスからロングソードを取り出し、肩に担いだ。

 俺はオークと相性が良いため、ハルバードでは、他のメンバーの活躍がほとんどなくなってしまうからだ。


 俺はロングソードを取り出した後、スキル≪索敵≫でオークを探す。

 すると、2体のオークを見つけた。


「2体いたぞ」


 俺はちーちゃんに敵の情報を伝える。

 

「了解。カナタ、先制で火魔法を使って」

「うん」


 俺達はオークのいる所に近づく。

 

 オークが視認できる位置まで近づくと、オークがこちらに気づき、突進してきた。


「ファイヤー!」


 カナタは突進してきた先頭のオークに火魔法を放つと、オークは火を嫌がり、躱すために突進が止まった。


 俺は止まったオークに接近し、ロングソードで切り込んだ。

 オークは火魔法を躱すことが出来たが、俺の剣は躱せず、胴体が真っ二つになり、倒れた。


 後ろにいたもう1体のオークは、傍にいる俺を攻撃しようとしたが、直後に俺の後ろから飛んできたナイフが目に当たった。


 オークは目を押さえ、暴れている。


 そして、そんなオークに火魔法が飛んできた。

 

 目の痛みに気を取られているオークはこれを躱せず、火だるまになる。

 俺はそんなオークから距離を取り、オークを見ていたが、しばらくすると、オークは煙となって消えた。


 うーん、楽勝だな。

 

「相棒、オークも相手にならねーよ。もっと奥に行ってもいいと思うぞ」

「上手くいきすぎだなー」

「お前らは攻撃に偏りすぎだ。相手が何かをする前に倒しちまってる」


 まあ、俺の力なら大抵のモンスターは一撃死だ。


「逆を言えば、何かされるとヤバいわけだね」


 後ろにいたちーちゃんが指摘してきた。


「このパーティーは思ったより出来るが、思ったより脆そうだな」

「仕方ないよ。ルミナ君を除けば、一番防御力があるのはヒーラーのアカネちゃんでしょ」

「私はタンクなんかしませんよ!」


 アカネちゃんは過敏に反応する。

 

 すぐ逃げるお前に期待してねーよ。


「でも、オーク相手に余裕でしたよ。何回か色んなパーティーでオークを相手にしましたけど、こんなスムーズにいったのは初めてです」


 カナタも楽勝と感じているようだ。

 

「それはルミナちゃんがいるからだよ。オークを安物の剣で真っ二つなんて聞いたことない。多分、ルミナちゃん1人で20階層以降もいけるよ」


 グラディエーターだった時は、状態異常に弱いという弱点があったが、今はそうでもない。

 グラディエーターの時より力は落ちているが、20階層程度ならいける気がする。


「センパイって自称じゃなくて、本当にすごいんですね。1人で深層に行ったほうが早いんじゃないですか?」


 冷たいことを言うなよ。

 寂しいじゃないか。


「1人で行けるわけねーだろ。20階層以降なら泊まりになるんだぞ」


 体力が尽きるわ!

 

「体力オバケなセンパイでも無理ですか」


 当たり前だ!


「ソロの限界は20階層って言われてるね」

「そもそも1人でダンジョンに行かねーわ。死んだら終わりなんだぞ」


 3月は1人だったけど!


「ルミナ君って、すごいのはわかるんですけど、そんなにすごいんですか?」

「すごいんだよ!」


 シズルは俺としかダンジョンに行ったことないから、俺のすごさがいまいちわからないらしい。

 

「二つ名持ちは皆、規格外だよ。ランクは素行が関わるからあまり信用できないんだ。特にルミナちゃん達の第二世代はランク詐欺がひどいね」


 えらい言われようだ。

 個人主義が多いだけだよ!


「神条さんはパワーがすごいことで有名なんですよ」


 カナタは良い子だねー。

 

「後衛タイプの魔女の力とは思えないね。あんた、グラディエーターの時って、どんなヤバいヤツだったのさ」

「そういえば、ズメイの巨体を蹴飛ばしてました……」

「ズメイののし掛かりを受け止めてたな」


 俺の活躍を見ていたシズルとシロが呆れた表情でつぶやく。

 

「ズメイって、キング○ドラみたいなモンスターなんだろ? あんた人間?」

「俺っちは疑っている」

「褒め称えられているはずなのに、バカにされている気がするのは気のせいか?」


 なんかイラつく。

 

「ゴリラなんて思ってないよ」

「馬鹿力なんて思ってねーぞ」


 思ってんじゃん!


「イライラ」

「センパイ、落ち着いて。どうどう」

「おい!」


 俺を猛獣扱いするな!

 

「僕は憧れるなー」

「お前は本当に良いヤツだな。今度、ジュースを奢ってやるよ。それに比べて、姉のほうは……」

「まあまあ、ルミナ君がいるおかげで安心してダンジョン探索が出来て、感謝してるんだよ」

「フン! ツンデレ共め!」


 ずっとデレてろ!

 そして、俺を褒め称えろ!


「それでどうする? もうちょっとオークとやる?」

「僕はまだ大丈夫ですよ」

「じゃあ、あとちょっとオークを狩ったら帰ろうか。ルミナちゃん、それでいい?」

「俺の活躍を見せてやるよ!」

「…………私は何もしてませんね」


 

 その後、アカネちゃんが不満そうにつぶやいたため、オークと戦わせてやった。

 少し、泣いてた気がするが、ちゃんと倒せてた。

 

 アカネちゃんも成長しているようだ。


 そして、俺のメルヘンマジックやシズルの忍法を後輩共にお披露目したところでダンジョンから帰還した。


 俺のメルヘンマジックは微妙な表情をされたが、シズルの忍法は人気だった。


 解せぬ。




 

攻略のヒント

 レベルが上がると力や速さなどの身体能力が向上する。

 また、魔法の威力や範囲も向上する。

 ただし、成長には個人差があり、力が伸びやすい者もいれば、速さが伸びやすい者もいる。

 これは個人の資質やジョブに影響される。

 

『はじまりの言葉』より 



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