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第021話 目が合ったら殴ろう!


 パーティーの今後の予定を決めた俺達は、レベルとスキルの確認のため、ダンジョンに行くことにした。

 

 姉と妹に貰った女性用の服(ロングスカートじゃい!)に着替え、協会にやってきた俺達は、協会の入口の前まで来ていた。


「なあ、俺のこの状況って、他のヤツらは知ってんのか?」

「知ってると思う。私達がダンジョンから帰還した時に騒ぎになったんだけど、他のエクスプローラもたくさんいたわ。高ランクのエクスプローラもいたしね。あと、掲示板で大騒ぎになってた」


 やっぱりね。

 じゃあ、今から俺は見世物か?

 よし! 変な目で見てくるヤツは殴ろう。


 俺はその場でストレッチをし、戦闘モードに入った。

 そんな俺を見て、シズルが咎めてくる。


「やめなよ。一応、本部長が騒ぐなって、釘を刺してたよ。あと、東城さんが皆に事情を説明して回ってたらしいわ」


 おお! さすが東城さん!

 何ていい人なんだ。

 キャー! ステキー!

 抱いてー。

 

 …………シャレにならん。


「ふーん。じゃあ行くか」


 俺は覚悟を決め、協会に入っていった。

 

 協会に入ると、大勢のエクスプローラで賑わっている。

 俺はそいつらを見渡し、何だ、いつも通りだなと思い、受付のマイちんの所へ向かった。

 

 しかし、受付に向かう途中から段々と視線を感じるようになってきたため、俺は立ち止まり、周囲を睨みつけた。

 すると、いつもなら、ほぼ全員が視線を逸らしていたのに、今日は半分くらいは、視線を逸らさずにこちらを見続ける。


 殺す!


 俺はいつまでも見てくるヤツらに、ちょっと注意しようと思い、拳を握りしめ、近づこうとする。

 すると、そんな俺の空気を感じ取ったのか、シズルは俺の手を取り、俺を引っ張って、受付に歩いていく。


「離せ! ちょっと常識を教えに行くだけだ!」

「拳を握りしめて? ほら、いいから行くよ」


 シズルはそう言うと、俺の後ろに回り、俺の背を押してくる。

 

 俺は押されるのを払おうかと思ったが、前方に見える受付で、俺達を笑顔で手招きするマイちんの姿を確認すると、大人しく進むことにした。


「ねえ、ルミナ君。私、以前、貴方にもう少し大人しく来るように言わなかった?」


 マイちんが笑顔のまま聞いてきた。

 

「今日はまだ、何もしてませんよ? ほんとにほんと」


 必死に弁解する俺。

 ため息を吐くマイちん。


「貴方達が入ってきたところから見てたわよ。気持ちはわかるけど、落ち着きなさい。皆、物珍しいだけで、すぐに慣れるわ」

「目が合ったら、殴る、だと思う………ん、です、けど」


 マイちんに睨まれ、段々と小声になっていく情けない俺であった。


「シズル、このチンピラとパーティーを組んだんだったら、気をつけなさい。リーダーの評価はパーティーの評価に直結するわよ」

「わかってます。ちゃんと抑えておきます」


 シズルはそう言いながら、俺の手を取る。

 

 俺は子供か!


「で、今日は何? ダンジョンに行くの?」

「ああ。スキルの確認と身体のチェックがしたい。特に身長が変わりすぎた。このズレを把握しておかないと危ない」


 身長が低くなるということは、リーチが短くなるということだ。

 それを修正しておかないと、命取りになる。


「なるほど。確かにそうね。じゃあ、申請するわ。あと、ダンジョン探索が終わった後でいいんだけど、前回の成果を売ってくれないかな? ≪知恵者の服≫は譲ってくれないだろうけど、宝石は売ってほしいわ」


 宝石って、ズメイとレッドゴブリンのやつか。

 別にいらんな。


「シズル、いるか? 俺はいらない」

「私もいらない。売ろうか」


 俺は一応、シズルにも確認を取るが、やはり、シズルもいらないらしい。


「じゃあ、売る。後でまとめて提出でもいい?」

「ええ、ありがとう。貴方達って、ズメイの分しか魔石を持って帰らなかったでしょ? だから、上がうるさいのよ。魔石用に魔法袋を買ったら?」


 俺達のアイテムボックスは魔石を入れることはできない。

 そのため、魔石を入れる魔法袋は必須である。

 

 俺は東京本部に来てから、色々とあったため、魔法袋を購入する余裕はなかったのだ。

 しかし、そろそろ買っておいてもいいかもしれない。


「今、在庫ある? 宝石を売った金で買いたい」

「あるわよ。いくつ、買う? 宝石の値段を考えると、余裕で買えるわよ」

「1人1つでいい。2つちょうだい」

「わかったわ。用意しておく」

「ありがと」

「ありがとう、マイさん」


 俺とシズルはマイちんにお礼を言い、Dカードを提出する。

 マイちんはDカードを受け取ると、奥に申請に行った。


「あら? ルミナとシズルちゃんじゃない?」


 俺とシズルがマイちんを待っていると、後ろから女の声が聞こえてくる。

 俺が後ろを振り向くと、そこにはジャージを着た長身の女がいた。


「あ、長谷川さん! ご無沙汰してます。この前はありがとうございました」

「あら、ご丁寧に。気にしないで。私もレベル7のポーションを見られて良かったから」


 こいつは長谷川ショウコ。

 クラン≪ヴァルキリーズ≫の副リーダーだ。

 

 なんでも、ダンジョンから帰還し、母親にポーションを届けるために急いでるシズルを病院まで連れて行ってくれたらしい。


「なんだ、ショウコか。この前はウチのシズルが世話になったらしいな。俺からも礼を言っておくわ。ありがとよ」

「はい、どういたしまして。でも、本当にルミナなのね。こうして話すまでは、半信半疑だったわ」


 ショウコは俺をまじまじと見る。

 

「わかんねーぞ。実は俺は自分のことを神条ルミナだと思い込んでる頭のおかしいヤツかもしれない」


 何かそんな話、なかった?


「なにそれ? 大丈夫。言動が完全にルミナよ。もう少し、言葉使いを何とかしたら? 小学生の頃はまだ可愛げがあったわよ」


 ほっとけ。

 マイちんとかに、たまには敬語も使うぞ。


「ルミナ君は長谷川さんと知り合いなの? そういえば前に高ランクのエクスプローラと付き合いがあるみたいなこと言ってたっけ」


 言ったっけ?

 忘れちゃった。


「私とルミナは同じ時期にエクスプローラになった同期よ。昔はパーティーも組んだこともあるの。まあ、うちの今のリーダーと、誰がパーティーリーダーをやるかで揉めてたけど」


 こいつと≪ヴァルキリーズ≫のリーダーである村松サエコ、あと、何人かとはよく組んでいた。

 

 当時は、今ほど新人エクスプローラの数が多くなかったので、同期だと、自然にパーティーを組むことも多かったのだ。

 とはいえ、こいつとサエコは実家の都合とやらで地元に戻っていったので解散した。

 

 その後、東京本部に戻ってきて≪ヴァルキリーズ≫を結成し、今に至る。


「懐かしい話だな。で、お前はダンジョンか? 他の女共が見当たらないけど」


 ≪ヴァルキリーズ≫は女性エクスプローラのみで結成されたクランなので、男はクランに加入することは出来ない。

 

 シズルはやらんぞ!


「今日はオフよ。私はバイト。≪鑑定≫持ちだからね」


 こいつは現在、確認されている鑑定の≪武具鑑定≫、≪薬品鑑定≫、≪アイテム鑑定≫、≪エネミー鑑定≫の全部を持っている奇特なヤツだ。

 協会の鑑定士でも1つか2つなのに。


「そりゃあ、お疲れ様で」

「どうも。じゃあ、私は行くわ。あなたが本当にルミナって確認が取れて良かったわ。私だけでなく、他の連中も半信半疑なのよ」

「だろうな。視線をビシバシと感じるわ。殴りてー」


 俺のセリフにシズルが睨む。


「やめておきなさい。あなたのお仲間に迷惑がかかるわよ。まあ、うちの子達には説明しておくから、うちの子達には絡まないでね。じゃあね」


 ショウコはそう言って、手を挙げると別の窓口に行ってしまった。


 あいつ、ジャージで仕事するのか?



 その後、戻ってきたマイちんに申請を終えたことを聞いた俺達はダンジョンへと向かった。


 ちなみに、今日の警備員はいつもの2人ではなかった。

 

 あいつらにも休みがあるんだな。

 よかった、よかった。



 


攻略のヒント

 モンスターがたまに落とす宝石は、ダンジョン鉱石とも呼ばれ、色鮮やかであり、加工も容易であるため、高値で取引される。


『ダンジョン指南書 ドロップ品について』より

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