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評判最悪男、魔女になる  作者: 出雲大吉
さらにおまけ!
216/217

人を数字で見るのは良くないと思う


 俺は休みの日を使って実家に帰ることにした。

 特に理由はないが、一応、春休みだし、親に顔くらいは見せようと思ったのだ。

 まあ、ひと言で言えば親孝行である。

 けっして、3学期の成績の通知表に自信がない訳ではない。


 俺はいつもの様に電車を使い、昼過ぎには実家に帰ってきた。


「ただいまー!」


 …………………無反応である。


 玄関の靴を見る限り、母親はいないっぽい。

 でも、お姉ちゃんの靴はあるし、お姉ちゃんはいるはずだ。

 なのに、出迎える気はないらしい。


 かわいい弟が帰ってきたというのに非常に嘆かわしい……


 俺は靴を脱ぎ、リビングに向かう。


「ただいまー……」


 俺はテンションが落ちながらも扉を開き、中を覗いた。


「あ、ルミナ君、おかえりー」


 ソファーには携帯を弄りながら、膝を抱えて、体育座りで座るお姉ちゃんがいた。

 お姉ちゃんはスカートではないため、パンツは見えないが、太もものラインが非常にエッチだ。


 写真撮っていいかな?

 いや、絶対に怒られるな……


「お姉ちゃん、ただいま!」


 俺は早歩きでお姉ちゃんのそばに行くと、抱きついて、挨拶をする。


「急にどうしたの?」

「外人ごっこ」

「ルミナ君って、たまに理解できない思考になるよね」


 俺はオンリーワンだから……


「ホノカは?」

「アカネちゃん家」


 あいつの家か……

 まあ、どうでもいいな。


「お姉ちゃんは? 出かけないの?」

「今日はそんな気分じゃないから家で遊ぶ」


 ふーん……


 俺はチラッとさっきから視界に入っている女を見る。

 もっと言えば、玄関では、家族のものではないが、見覚えのある靴があったのにも気付いていた。


「聞いたか? お姉ちゃんは家で遊ぶらしいからお前は帰っていいよ」

「何でだよ……どう考えても遊ぶ相手はあたしじゃん」


 お姉ちゃんの友人を名乗る怪しい女がツッコんでくる。

 その怪しい女は我らが≪魔女の森≫の参謀であるちーちゃんであった。


「お前は帰って、カナタと遊んでろ。弟をかわいがれ」


 俺は昨日も学校で会ったちーちゃんに文句を言う。


「逆に聞きたいんだけど、この歳になって弟と何をして遊ぶのさ?」

「お姉ちゃん、何するー?」


 俺はお姉ちゃんに話を振ってみた。


「お姉ちゃんとお話をしよっか。ねえねえ、男に戻ったらしいけど、シズルちゃんとはどんな感じ?」


 あ、自室に上がろ。


「ちーちゃん、ごゆっくりー」


 俺は振り返り、リビングを出ようとするが、お姉ちゃんの手が俺の腕を掴んだ。


「やめようよ……そういうえっちな話は家族で話すもんじゃなくない?」

「うん。そうだね…………妹が4人になるのかー」


 なんで4人?

 お姉ちゃんの妹はホノカ1人でしょ。


「うわー、嫌なこと聞いちゃった……」


 ちーちゃんがちょっと引いてる。


「なんなん?」


 こいつらの反応がわからん。


『相棒……どんな感じって聞いて、えっちな話って返ってきたら想像つくだろ』


 ふむ……確かに。


「お前は嫌がるなよ。かわいい後輩2人の幸せを祝福しろよ」

「いや、あんたの家を知ってるし、あー、あそこであんなことをーって思うと、なんか嫌だ。しかも、あんたら、女だもん」


 女同士ではしてないけどね。


「俺、男なんだけどなー」

「それなんだけど、あんた、なんで今も女なの? 学校はまだあんたの言いたいこともわかるんだけど、ここ、あんたの実家じゃん」

「男の姿でお姉ちゃんに欧米風挨拶したら引かれちゃうかもしれないだろ」

「あたしは十分、引いてるけどね」


 お前なんかどうでもいいわ!

 いっつも引いてるじゃん!

 もう慣れたわ。


「私はどっちでもいいけどねー。まあ、女の子の方がかわいいからこっちかな……」


 お姉ちゃんは再び、携帯に目を落とす。


「男でもかわいいじゃん」

「昔はねー…………中学くらいでルミナ君に身長を抜かれちゃったし」


 これだからショタ好きは困る。


「お姉ちゃーん!」


 俺はお姉ちゃんに再度、抱きつく。


「はいはい」


 お姉ちゃんはこちらを向きもせず、携帯を見たままだ。


「どう思う? まだ、女ならセーフじゃね?」


 俺はお姉ちゃんに抱きつきながらちーちゃんを見る。


「うーん、微妙……まあ、夏の合宿でも似たようなものだったし、セーフに見えてきたような気がする」

「じゃあ、セーフだ」


 間違いない。


「ルミナ君、いい匂いするね」

「そう? フェロモンかな?」

「ううん。甘い匂い」


 あー……


「さっき、昼飯にパンケーキ食べたからだわ。シロがうるせーから」

「美味そうだったから……」


 シロがニョロニョロと服から出てきた。


 こいつにネットを見せるとロクなことがない。

 これが食べたい、これを作れと注文が多い。

 俺は料理店じゃねーぞ。


「うーん、私も食べたくなってきたなー」

「お姉ちゃん、お昼は?」


 もう1時半だよ?


「朝が遅かったから食べてない」

「ふーん、ちーちゃんは? ってか、お前、いつからいんの?」

「昼前。ミサキとなんか食べに行こうと思ってたけど、ミサキが動きたくないって」


 怠惰なのかな?

 いや、あれか…………

 だから、お姉ちゃんのリアクションがさっきから薄いのか……

 いつもなら頭の一つでも撫でてくれるもん。


「ちーちゃん、金やるから買ってこい」

「あんたが行けよ。私はこの辺を知らないから」


 じゃあ、どうやってウチに来たんだよ。


「お前、今日、初めてウチに来たんか?」

「いや、結構、来てるけど」


 じゃあ、わかるだろ。


「しかし、なんかちーちゃんが実家にいるの嫌だな…………」

「なんでだよ。さっきまでアカネもいたよ?」

「あいつはしょっちゅういるわ。あーでも、アカネちゃんとちーちゃんが揃うともっと嫌だな。同じパーティーメンバーが実家に揃うとなんか嫌だわ」

「まあ、気持ちはわからないでもないけどね。あたしも友達を家に呼べるけど、あんたらはなんか嫌だし……」


 だよね?

 別に嫌いとかじゃないけど、抵抗がある。


「ルミナ君、どうでもいいから作って。材料あるから」


 お姉ちゃんはマイペースに俺らの会話を無視した。


「今日、ずっとこんな感じ? お前、マジで何しに来たん?」

「うーん、まあ、あたしも暇だし」


 こいつも愛想が悪いからな。

 気にしないんだろう。


「ホノカがアカネちゃんの家に行った理由がわかったわ」


 あの2人、お姉ちゃんの機嫌が悪いから逃げたな。


「ルミナ君、私、蜂蜜を多めにね。あとでちゅーしてあげるから」

「いらないよ…………ちーちゃんも食べる?」

「…………手伝うよ」


 おねがーい。




 ◆◇◆




「ルミナ君、こういうのも上手になったね。昔は甘いものはあんまり作らなかったのに」


 お姉ちゃんは俺が作ったパンケーキを頬張りながら感想を言う。


「食いしん坊の蛇がいるからなー」

「美味いぞ、相棒!」


 なぜ、こいつも食ってるんだろう?

 さっき食べたのに……

 ちーちゃんの分もあわせて3枚も焼いたぞ。


「うんうん。美味しいねー」


 お姉ちゃんの笑顔が戻ってきたぞ。

 やったね!


「お前は感想はないのか?」


 俺は黙々と食べているちーちゃんを見る。


「材料を混ぜたのあたし」

「焼いたのは俺じゃい」


 なので、これは俺の作品!


「……美味しいよ」


 相変わらず、押しに弱いヤツだ。


「ねえねえ、お姉ちゃんって、よく友達呼ぶの? 見たことないんだけど」

「ルミナ君がいる時は呼ばないからねー」


 えー……

 なんかひどくない?


「人を家族の恥部みたいに……」

「うーん、というか、家に来る?って聞くと、大抵、弟ちゃんいる?って聞かれるね」


 それはかっこいい弟ちゃんに会いたーい!

 ではないだろうなー……


「2年はマジで俺の事が嫌いなんだなー」

「というか、めんどくさそうだし……タメ口だし」


 それ、ちーちゃんが思ってることじゃない?


「敬語を使う習慣がないからなー」


 尊敬できねーし。

 東城さんくらいかな?

 あと、たまにマイちん。


「敬語でしゃべってみてよ」

「なんでですかー?」

「あ、敬語だとアカネになるのか……アカネは1人でお腹いっぱいだからやっぱいいや」


 アカネちゃんが2人いたら嫌だもんね。

 うぜーし。


「チサト先輩、あー、あー、チサト先輩!」

「マネしようとしなくていいよ……」


 うーん、アカネちゃんは難しいな……


「ただいまー」

「ただいまー」


 お姉ちゃんやちーちゃんがパンケーキを食べていると、玄関から2人の声が聞こえてきた。

 どうやらホノカとアカネちゃんが帰ってきたっぽい。

 いや、アカネちゃんが帰ってくるのはおかしいんだけどね。


「なんかいい匂いがするー! あ、お兄ちゃんもいる」


 俺はついでらしい。


「ホントだー! ズルい、ズルい……あ、センパイだけ食べてない……かわいそうに……」


 何が!?


「俺は家で食べたの!」

「なるほどー。センパーイ、私、センパイの事が好きだなー。尊敬もしてます!」

「私もお兄ちゃんの事が好きだよー。かっこいいと思うね!」


 こういう時にしか好きと言わない妹と幼なじみである。


「材料がもうないと思うな」


 かわいい妹と幼なじみに作ってあげたいのは山々なんだけど、仕方がない。

 残念だわ。


「あるよ。棚の上にストックがあるから」


 お姉ちゃん……


「ただいまー」


 俺がめんどくせーなーと思っていると、ホノカとアカネちゃんの後ろから母親の姿が見えた。


 お母様が帰ってきた!!

 やったぜ!


「あら、いらっしゃい…………何を食べてるの?」

「パンケーキ。ルミナ君が作ってくれた」


 お姉ちゃんがかわいくもぐもぐしながら言う。


「あらあらー」


 母さんは嬉しそうだ。

 俺が料理をすると喜ぶ人なのだ。


「お母さんも食べる? 今からお兄ちゃんが私とアカネちゃんの分も焼いてくれるけど」


 えー……

 まだ頼まれてすらないのに決定してるし……

 そこは親に頼もうよー。


「あらあらー。悪いわねー」


 えー……

 遠慮しろよー。

 太るぞ、ババア!


「ん?」


 母さんは笑顔を消し、俺の方を向く。


「母さんも食べるよね! よーし、作っちゃうぞー!」

「悪いわねー。あ、それとルミナ君、通知表を見せてくれる?」

「あ、お腹痛い。すごく痛い。でも、尊敬する母親のために頑張って作らないと!」


 ルミナちゃん、我慢する!


「…………見苦しいなー。お兄ちゃんも怒られてよ」


 お前はすでに怒られてんのか……


「大変ですねー。ウチは怒られませんでしたよー。ただ、ため息つかれましたけど……」


 アカネちゃんは諦められたか……


「いつもこんなん?」


 ちーちゃんがお姉ちゃんに聞く。


「うん。ルミナ君とホノカちゃんとアカネちゃんの成績が良かったことなんてないし」

「才能を全部、ミサキにとられたのか…………」


 いいからお前はフォローしろ!

 仲間だろ!

 お前のパーティーのリーダーが泣いちゃうぞ!





攻略のヒント


母「…………うん」

ルミナ「そこまで悪くないよね?」

母「…………うん」

チサト「5は何個あった?」

ルミナ「5って何? 3までだろ」

ホノカ「だよねー」

アカネ「ねー」

チサト「…………うん」


『とある会話』より

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[一言] パンケーキの生地がホットケーキ用のミックス粉か、自前での調合かでかなり変わりますよね。計量・調合から自前でやっているならばちーちゃんの頑張りで大きく味が変わるでしょうし、ミックス粉を使ったな…
[良い点] 体育の成績も3なのは明らかに授業態度で減点されてますね間違いない
[一言] >「あ、センパイだけ食べてない……かわいそうに……」 パッと見てこう言うあたり、アカネちゃんもかなりの畜生だよね 実は煽りスキルとか持ってない? >母さんは笑顔を消し、俺の方を向く。 怖い…
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