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評判最悪男、魔女になる  作者: 出雲大吉
さらにおまけ!

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211/217

柊アカネは成長し、神条ルミナは成長しない(3/4)


 俺とアカネちゃんは1階層に到着した。


「アカネちゃんって、ヒーラーだっけ?」


 俺は指導を開始する前にアカネちゃんがどういうタイプのエクスプローラなのかを聞いてみる。


「ですねー。あ、ステータス見ます?」

「見せて、見せて」

「えーっと、どうぞ」


 アカネちゃんはそう言って、ステータスを見せてくる。




----------------------

名前 柊アカネ

レベル1

ジョブ プリースト

スキル

 ≪回復魔法lv1≫

☆≪逃走lvー≫

----------------------




 えーっと、レアスキルが見えるんだけど…………


「何これ?」


 俺は謎のスキルについて聞く。


「最初からあったので、わかんないです。ただ、世界中で私しか持ってないそうです」


 すごいね…………

 でも、逃走かー。

 えーっと、どんなスキルだ…………




----------------------

☆≪逃走lv-≫

  自分より強い相手から逃げる時に足が速くなる。

  また、モンスターから気づかれにくくなる。

----------------------




「…………うん」

「これ、何なんですかねー?」


 お前、絶対に草食動物だろ。


「まあ、レアスキルであることは間違いないし、危なくなったら逃げな」

「俺を置いて先に行けですね。わかります」


 いや、お前は俺がそう言う前に逃げてるタイプだわ。


「センパイのも見せてくださいよー」

「嫌」


 嫌われるもん。


「えー、いいじゃないですかー」


 アカネちゃんはそう言いながら俺の体を揺する。


 うーん、こいつ、もうあざとさをマスターしてやがる。


「ちょっと変なスキルがあるから嫌なんだよなー」


 ちょっとね。

 ほんのちょっと変なスキルがあって、大抵の女子に嫌われるのだ。

 お姉ちゃんに使って、1週間無視され、マイちんがドン引きしてたスキル。


「私だって、見せたじゃないですかー」


 まあ、そう言われると、そうだなー。


 俺は自分のステータスを操作し、アカネちゃんに見せる。



----------------------

名前 神条ルミナ

レベル17

ジョブ グラディエーター

スキル

 ≪身体能力向上lv3≫

☆≪自然治癒lv2≫

 ≪空間魔法lv2≫

 ≪怪力lv4≫

☆≪斬撃lvー≫

☆≪魅了lvー≫

☆≪気合lvー≫

 ≪索敵lv3≫

 ≪罠回避lv2≫

 ≪冷静lv2≫

 ≪隠密lv5≫

----------------------




「ひえー……わかんないけど、すごそうですー。さすがはセンパイ。自慢してだけのことはありますねー」


 だろう、だろう!


「レベル17でこんなにスキルがあるのは俺様くらいなのだ!」


 わはは!

 てんさーい!


「すごいですねー…………ん? え……………………」


 俺の事を素直に称賛していたアカネちゃんが真顔になり、俺から1歩、2歩と後ずさる。


「アカネちゃんは俺の事が好きだから魅了は効かないよー」


 2つの意味で別にそんなことはない。


「…………クズが! おかしいと思った! お兄さんが私を助けるわけないもん! 死ね! やだー! 犯されるー!!」


 思ってた以上に拒否されたな……

 結構、傷つくわ……


「アカネちゃん、アカネちゃん、これはそういうスキルじゃないから。俺はエロゲ野郎じゃないから」

「…………私、小学校3年生くらいの時はセンパイの事が好きでした…………でも、センパイがPKを自慢してた時に私の初恋は焼却炉に行き、今、この瞬間に灰となって彼方に飛んでいきました」


 うーん、王道幼なじみルートであるアカネちゃんルートのフラグが折れたなー。

 別に問題ないけど。


「わかったから。そんな便利……非道なスキルじゃないから大丈夫だって」

「初恋が軽蔑となって帰ってきました」


 おかえりー。

 さっさと尊敬に進化しな。


「いいから行くよ」

「はーい」


 俺達は冗談はこれくらいにし、スライムを探しに奥へと向かった。


 俺達がそのまま歩いていると、俺は≪索敵≫により、スライムの反応を感知した。


「アカネちゃん、この先にスライムがいるわ」

「ホントですか? よーし!」


 アカネちゃんはスライムは倒せるらしく、気合を入れている。


「あのさ、武器は?」

「へ?」


 持ってなくね?


「素手でやんの? さすがに危なくね?」

「あ、そういえば、いつもは学校の貸し出し品だから…………」


 中等部で自前の武器を持ってるヤツは少ないからなー。

 ましてや、この前、入学したばっかの1年生は持ってないだろう。


 俺は仕方がないので、アイテムボックスから杖を取り出し、アカネちゃんに渡す。


「はいこれ」

「え? いいんですか? ありがとうございます! 大事にします!」


 いや、あげるとは言ってないんだけどな……

 まあいいか。


「じゃあ、スライムを倒してみせてよ」

「任せてください」


 アカネちゃんは杖を受け取ると、意気揚々と奥へと歩いていく。

 すると、すぐにスライムが見えてきた。


「頑張ってー。危なくなったら助けるから」


 俺はそう言いながらアイテムボックスから剣を取り出す。


「はい!」


 アカネちゃんは杖を構えながら歩いていく。

 スライムは地面でもごもごしていたが、アカネちゃんが近づいてくると、動かなくなった。

 すると、次の瞬間、スライムは急にジャンプし、アカネちゃんに襲いかかった。


「えいっ!」


 アカネちゃんは飛んできたスライムが見えているらしく、普通に杖を振り下ろし、飛んできたスライムを地面に叩きつける。

 スライムはべちゃっと潰れ、煙となって消えていった。


「おつー。楽勝じゃん」


 ってか、アカネちゃんって、見た目と違って、本当に運動神経がいいな。

 よく反応するわ。


「こんなもんですー! まあ、スライムはいけるんですよね…………」


 アカネちゃんは嬉しそうに小さくガッツポーズをしていたが、すぐにシュンとなった。


 運動神経の良いアカネちゃんはやっぱり実力というか才能はありそうだ。

 今の動きを見れば、実力的にゴブリンも十分に倒せるだろう。

 でも、人型であり、武器を持っているゴブリンが怖くて、今の様な動きが出来ないのだろうね。


「スライムが余裕なのはわかったよ。じゃあ、ゴブリンに行こうか」

「うっ……わかりました」


 俺は勇気づけるようにアカネちゃんの背中をポンポンと叩くと、2階層に向かった。



 2階層に着くと、ゴブリンを探す。

 すると、俺のスキルである索敵がすぐにゴブリンを感知した。


「アカネちゃん、この先にいるよ」

「…………はい」


 アカネちゃんのさっきまでの元気が消えている。


 ……ダメだこりゃ。


「アカネちゃん、俺が先に手本を見せるわ」

「わかりました」


 俺はアカネちゃんの前に出ると、そのまま歩いてゴブリンの元に行く。

 ゴブリンを視認できる距離まで近づくと、ゴブリンも俺に気付いたらしく、ナイフを構え、俺に向かって、走ってきた。


「き、来たー……!」


 後ろからアカネちゃんの悲鳴に似た声が聞こえてくる。


 俺は持っていた剣をアイテムボックスにしまうと、片足を少し上げた。

 ゴブリンは俺が武器をしまったことが嬉しいのか、醜悪な笑みを浮かべながら切りかかってくる。


 しかし、ゴブリンのナイフが俺の身体に届くことはなかった。


「ゴブッ!」


 ゴブリンの口から嗚咽の声が漏れる。


 ゴブリンの腹には俺の足が突き刺さっていた。

 ゴブリンは小さいし、俺の足の方が長いので、ナイフが当たる前に先に腹に蹴りをぶち込んだのだ。


 ゴブリンはナイフを落とし、そのまま膝をついた。

 俺はそんなゴブリンの首根っこを掴むと、持ち上げ、そのまま壁に叩きつける。


 ゴブリンは悲鳴をあげることもできずに息絶え、煙となって消えていった。


「ね? 雑魚」


 俺はドロップした魔石を拾いながらアカネちゃんに声をかける。


「いやいや! それを私にやれと? 無理無理。ガチでその筋の人にしか見えませんでしたよ!」

「別にこうしろとは言ってないよ。ゴブリンなんて子供サイズの雑魚だぜ? その杖で適当に殴れば死ぬよ」

「ですかね…………」

「まあ、やってみな。危なくなったら助けるから」

「わかりました……」


 アカネちゃんは自信がなさそうに頷く。


 俺達は再度、歩き出し、ゴブリンを探す。

 すると、またもやすぐにゴブリンを探知した。


「アカネちゃん」

「はい」


 俺がアカネちゃんを呼ぶと、意図がわかったのか、杖を構え、前に出た。

 アカネちゃんが俺の横を通り過ぎた時に見えたのだが、アカネちゃんは震えており、涙を浮かべていた。


 こら、無理だわ。

 アカネちゃんのためにも危ない目に遭わせて、辞めさせた方がいい。

 ゴブリンでこれじゃあ、この先のオークなんてまず無理だ。


 はっきり言って、アカネちゃんはエクスプローラとして、最も大事な才能がない。

 それは勇気でも欲望でもなんでもいい。

 奮い立たせる心がないのだ。


 まあ、ホノカに付き合ってダンジョン学園に入ったくらいだからなー。

 最悪、後ろでヒールをする係でもいいけど、ピンチになったら終わりだ。

 この調子では仲間のピンチに震えているだけだろう。

 そんな仲間はいらね。


 俺はアカネちゃんに諦めをつけ、後ろから見守ることにした。


 アカネちゃんはゴブリンに接近するために歩いていたが、すぐに足が止まった。

 俺の位置からも視認できる。

 ゴブリンを発見したのだ。


 ゴブリンは俺達に気付くと、ナイフを構え、先頭にいるアカネちゃん目掛けて、走り出した。


「ひっ!」


 ゴブリンの動きを見たアカネちゃんが固まった。


 チッ! バカが!


「殴れ!!」


 俺はアカネちゃんに向かって怒鳴った。


 アカネちゃんはビクッとしたが、すぐに杖を構えると、タイミングを合わせ、振りかぶった。

 だが、振りかぶりすぎていた。

 恐怖で冷静さを失くし、思いっきり殴ろうとしたのだ。


 アカネちゃんは振りかぶった杖を振り下ろすが、先ほどのスライムを殴ったキレはない。

 おおざっぱであり、隙だらけである。


 アカネちゃんが振り降ろした杖をゴブリンは簡単に躱すと、アカネちゃんの左方向からナイフを突きだした。

 アカネちゃんはとっさに顔を庇うように腕を出すと、ゴブリンのナイフがアカネちゃんの腕に突き刺さった。


「ひぐっ!!」


 アカネちゃんは痛みから杖を落とし、腕を抑えながらその場でしゃがんだ。


 あーあ……

 それをすると、死を待つだけじゃん。

 武器もない、逃げることもできない。

 ゴブリンに殺してくれと言ってるようなものだ。


 実際、ゴブリンはアカネちゃんの腕に刺さったナイフを引き抜くと、さらに追撃をかけようとしている。

 俺はその光景を見て、アカネちゃんには死んでもらおうと思った。

 死んでも生き返ることが出来るのがダンジョンである。

 中途半端な未練を残さないように、死んで諦めてもらおうと思ったのだ。


 だが、俺の目には泣いている幼なじみが映っていた。

 そして、その幼なじみと呼べるかもわからない子の足元には小さな水たまりができていた。


 それを見た瞬間、頭に血が上り、駆け出していた。


「死ねや!! ボケ!!」


 俺は助走をつけて飛び上がり、アカネちゃんに切りかかろうとしているゴブリンの顔面に必殺の飛び蹴りをお見舞いした。


 俺の蹴りを受けたゴブリンの首は変な方向に曲がり、息絶えた。

 俺はドロップした魔石を拾うと、アカネちゃんを見る。


「ひっ……! ひ、ヒック、ぐず」


 アカネちゃんは泣いている。

 俺はアイテムボックスからタオルを取り出すと、アカネちゃんにかけた。


「ごめんなさい……ひ、ぐ」

「いいからさっさと拭け。あっち行ってるから」

「行かないでー…………」


 アカネちゃんは俺の袖をつかむ。


「わかったから…………あっち向いてるからさっさとどうにかしろ。低階層とは言え、ダンジョンだぞ」


 俺はそう言ってそっぽを向く。

 アカネちゃんは立ち上がったようで、泣きながら隣でごそごそと何かをしている。

 まあ、気になるけど、考えないようにしよう。


「せ、センパイ、袋とかないですか?」


 俺はアカネちゃんの方を見ずにアイテムボックスからビニール袋を取り出し、渡す。

 俺がビニール袋を渡すと、ビニール袋が音を立てていたが、すぐに聞こえなくなった。


「よこせ。アイテムボックスに入れておく」


 俺はそっぽをむいたまま、手を伸ばす。


「…………はい。すみません」


 アカネちゃんは嫌そうだが、ビニール袋を持ったままでは戦えないため、素直に俺に渡した。

 俺はビニール袋を掴んだ瞬間、見ないようにアイテムボックスに収納する。


「もういいか?」

「はい。すみませんでした…………」


 俺はアカネちゃんの了承を得られたので、アカネちゃんの方を向く。

 アカネちゃんはケガをヒールで治したようだが、まだ泣いていた。


「お前には無理だ。諦めろ」

「そんな……嫌です」


 こんな目に遭って、何故に諦めないんだ?


「お前なー…………どう考えたって無理だろ」

「もう一回、やります」


 このやる気はどこから来るんだ?


「お前さ、やる気があるのはわかったけど、本当にエクスプローラになる気があるか?」

「…………え?」


 アカネちゃんが呆ける。


「今日、俺はずっとお前を見てた。はっきり言うが、向いてないし、そもそもエクスプローラをやる気があるようには見えんのだが」


 俺はずっと思ってたことを言うことにした。


「そ、そんなことないです!」

「じゃあ、聞くけど、その格好は何? かわいいけど、スカート履いて、ダンジョンに来るバカっていないぞ?」

「そ、それは…………」

「それに武器も持ってきてない。まあ、持ってないんだろうけど、それなら先に相談するだろ。俺が持ってきてなかったらどうする気だったの?」

「すみません。まだ、慣れてなくて」


 でしょうねー。

 まだ入学したばっかだし、ダンジョンに慣れてるわけがない。


「でもさ、ここって人が普通に死ぬところだよ? さっきのアカネちゃん、俺が助けなければ死んでたよ」

「……………………」

「まあ、俺が死ななければ生き返るけど、痛みもなく、死ぬわけじゃないよ? 俺、死んだことあるけど、マジでキツいよ?」

「私には覚悟がなかったんですかね……センパイに甘えてたんですかね…………」


 アカネちゃんが落ち込む。


「いや、別にそれはいいんだけどね。だって、アカネちゃん、ダンジョンの事をそんなに知らないでしょ」

「…………はい」


 ダンジョンの事を知らない。

 興味が薄いのだろう。

 だって、アカネちゃんはエクスプローラになりたいわけじゃない。

 ホノカに付き合っているだけなのだから。


「俺は小さいころからエクスプローラに憧れを持っていた。今でもダンジョンが楽しいし、お金ががっぽがっぽ入るからエクスプローラをやってる。そうじゃなかったらこんな危ない仕事を選ばない…………で、お前は? どうする? まだやる?」


 やる気がないなら辞めてしまえ!

 そう怒鳴りたいなー。

 可哀想だから言わないけど。


「やります!」


 やるんかい…………

 これだけ言って、まだやるのか…………


「いつか死ぬよ?」

「私には≪逃走≫があります!」

「さっきみたいに俯いてたらそのスキルも死ぬよ」

「もう大丈夫です!」

「辞めようよ…………」

「嫌です!」


 クソ!

 臆病ハムスターのくせに意志だけは強いな。


「うーん、じゃあ、これを持て」


 俺はアイテムボックスから槍を取り出した。


「槍? 私、ヒーラーですよ?」


 武器を持つヒーラーは少ないが、いないこともない。

 メイジは魔法という攻撃手段があるが、ヒーラーには身を守るすべがない。

 だから武器を持つヒーラーは少なからずいる。


「槍はリーチがある。恐怖も多少は少なくなるだろ」

「どうやって使うんです?」

「踏み込んで刺せ。ゴブリンなんぞはそれでお陀仏だ」


 その槍、そこそこ高いし。


「わかりました! やってみます! 一生大事にします!」


 アカネちゃんは大事そうに槍を抱えた。


 また、取られたし……

 誰もあげるとは言ってないんだけどなー。

 その槍、何十万もするんだけどなー…………

 

 非常に言いにくい…………





攻略のヒント


シズル「アカネちゃんの初恋ってルミナ君なんだってー?」

アカネ「あのクズ、しゃべったな!? いや、違うんですよー! 気の迷いなんです! 本当にやめてください! 超黒歴史なんです!! あんなの絶対に嫌です!!」

シズル「……………………」

チサト「あんた、そのクズの彼女の前でよくそこまでボロクソに言えるね…………」


『とある会話』より

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― 新着の感想 ―
[良い点] アカネちゃんは本当にいろいろ足りてないなw [気になる点] アイテムボックスに入れた例のブツでまたひと悶着ありそう。さすがにそこまで恩知らずの恥知らずじゃあないか?うーん、ありそう
[一言] あぁ、目に浮かぶ…… これは違うんです……!って焦るアカネちゃんと 微妙な顔をしているシズルさんの姿が……w
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