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評判最悪男、魔女になる  作者: 出雲大吉
第9章

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202/217

第182話 決戦前夜……その2!


 49階層を攻略し、50階層に到達した俺達は予定通り、50階層のボス部屋前の通路で一泊することにした。

 食事も済み、適当に話していると、就寝の時間となった。


 俺は寝るために一人用のテントに入り、寂しく寝る。

 

 ついに明日か……これまで長かった…………ぐー。



 俺は今、家にいる。

 シズルが隣で寝ている。

 そして、自分の身体を見ると、男だ。


 そうか…………俺は……ついに…………ヤッ――



「それは夢だから起きて」

「あれ?」


 俺は目を開けた。

 目の前には俺を見下ろすシズルがいる。

 俺はすぐに自分の股間に手を持っていく。


 うん、ないね。


「お前、もう少し、ゆっくり起こせよ」

「いや、時間だから」

「まあ、しゃーないか」


 俺は布団から出る。


「俺、なんか言ってた?」

「ううん。何もー」


 シズルはニコッと笑った。


「そっかー………………俺ってさ、普段、寝ている時に変なことを言ってない?」

「全然言ってないよー…………ただ、抱き枕呼ばわりはひどいねー」


 言ってんじゃん!


「いや、あのね! 言葉のアヤというかね!」


 俺、他に変な寝言を言ってない?

 ドスケベとか、おっぱいとかめっちゃ思ってんだけど!


「いや、焦んないでよ。どんだけひどいことを思ってんの? ほら、起きなよ。私ももう寝るから」


 大丈夫かなー?


 俺はちょっと焦りながらもジャージを着替え、テントを出る。

 シズルはそれを見て、自分のテントへと向かっていった。


 うーん、まあ、大丈夫だろ。

 あいつは優しいし。


 俺はうんうんと頷き、見張りをする場所へと行く。


 そこにいたのはおっさんAとキララだった。


 何で、お前らなの…………


「貴様か……」

「お前、この時間で大丈夫なん?」


 おっさんAは嫌そうな顔をし、キララは心配そう(?)に聞いてくる。


「俺は問題ない。ってか、お前がこの時間か? 泊まりは初めてだろ?」


 下っ端だし、もっと楽なところにすればいいのに。


「私はバフをかけてるだけで何もしてねーし。これぐらいはやるよ」


 ホント、変なところで真面目だな。


「ふーん。おっさんは?」


 俺は一応、おっさんAにも聞いてみる。


「セイギを休ませるためだ。ウチはあいつで持ってる組織だから極力休ませる」


 ほーん。


「≪Mr.ジャスティス≫にそこまで気を使わんでいいと思うが」


 優しさの塊だろうに。


「あいつも歳だからな。俺達は大学の同級生だったんだよ。セイギに引っ張られてエクスプローラになったし、セイギに引っ張られてクランを作った」


 なんか急に語りだしたぞ、おい!

 でも、気になるから聞いとこ。


「へー。お前らって、同学年なのかよ」


 知らんかった。


「そうだ。セイギは勉強は苦手だったが、いつも人の輪の中心にいた。勇気もあるし、エクスプローラになってからはまさしく、ヒーローだったな」

「そりゃわかる。テレビで見てたし。な?」


 俺はキララに同意を求める。


「だな。よくニュースや雑誌に出てた。すげーって思った」


 何だそのチープな感想は…………


「そうか……お前らの目にも、そう映ったか…………俺達はセイギを中心に活動してきたし、これからもそうするつもりだ。だが、そう長くはないだろうな」


 おや?


「なんで?」

「歳だって言っただろ。俺達もそろそろ引退を考えないといけない」

「ダンジョン病にでもなったか?」

「まさか。単純に身体がな……疲れは取れにくいし、動きも鈍くなった。それに…………まあ、いいか、教えてやる。レベルなんだがな…………若い人間の方がレベルが上がった時に能力が上がりやすいと考えている」


 へ?

 そうなの?


「マジで?」

「多分だがな。最初はお前の能力が高すぎたことが疑問だったんだ。いくらレアジョブとはいえ、当時、レベル20程度のお前がレベル30を超える俺達より能力が上なのが変だと思った。しかも、ちょこまかと動くネズミかと思ってたら、次に会った時はハルバードを振り回すチンパンジーに変わっていた。そうやって考えてみると、クラン内でもそういう傾向があったんだよ。そして、今回の仕事で確信した。キララさんもだが、お前らの能力は向上しすぎだ」


 あー、そうかもー。

 いや、誰がチンパンジーだ!


「俺はお前らの誰かが死ぬかと思っていた。そうならないように立ちまわるつもりだった。だが、お前らは死ぬどころか十分に貢献している。瀬能は自分よりレベルが上のキリングドールを抑えているし、後衛の魔法も見事だ。はっきり言って、レベル20程度の火力じゃない。極みつけはRainさんの忍法に柊さんだ」


 ん?


「シズルはわかるけど、アカネちゃんも?」


 ただのハムスターだぜ?


「あの子は≪フロンティア≫にいた時に何度か見たことがある。槍を持っていたが、とても戦えるようには見えなかった。それが今じゃキリングドールやダークナイトを貫いている。お前の指導は定評があるし、それかとも思ったが、単純に能力の上昇がおかしい」


 なるほど。

 確かにそうかもしれん。

 カナタとアカネちゃんはこの半年で見違えるほどに成長した。


「そんなことをよく俺に教えたな?」


 嫌いでしょ?


「別に隠すようなことじゃない。まあ、ついでに教えてやると、≪フロンティア≫を勧誘したのはその検証のためもあるんだ」

「それでか……お前らが不文律を破るから変だと思った。そのせいで≪ヴァルキリーズ≫というか、ショウコが女子学生を勧誘しまくってんぞ」


 実を言うと、俺のクラスの女子で≪ヴァルキリーズ≫に声をかけられていない女子はいない。

 そのせいで、先生が決めたパーティーにほころびが生じ始めているのだ。


「あれは本当に失敗だった。あの女のことを考えれば、予想が出来た。≪フロンティア≫はレアジョブもいたし、優秀だったから先走りすぎたのだ。もう少し慎重になるべきだったな」


 ショウコって、≪正義の剣≫内でも悪いヤツで有名なんだな。

 おっさんAの言い方が完全に悪役扱いだもん。


「お姉ちゃんとホノカを巻き込むなよー」

「それはすまん。しかし、お前の姉妹はすごいな。最初は全然似てない兄弟姉妹だと思ったが、そっくりだ。姉はおっとりとはしているが、人の話をまったく聞かないし、妹は噛みつきまくる」


 あいつらって、外でもそんなんなの?


「まあ、天然姉妹だから」

「とはいえ、優秀だし、人付き合いは上手いな。それにレアジョブだ」


 まあ、お姉ちゃん達は友達が多いね。


「多分、お姉ちゃんやホノカも≪ヴァルキリーズ≫に移るぞ」

「それは仕方がない。正直、女子エクスプローラを入れる時はそのリスクも承知の上だ。もちろん、キララさんもそうだ」

「え!?」


 キララはビクッとして、目を逸らす。


「いや、別に≪ヴァルキリーズ≫に移ってもかまわんぞ。女子エクスプローラが≪ヴァルキリーズ≫に行っても誰も文句は言わん。正直、君はウチで実力をつけたら≪ヴァルキリーズ≫に移るもんだと思っている」


 正解!


「いやー、その、まあ、はい。そう考えてました」

「だろうな。失礼だが、君は男が苦手だろう。何でアイドルなんてやってるんだと思っていた」

「すみません」

「いや、かまわんよ。ウチは人数が多いし、去る者追わずだからな。とはいえ、クランから離れても仲間であったことに変わりはない」


 めっちゃ立派なことを言ってるー!

 俺は裏切者は制裁するのにー!


『オーダーとカオスの違いだな』


 うっせーわ!


「ありがとうございます。でも、まあ、私はあきちゃんとやるので……」

「そうか……………………あれと? えーっと、反対はしないが、うーん、まあ、頑張ってくれ」


 良いことを言っていたおっさんAが言い淀む。


 しゃーない。

 あきちゃんだもん。

 泥船だもん。


「お前、引退って言ってだけど、辞めたらどうすんの?」

「セイギは≪正義の剣≫の運営を考えているらしい。俺もそれに誘われたな」

「運営? 会社でも起こすのか?」

「まあ、そんな感じだ」


 へー。

 おもしろそう。


「ん? 参加しねーの?」

「考え中だ。実はダンジョン学園からも誘われている」

「え!? 教師になんの? 嫌だわー」

「安心しろ。お前が在学中は絶対にならないから!」


 おっさんAは力いっぱい否定した。


 そうしてくれー。

 もしくは、川崎支部に行けー。


「じゃあ、お前的に言えば、この依頼は就活のためでもあるんだなー」

「そういうことだ。もうすぐ引退だろうが、その後のためにもロクロ迷宮がなくなるとマズい。だから俺達も必死なんだよ」


 なるほどー。


「しかし、引退ねー。お前、考えてる?」


 俺はキララにも聞いてみる。


「私はエクスプローラになったばかりだぞ。でも、まあ、実家に帰るかな」


 そういえば、農家だったな。


「お前は俗っぽいから、東京で遊んで暮らすかと思った」

「私、俗っぽいか? でも、それもありかな。弟が嫁さんをもらったら居場所ねーし」


 そらそうだ。


「嫌な小姑になりそう」


 悪気なく、素でイジメそう。


「うるさいなー。農家はなー…………まあいいか。お前は引退したらどうすんの?」

「遊んで暮らすか、適当にする」

「どっちが俗っぽいんだよ……まあ、お前の場合は大丈夫か……ヘビーなのがいるし」


 ヘビーさんかー。

 あいつ、うるさそうだなー。


「まあ、お前らは若いし、まだ、そこまで考えんでいいだろ」

「ふーん。お前、結婚してんの?」


 俺はおっさんAの指にはめている指輪が気になったので聞いてみる。


「あー…………今度する。セイギには言うな。タイミングを見て言う」


 あちゃー。

 また、≪Mr.ジャスティス≫がやさぐれるぜー。


「あいつ、マジで彼女いないの?」

「セイギはエクスプローラになりたての頃、若干、厨二病を患ってたんだ。じゃなきゃ、自分で≪Mr.ジャスティス≫なんて名乗らんだろ」


 あー……確かに、テレビで見た時、そんな感じはしたな。

 子供は憧れるだろうが、妙齢の女は…………


 うん、しゃーない!


「よくついていったな」

「まあ、俺達も楽しかったんだよ。学校に行ったら先生達に聞いてみろ。セイギの面白い話がいっぱい聞けるぞ。先生達も第1世代だからな」


 良いこと聞いたー!

 めっちゃ楽しみー!


「ホント、嬉しそうだな、お前…………」


 キララが呆れたように言う。


「俺、こういうのが好きなんだー」


 人の恥部というか、弱みみたいなの。

 それをバカにするのが大好き!


「「知ってる」」


 あ、そうっすか…………





攻略のヒント


「≪Mr.ジャスティス≫の由来を教えてください」

「え!? な、なんだったかなー。やっぱり名前かな?」

「自称でしたね。ありがとうございましたー」

「ちょっと待って」


『二つ名の由来を聞いてみよう~木田セイギ~』より

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― 新着の感想 ―
[一言] >「どっちが俗っぽいんだよ……まあ、お前の場合は大丈夫か……ヘビーなのがいるし」 >ヘビーさんかー。 るみな「だってよ、ヘビー」 へびー「生い立ちがヘビーな奴が、何を言ってんだ」 しずる「…
[一言] どんだけ良さげな雰囲気出してもハイエナしたんだよなって頭をよぎる まあ第2世代への評価と似たようなもんか
[一言] おっさんAがさりげなくきららのこと下の名前で呼んでて笑った。 ダンジョン祭でドヤ顔してた≪フロンティア≫のリーダーは、ライバルが大活躍してる今何してるのかな
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