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第177話 いっつも苦労するのは俺


 各パーティーのリーダーである≪Mr.ジャスティス≫、サエコ、俺は45階層攻略のため、本部長を交え、相談をした。

 相談の結果、現在の編成から俺とむっつりなおっさんA(木崎?木塚?)の立ち位置を入れ替えることにした。


 翌日、俺達は朝からダンジョンに向かい、45階層攻略を再開した。


 俺は≪正義の剣≫と共に前に出ている。

 そして、≪Mr.ジャスティス≫と話し合いをした結果、俺が前に出て、敵を蹴散らす役目となった。

 ≪正義の剣≫は抜かれたり、打ち漏らした敵を対処する役割だ。


 俺は3パーティー、計18人の先頭を歩いている。

 一応、索敵を使って、警戒はしているが、どうせ、ショウコの方が先に見つけるだろう。


 先日は階段を見つけることが出来なかったので、今日は見つけたい。

 焦ってはダメなのことはわかっているが、どうしても焦りそうだ。


 昨日、≪Mr.ジャスティス≫が10日以内に50階層に行き、残り10日でボスを攻略する予定と言っていた。

 悪くないし、俺もまあ、そんなものかなーと思っている。

 しかし、どうしても焦ってしまいそうになる。


 46階層以降のモンスターがわからない。

 50階層のボスであるデュラハンの強さがわからない。


 本当にあと20日で突破できるのだろうか?


 これが脳裏にチラつく。


 俺のスキルである≪冷静≫は『いけるよー。だから焦んな』と言っている。

 楽観的なのかどうかはわからないが、従ったほうが良さそうだ。


「大丈夫よ。なんとかなるから」


 なんとスキル冷静ちゃんが擬人化したようだ!


 俺は声が聞こえた方を振り向くと、声でわかるから当たり前なのだが、ショウコがこちらを見ていた。


 しかし、ショウコは普通に人の心を読んでくるな。

 あいつはプライバシーという言葉を知らないようだ。

 友達、失くすぞ! ばーか。


「ひどいわね」


 全然、ひどいと思ってなさそう。

 しかし、心の声が聞こえるってどんな感じなんだろう?

 四方八方から聞こえてうるさそうだな。


「どんな感じなん?」


 俺はサイコメトラーショウコに聞いてみる。


「見ないと聞こえないわよ」


 ってことは、俺を見ているわけだな。

 俺も罪な女になったもんだぜ。


 でも、あまり見ないで。

 えっちなことを考えてるのが、バレちゃうから!

 トランスリングの充電期間が終わって、いつヤるか悩んでるからー。

 俺の朝チュン計画がつまびらかにー。


 きゃー、見ないでー。


「バカな子……」


 ショウコはそうつぶやくと、前まで出てきた。


「何? お前も前に出るの?」


 陣形を崩すんじゃないよ。


「ルミナ、悪いことは言わないからエッチするのはトランスバングルを入手してからにしなさい」


 ショウコは俺に近づき、小声で話す。


「なんで?」

「あなたの朝チュン計画とやらって、あの子を家に泊まらせる気でしょ?」


 そりゃあ、ヤッたらそのまま泊まるだろ。

 ピロー的なやつ。

 ちゃんと調べたから知ってる。

 ヤッて、はい、さよならーはダメって書いてあった。


「そのピロー的なやつの最中に女に戻るわよ」


 ……

 …………

 ………………!


「ホントだ!」

「わかった? あと20日くらい我慢なさい」


 ショウコはそう言って、元の位置に戻っていった。


 危ない所だった…………

 ショウコ、ありがとー!


「いいえ、頑張りなさい。あと、前を向きなさい。来たわよ」


 俺はショウコに言われ、すぐに前を向き、ハルバードを取り出し、構える。

 しばらくすると、俺の索敵にも反応があり、モンスターが姿を現した。


 もちろん、キリングドール2体、ダークナイト2体、シャドウメイジ2体の混成パーティーである。

 俺の役目は後ろに抜かせないことではなく、数を減らすことだ。

 キリングドールは後ろにいる敵を狙いに行くため、そいつらは≪正義の剣≫に任せ、俺はダークナイトとシャドウメイジが担当になる。


 俺はダークナイトに狙いを定める。

 そして、そのダークナイトとキリングドールの4体は並走しながら襲ってきた。


 ん?

 あれ?

 ダークナイトさんが俺に向かってくるのはわかるんだけど、キリングドールさんも俺に向かってきてない?


「相棒、4体同時に来るぞ!」

「なにゆえ!?」


 まーた、俺だけ狙われてるよ。

 30階層のカメといい、こいつらといい、何で俺を狙うん?

 モンスターって、俺のことがそんなに好きなの?


「チッ!」


 俺は襲ってくる4体のうち、1体のキリングドールに向けて、ハルバードを振り下ろした。

 すると、ダークナイトがキリングドールを庇い、盾で受ける。

 いくらダークナイトが固いと言っても、俺のハルバードをまともに受けたため、盾は変形し、ダークナイトの腕は落ちた。

 しかし、仕留めるまではいっていない。


 しかも、他のキリングドールとダークナイトが俺を襲ってきていた。


 俺は近づいてきたキリングドールとダークナイトに向けて、髪の毛アタックを仕掛ける。

 キリングドールとダークナイトは俺の髪の毛に絡まると、なんとかしようと、暴れたり、指の刃物や剣で切ろうとしているが、俺の髪は簡単には切ることができない。


 俺はその間に、ダークナイトが庇ったもう1体のキリングドールに攻撃をしようと思ったが、俺よりもそのキリングドールの方が速かった。

 いつのまにか、キリングドールが目の前に迫っているのだ。


「げっ!」


 キリングドールは鋭利な手を俺の顔面に振るう。


 ぎゃー!

 俺の可愛い顔に傷がつくー!


 俺はとっさに腕を出し、顔を庇った。

 直後、俺の腕が熱くなり、鮮血が舞う。


 うえーん、痛いよー。


「――クソが! 死ね、ボケッ!」

 

 俺は痛みの怒りを込め、目の前のキリングドールに膝蹴りを食らわす。

 俺の膝蹴りを食らったキリングドールは俺から離れた。


「ラブリーストリーム!」


 俺は離れたキリングドールに向けて、手をかざし、魔法を放った。

 すると、キリングドールの足元から無数のハートの矢が飛び出し、キリングドールに突き刺さっていく。

 キリングドールはそのまま串刺しになり、煙となって消えた。 

 

「ルミナ君、この髪をどうにかして!」


 ≪Mr.ジャスティス≫の声が聞こえたので、見てみると、≪正義の剣≫の5人が前に出て、俺の髪に絡まっているキリングドールとダークナイトの近くにいた。

 俺はそれを見て、髪を元に戻す。


 そして、腕が落ちたもう1体のダークナイトに向けて、ハルバードを振り下ろした。

 盾もなければ、腕もないダークナイトは振り下ろされたハルバードを防ぐことが出来ず、脳天からまともに受け、倒れる。

 俺はダークナイトが煙となって消えたことを確認すると、奥にいるシャドウメイジも瞬殺した。


 俺は自分の戦いが終わったので、周りを見ると、≪正義の剣≫の5人はまだキリングドールとダークナイトと戦っている。

 俺はヒーラーに回復を頼もうかと思い、後ろを見るが、後ろもまた、モンスターと戦闘中だった。


 早く終わんないかなー。

 腕が痛いんですけどー。


 こういう時に自前で回復魔法を覚えていないと苦労する。

 一応、俺には≪自然治癒≫のスキルがあるが、回復は緩やかだ。


 俺はまだかなーとしばらく待っていると、他の連中はすべてのモンスターを倒し終えた。


「衛生兵、カモーン!」


 俺は近くにいるヒールも使えるであろう≪正義の剣≫を無視し、後ろにいる後衛を呼んだ。


 後ろにいるちーちゃん、アカネちゃん、セツ(ダジャレ女)の3人は俺の呼び声に気付くと、お互いを指差しあいながらパントマイムで押し付けあっている。


 いや、誰でもいいから早く来いや。


「アカネちゃん、来い!」


 俺は意味の分からない押し付け合いにイライラしてきたので、一番下っ端であるアカネちゃんを呼んだ。

 すると、アカネちゃんはがっかりとし、他の2人は笑みを浮かべて、どうぞ、どうぞとアカネちゃんを差し出す。


 え?

 俺、めっちゃ嫌われてない?


「なんですかー? 私、何もしてませんよー」


 アカネちゃんは嫌そうにぶーすかと文句を垂れる。


「いや、お前は俺の腕が見えんのか?」

「えー……あ! センパイ、ケガしてるじゃないですか!?」


 気づくの、おせー。


「はよ、治せ」

「いや、≪正義の剣≫の人達に頼んでくださいよ。いきなり呼び出すから何をされるのかと思いましたよー」

「お前らはヒーラーだろうが。専門に頼んだ方がいい」

「嘘ばっか。ハァ……もうまた、ヒールをされるなら女子の方が良いとかほざくんですかー。センパイのそういうところ、直した方がいいですよ。大体、ケガしてるならもっと痛そうにしてくださいよ。不機嫌な顔して呼ばないでください」

「いいから、はよ詠唱しろよ!」


 俺はケガしてない方の手でアカネちゃんの頭を叩いた。

 アカネちゃんは叩かれた頭をさすりながら詠唱を開始する。


「俺のお尻を触っていたのはお前らしいな」


 俺は詠唱をしているアカネちゃんを睨む。

 すると、アカネちゃんは詠唱をしながら目を泳がせた。


「ハイヒール! はい、さよならー! センパイ、大好きー」


 アカネちゃんはヒールを使った後、捨て台詞と共に逃げていった。

 しかも、めっちゃ早い。

 スキル≪逃走≫だろう。


 アカネちゃんは頭をさすりながら俺を指差し、後衛連中に文句を言っている。


 あのガキ……!


「ルミナ君、大丈夫?」


 ≪Mr.ジャスティス≫が心配して声をかけてくる。


「痛かったわー。ってか、何で俺を狙うんだ?」

「ちょっと考えたんだけど、もしかしたら、キリングドールは後衛職を狙ってるんじゃないかな?」


 ほー、なるほど。

 だから、前衛を無視して、後ろにいる後衛職を狙っているのか。

 そして、今回は後衛職の俺が一人で前にいたから狙われた。


「ありえるな」

「でしょ? ちょっと何回か戦ってみて、試してみよう」


 つまり、俺にフルボッコになれと?


「えー……」

「すぐに援護に行けるようにするからさ。キリングドールは50階層のボス戦でも出てくるんだ。傾向を知っておきたい」

「じゃあ、そうするか」


 嫌だけど、≪Mr.ジャスティス≫の言うことも、もっともだ。


 俺達はその後、何度か敵と戦い、検証を行った。

 俺が一人で前に出ると、同じように敵は俺を集中して狙ってくる。

 逆に俺が下がり、≪正義の剣≫が前に出た場合は、ダークナイトが≪正義の剣≫を抑え、その隙にキリングドールが俺のところにやってきた。


 これを何回か繰り返したのだが、すべて同じパターンだった。


「決まりだね。キリングドールは後衛職を狙う」


 めっちゃ疲れたわー。

 めっちゃ髪が傷んだわー。


「それで、これからどうすんだよ? 俺が囮か?」


 もしくは釣りの餌。


「僕も前に出るよ」


 検証が出来て良かったのはわかってるけど、最初からそうしてくれませんかね?


 俺達は新たなフォーメーションで進んでいき、ついに46階層への階段を発見した。

 そして、今日はもういい時間ではあったが、46階層を少し覗いていくことにし、階段を降りていく。





攻略のヒント


「どうして、≪難攻不落≫なんですか?」

「知らない…………あなたはどうしてだと思う?」

「さよならー」


『二つ名の由来を聞いてみよう~長谷川ショウコ~』より

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― 新着の感想 ―
[良い点] ショウコにとってはクソガキもかわいい弟分のままなかんじ
[一言] >「どうして、≪難攻不落≫なんですか?」 >「知らない…………あなたはどうしてだと思う?」 >「さよならー」 ユリコ「いやホント、どうすれば○れるんだか分からんわ」
[一言] ヒーラーが怪我に気付かないのはまずい…
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