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第175話 我が命にしたがえ……いえ、何でもないです


 休みの日を利用し、俺はサブウェポンのロングソードを新調した。

 シズルもメインウェポンの短剣を新調した。

 ついでに瀬能も色々と新調した。


 そして、翌日の火曜日、今日も当然、学校をサボり、ダンジョンだ。

 俺達は協会に集合し、全員が揃うと、ダンジョンに向かった。


 ダンジョンに来ると、40階層まで飛び、ホワイトドラゴンを倒す。

 41階層に着くと、昨日、誰かがまとめたであろう地図を見ながら43階層を目指した。


 前の探索で43階層への階段は見つけているので、スムーズに進んでいき、43階層への階段まで来ると、俺達は階段を降り、43階層に到着した。


 43階層に着くと、今回も安定感がある≪正義の剣≫が先行して、進んでいく。


「止まって」


 ショウコがそう言い、全員の足を止める。


「ショウコさん、どうかしたの?」


 先頭の≪Mr.ジャスティス≫がショウコに尋ねる。


「敵よ。名前はキリングドール。数は6」


 キリングドールって、50階層のボスの取り巻きか……


「6!? 多いな。ごめんけど、抜かれるかもしれない。君達も用心をしておいて」


 皆、≪Mr.ジャスティス≫の言葉に頷いた。


 俺は新調したロングソードを出し、構える。


 しばらくすると、俺の≪索敵≫でも感知できるようになる。

 そして、うっすらと姿を現した。


「こわー……」


 誰かのつぶやきが聞こえた。


 俺も同感である。

 キリングドールはどう見てもマネキンであり、顔が完全に無表情だ。

 それが6体もいる。

 マジで怖い。


 しかも、通常のマネキンの見た目とは違う箇所が1つある。

 手の5本の指が鋭利な刃物であることだ。


 まさしく、キリングドールの名にふさわしい。


「来るぞ!」


 ≪Mr.ジャスティス≫が叫ぶ。


 キリングドールはバラバラに走り出し、≪正義の剣≫を襲ったのだ。


 俺は≪正義の剣≫とキリングドールの戦いを見ている。


 前の階層にいたダークナイトは防御力と連携力に長けたモンスターだった。

 だが、このキリングドールは連携も防御も皆無だ。

 敵の攻撃をまったく恐れずに、指の刃物でただ切り裂こうとしている。

 数も多いし、なかなかの強敵である。

 もっと言えば、めっちゃ不気味。


 しかし、こういう相手には強いのが≪正義の剣≫だ。

 ≪正義の剣≫は陣形を組み、乱戦にならないようしている。


 うーん、上手だなー。

 ってか、俺達に勝てるか?

 こう数が多いと、簡単に抜かれそうだし、もし、後衛に行かれたら、後衛は全滅だわ。


 どうしよっかなー。

 攻撃される前に魔法かなー。


 俺が悩んでいると、隣にいるシズルがふいに後ろを見た。


 ん?


「後ろからキリングドールが来てます! 数は6!」


 シズルが叫ぶと、俺を含めた全員が後ろを振り向く。

 そして、俺も感知した。


 チッ! バックアタックかよ!


「サエコ、クーフーリン! お前らは突っ込んで数を減らせ! 瀬能、あきちゃん、俺らは抜かれたヤツを始末するぞ!」

「行くぞ、瀬田!」

「クーフーリンだっての!」


 俺が指示を出すと、サエコとクーフーリンはまだキリングドールを視認できていないが、突っ込んでいった。 

 そして、俺とあきちゃんと瀬能が前に出て、待ち構える。


「シズル、ショウコ、前と後ろを警戒しとけ。もし、抜かれたら忍法でも何でも使って止めろ。あれに襲われたら後衛連中はひとたまりもないぞ」


 ってか、ショウコは何をしとったんだ!

 役立たずめ!


『ショウコさんはしょうがねーよ。神眼の弱点は見ないといけないってことだ。死角は対処できない』


 いや、そんなことより、さん付け?

 シロは独裁者に降伏したようだ。


 くっ、俺は屈しないぞ!


「来たぞ。3体だ」


 どうやらサエコとクーフーリンは3体の足止めに成功したようだ。


「魔法を使うよ!」


 後ろからちーちゃんの声が聞こえる。


「よし、魔法を撃ち終わったら行くぞ。瀬能は1体を抑えとけ、倒そうとは思うな」

「わかった」

「あきちゃん、速攻で潰せ」

「任せとけー」


 3体のキリングドールは俺達を見つけると、どこかぎこちない動きで走ってきた。

 それと同時に、俺達の背後から魔法が放たれる。


 魔法はキリングドールに当たったが、倒せはしなかった。

 しかし、ちーちゃんの魔法であろう風魔法は1体のキリングドールの足に当たり、キリングドールは体勢を崩した。


「あきちゃん!」

「チャーンス!」


 俺があきちゃんに指示を出すと、弱い相手には滅法強いあきちゃんは突っ込んだ。

 そして、俺と瀬能は走ってくるキリングドール2体に狙いを定めた。


「ボクは右を!」

「頼む!」


 瀬能が右のキリングドールを選んだので、俺は左のキリングドールに向かって、ロングソードを構える。


 左のキリングドールは右腕を大きく振りかぶり、指の刃物で俺を切り裂こうとしてくる。

 俺は隙だらけだなと思い、振り上げた右腕ごと、首を叩き斬ることにした。


「死ね!」


 俺が振るった剣はキリングドールの肩口を斬り、そのまま首をちょんぱした。


 おー! さすが新品だ!

 あっさり斬れたぞ!


 俺がおニューのロングソードの性能に喜んでいると、キリングドールの残っている左腕が動いた。


「相棒! 生きてるぞ!」


 俺はハッとして、反射的にしゃがんだ。

 キリングドールはまだ煙になっていなかったのだ。


 俺の頭の上をキリングドールの腕が掠めていったのがわかる。


 あっぶねー。


 俺はしゃがんだまま、左手を地面につき、水面蹴りでキリングドールの足を蹴った。

 足を刈り取られたキリングドールは当然、地面に倒れる。


 俺はすぐに立ち上がり、起きようとしているキリングドールの胴体を踏み倒した。

 そして、ロングソードと交換してハルバードを取り出し、キリングドールの胴体目掛けて振り下ろす。

 キリングドールは今度こそ、煙となって消えていった。


 俺は倒したことを確認すると、すぐに瀬能の方を見る。

 俺の目には瀬能に抑えられて、うまく動けないキリングドールが見えた。


 そして、そんなキリングドールの近くには、すでに1体を倒し終えたのであろうあきちゃんが飛んでいる。


 ん?


「死ねや、クソ人形!!」


 いやいや、ちょい待ち。

 

 あきちゃんのドロップキックがキリングドールに当たった。

 当然、キリングドールは吹き飛ぶが、その延長線上には俺がいる。


 バカかな?


「レッグ、ラリアットー!!」


 俺は飛び上がりながら、こちらに吹き飛んでくるキリングドールの首に足を叩きつける。

 キリングドールはぼきっと折れ、上半身と下半身が離れた。


 俺はまだ煙となって消えていないのを確認すると、上半身の方にハルバードを振り下ろす。

 ハルバードによって、砕かれたキリングドールは煙となって消えた。


「あきちゃん、周りを見ようよ」


 俺はあきちゃんに苦言を呈する。


「ルミナ君、今のすっごーい! 私もそれやりたいな!」


 そ、そうかね?

 まあ、すごいだろー?

 カッコいいだろー?


「終わった?」


 俺が喜んでいると、サエコとクーフーリンが戻ってきた。

 そして、サエコが聞いてくる。


「終わった。マネキンに後ろから襲われると、ビビるな」

「だな。パニック映画みたい」

「≪正義の剣≫の方も終わったみたいだ」


 クーフーリンに言われて、≪正義の剣≫を見ると、確かに、戦闘は終わったようで、キリングドールの姿はなかった。


 俺達は集まり、周囲を警戒しながら作戦会議をすることにした。


「役立たずで、ごめんなさいね」


 ショウコが謝ってくる。

 絶対に嫌味だ。


「心を読むんじゃない」

「フッ」


 カッコつけんな。


「ショウコさんは悪くないよ。それよりもバックアタックがあるとすると、後ろにも警戒だな」


 ≪Mr.ジャスティス≫がショウコをかばう。


「お前らは引き続き前に出て、進めよ。バックアタックはさっきと一緒で俺達とサエコ達でなんとかするわ」

「それが確実か……」


 せやせや。


「そうしよう。しかし、堅くはないけど、全然、死なない相手だったな」


 サエコは俺の意見に同意すると、キリングドールと戦った感想を言った。


「だったな。首を飛ばしたのに動いてたぜ」


 クーフーリンも俺と同様に首を狙ったようだ。

 槍のくせに。


「そういえば、ダークナイトもアカネちゃんが顔面を突いたのに、普通に動いてたわ」


 結構な威力だったと思うんだが、死ななかった。


「どうやら首を狙うより、足や胴体を狙ったほうが良さそうだね」


 ふむふむ。

 確かに、ちーちゃんの風魔法がキリングドールの足に当たったのは助かった。

 あれによって、あきちゃんが早めにキリングドールを倒すことが出来たのだ。


 俺達はキリングドール対策を決め、44階層への階段探しを続行した。


 そのまま進んでいると、かなりのペースでキリングドールに襲われた。

 前から来ることもあったし、後ろから来ることもある。

 もちろん、同時に来ることもあった。


 キリングドール自体は耐久力がないので、時間はかからずに倒せる。

 だが、数が多い。

 24階層の虫地獄を彷彿とさせる状況だ。


「クソ! 数が多い」


 先ほども、前後から襲ってきたキリングドールを撃退した。


 ≪Mr.ジャスティス≫やサエコが人数で押したいと言った理由がわかるわ。

 これは少数精鋭では無理。


「疲れてきたねー」


 隣にいるシズルが弱音をこぼす。


「休みがないしなー」


 皆、疲れている。

 特に、前に出ている≪正義の剣≫のおっさん共の消耗が激しい。

 こいつらは重装備で連戦、そして、30オーバーのおっさんだ。

 きついかもしれん。


「シズル、お前は俺と交代しろ。俺はおっさん共の援護にまわる」

「ん。わかった」


 俺はこの場をシズルに任し、前に出る。


「ルミナ君、どうしたの?」


 俺が前に出て、≪正義の剣≫に近づくと、≪Mr.ジャスティス≫が聞いてくる。


「お前ら、少し休め。俺が魔法でやる」

「ああ。悪いけど頼むよ。さすがに疲れてきた」


 俺は≪正義の剣≫を下がらせ、一人で前に出て、進む。


「ルミナ。キリングドールよ。また6体」


 しばらく歩いていると、ショウコが教えてくれる。


 俺は気にせず、歩いていき、索敵で察知できる距離まで近づいた。


「パンプキン、ボーム」


 俺はまだ視認が出来ていないが、カボチャ爆弾を取り出す。

 そして、通路の奥に投げた。


 数秒後、光と共に、大きな爆発音が聞こえると、キリングドールの反応はすべて消えた。


「わはは! 見たまえ! これが魔女の力だ!」


 カオス最高!


「相変わらず、すごい威力だね。君、男に戻らない方がいいんじゃない?」


 こらこら、なんてことを言うんだ。

 女には大事なものが付いていないんだぞ。


「嫌だ。さて、どんどん行こう」


 俺はマナポーションを飲みながらどんどんと進んでいった。


 それ以降も前後から襲われたが、後ろはサエコ達が上手く撃退し、前は俺と≪正義の剣≫が交代しながら撃退した。

 そして、俺達は運が良かったらしく、早めに44階層への階段を見つけることができた。


 しかし、今日は連戦続きで、消耗が激しくなったので、帰還となった。

 まあ、4日で43階層突破ならいいペースではあるし、無理をすることもない。


 俺達は翌日に44階層に行くことに決め、解散となった。





攻略のヒント


 ゴーレムを始めとする人形系のモンスターは首を刎ねても死なない。

 胴体にコアがあるケースもあるが、明確な急所がない場合が多いので注意しよう。


『週刊エクスプローラ 色んなモンスター 人形系モンスター編』より

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― 新着の感想 ―
[一言] >> 男に戻らない方が つまり魔女♀から魔女♂になれば完璧ってことですね! イケるイケる!
[一言] すごいルミナちゃん!リーダーみたい!
[一言] >>女には大事なものが付いていないんだぞ。 おっぱいがあるじゃないですか!
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