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第017話 エクストラステージ? 日本語にしろ!


 ついに11階層に到達した俺達は、降りてきた階段の近くにあるランダムワープの前に来ていた。


「いよいよだな」

「ええ、ここからが本番ね」

「最後に確認しておく。このランダムワープに乗れば、ダンジョン内のどこかに行く。それは、この階層より浅いかもしれないし、現在の最深到達階層よりも奥かもしれない。浅い場合は再び、ここに来るだけだ」

「どうやって自分たちがいる階層を確認するの?」

「モンスターだ。最深到達階層までのモンスターの出現階層をマイちんに調べてもらっている。俺達はモンスターの種類で大体の階層を把握する。もし、知らないモンスターが現れたら、俺が戦う。それで俺が死亡した場合は、かなりの深層ということになる。その時は帰還の結晶を使え。いいか? この先は何が起こるかわからない。いつでも帰還の結晶を使えるようにしておけよ」

「わかった。じゃあ行く?」

「体調は?」

「万全! そっちは?」

「万全! 行くぞ!」


 俺とシズルは、ワープ先が別れないように手を繋ぎ、ランダムワープにわざと引っ掛かった。



 ランダムワープに乗ると、いきなり景色が変わった。

 

 俺は隣にシズルがいることを確認すると、シズルから手を離し、周囲を確認した。


「……ねえ? ここ何?」


 シズルが怪訝な表情で聞いてくる。

 

 それもそのはず、ここは通常のダンジョンのようなフィールドではない。

 ここは前方に長い部屋であり、床は赤い絨毯、レッドカーペットが敷かれている。

 そして、その先には巨大な椅子がある。

 

 まるで王宮にある謁見の間のようだったからだ。


「王さまがいるところ?」

「……魔王じゃないの?」


 やめろ。

 縁起でもないこと言うな。


「ついにラスボスか……」

「笑えない」


 俺とシズルは若干、パニックになってるみたいだ。

 

 仕事しろ≪冷静≫。


「シズル、帰還の結晶を使え」

「…………わかったわ」


 俺はランダムワープを使うことに決めてから色々と想定していたが、これはさすがに想定外である。

 帰還がベストだ。


「ちょっと待ってほしいぜー」


 シズルがアイテムボックスから帰還の結晶を取り出すと、どこからともなく声が聞こえてきた。


「え?」

「どこだ!?」


  俺とシズルは周囲を見渡すが、見つからない。


「どこ見てんだよ、こっちだ、こっち。下だよ」


 その声につられて、下を見ると、そこには白い蛇がいた。


「あ、かわいい」

「モンスターか? 弱そうだが……つぶすか」


 俺はそう言うと、アイテムボックスに仕舞っていたハルバードを取り出した。


「おい、待ってくれよ! いきなり攻撃するな。野蛮人か!?」

「やめなよ、ルミナ君。モンスターかもしれないけど、言葉をしゃべってるし、話を聞いてみようよ。ここが何なのか、聞いてみよ?」


 シズルにたしなめられて、俺は持ち上げていたハルバードを下す。


「お、話がわかる姉ちゃんだな。変な格好をした頭のおかしいヤツって思ってたことを謝るぜー、ハハ」

「やっぱりかわいくない」


 シズルは白蛇の評価を下げた。

 白蛇は舌をチロチロ出して、笑っている。


 どうなってんの?


「それで、ここはどこだ? そして、お前は何だ?」

「まあまあ、焦るな。まずは自己紹介といこうぜ。俺っちは、見ての通り、蛇だ。まあ、お前らの言うところのモンスターって認識で大丈夫だな」

「蛇なのは、見てわかるけど、何の種類のモンスターなの? ナーガ?」


 ナーガは人間くらいの大きさの蛇のモンスターだ。

 結構強い。

 こいつは弱そうだから違うと思うな。


「ナーガて。俺っちがそんなにデカく見えるか? まあ、俺っちのことはそんなに気にするなよ。ただのしゃべる蛇だ。あと、攻撃するなよ。俺っちはスライムやゴブリンなら勝てるが、オークには負ける程度なんだから」


 弱そうじゃなくて、弱かった。

 なんか思わせぶりで、実は強いかもって、ちょっと期待してたんだが。


「それでおたくらは? 一応、聞くが、人間だよな?」

「ええ、エクスプローラよ。私は雨宮シズル。で、こっちの野蛮人が神条ルミナよ」


 野蛮人を定着しようとするな。

 頭のおかしいエロ女のくせに。


「エクスプローラ? まあいいか、シズルにルミナだな。覚えた。エクスプローラが何なのかは、よくわからないが、お前さん達はダンジョンを攻略しに来たんだろ?」


 この蛇、言動や見た目に反して、結構、頭が良いみたいだ。


「ああ、その認識で合ってる。それで、ここは何階層だ? 俺達はランダムワープに乗ってきたんだが。見た感じ、ボス部屋か?」

「ここがボス部屋? ふふふ、だったら、俺っちがボスになるな……って、よせ、冗談だ!」


 俺がハルバードを構えると、白蛇は慌てて、訂正した。


「笑えない冗談はやめろ。こっちは予想外すぎて、気を張っているんだ」

「そう、ピリピリするなよ。安心しろ。ここはボス部屋じゃねーよ。むしろ、喜べ。ここはエクストラステージっていうボーナスステージだ」

「エクストラステージ?」

「ボーナスステージ?」


 俺とシズルは仲良く首を傾げる。


「ああ、ここは何階層でもねーよ。ダンジョンの隠し部屋だ。ここに来るには、ランダムワープに引っ掛かるしかない。確率は低いがな。お前さん達は運が良い」


 運が良いらしい。

 きっと、俺のおかげだ。


「で? ボーナスって何だ? 何か貰えんの?」

「もちろん。それは俺っちという、かけがえのない仲間さ」

「シズル、白蛇って縁起が良いらしいぞ。剥製にして売ろうぜ」

「待て待て待て! 冗談、冗ー談だよ。やめろよ。寒気がしたぞ」


 てめーがくだらない冗談を言うからだ。

 俺はマジだぞ。


「話が進まないなー」


 シズルは少し呆れている。


「わりーわりー、誰かと会話するなんて久しぶりだからな。何せ、他のモンスターは喋らないし。すまん、ボーナスの話だったな? 簡単に言うと、ここは試練をクリアしたら良いモンが貰える場所だよ」

「試練?」

「ただでよこせよ。ケチくせーな」

「強欲な野郎だな。試練はここに出てくるモンスターを倒せばいい……って、俺っちじゃねーよ! やめろ! そんなんもん、振りかぶるな!!」


 俺はハルバードを振り上げたところで、白蛇は慌てて止める。


「頼むから話は最後まで聞いてくれよ、ほんとに。第一、俺っちが試練なわけねーだろ。自分で言うのもなんだが、試練にならねーよ。ってか、お前、本当に人間か? それ≪破壊の戦斧≫だろ。強いけど、重すぎて使えないネタ武器だぞ」


 ネタなの?

 カッコいいし、強そうだから、わざわざ≪怪力≫を上げてまで使ってるのに。

 ちなみに、最初は持てなかった。

 800キロもあるから当たり前だけど。


「あなたじゃないなら試練って、何と戦うの? 何もいないけど」


 シズルは空いている玉座を指差しながら、白蛇に尋ねた。


 透明人間か?

 いや、≪索敵≫に反応はない。


「ふう。試練を受ける方法は、あの玉座に近づけばいい。玉座の目の前に行けば、試練のモンスターが現れる。そいつを倒せばご褒美が貰える。わかったか?」


「もうちょっと聞くけど、モンスターってどんなの? ご褒美って何をもらえるの?」

「悪いな。試練のモンスターに関しては、強敵としか言えない。これは知ってても、言ってはいけないルールなんだ。ご褒美はアイテムだ。これは決まっている。装備品とポーションとスキルの実だな。装備品はランダムだから何が出てくるかはわからない。ただ、レアであることは確かだ」

「ポーション!? それってレベル5以上?」


 シズルがポーションという言葉に食いつく。


「レベル5? 当たり前だろ。試練をクリアして、低レベルポーションが出てきたら詐欺じゃねーか」


 逆を言えば、それだけのモンスターが出てくるってことね。

 

 俺は興奮するシズルを横目に冷静に思案していた。


 どうする?

 ご都合主義にいい話だが、試練のモンスターがわからん。

 報酬から考えても、正直、俺達の手に負えない可能性が大だ。


「そういえば、スキルの実って何だ? 聞いたことないけど」

「おう、それこそがこの試練の最大の報酬だ。食べれば、スキルポイントが10も貰える。装備品やポーションなんかおまけだ、おまけ」


 そりゃあ、すげーよ。

 でも、無理じゃね?

 

 やめておくか……

 せめてパーティーメンバーがもっといれば、挑んでもよかったが。

 

 俺はますます上がったハードルに、こりゃあ、無理だと思った。

 

 俺は横にいるシズルを見ると、シズルは深く考え、悩んでいる。

 シズルからしたら、のどから手が出るほどに欲しいポーションが目の前にあるのだ。


「試練を受けない場合は、どうすればここから出られる?」

「受けないのか? 受けないなら後ろにある魔法陣で戻れよ。そこに乗れば、ここに来る時に使ったランダムワープの位置に戻れる。試練をクリアした場合も一緒だな。ただ、もう一度ここに来るのは難しいぞ」


 どうする?

 シズルは受けたそうだが、俺はやめたほうが良いと思う。

 少なくとも、俺のスキル≪冷静≫はそう言っている。

 しかし……


「シズル、受けたいか?」


 悩んでも仕方がないと思った俺は、シズルに聞いてみることにした。


「私は受けたい。でも、戦闘になっても、私は貢献できない。出てくるモンスターが弱いとは思えないし、むしろ、深層のボス級だと思う」

「だろうな。この蛇のポーションの話で確信した。この試練はヤバい。ただ、俺は受けてもいい」

「いいの? 実質、戦うのはルミナ君一人だよ? 私は足手まといにしかならないし、やめた方がいいんじゃ?」

「俺が死亡したら、帰還の結晶を使え」


 俺はそう言うと、玉座に向かって、歩き出した。

 

 このチャンスを逃したくない。

 

 俺は明日をも知れぬシズルの母親が、レベル5ポーションで治る確証を持てていなかった。

 白蛇の話が本当なら少なくともレベル6以上のポーションがここにはある。


「受けるのか? なら、少し手伝ってやるよ」


 そう白蛇は言うと、ニョロニョロと俺の体を登ってきて(若干、キモい)、俺の肩に乗ってきた。


「お前、弱いんだろ? 魔法でも使えるのか?」


 おお! 頼もしい仲間……


「いや、アドバイスくらいしてやろうと思って」


 ……じゃなかった。


「アドバイスー? いいのか? お前、モンスターだろ」


「モンスターが人間に力を貸してはいけないなんてルールはねえよ。安心しろ。俺っちは知識はそこそこ豊富だ。大船に乗ったつもりでいろよ、相棒」


 弱いモンスターの相棒になってしまった。

 まあ、いいか。

 情報があると有利なのは間違いない。


「行くぞ。鬼が出るか、蛇が出るか」

「ツッコミ待ちか? 蛇はもう出てるぞ」


 アホな掛け合いをしながら歩き、俺と蛇は玉座の前に立つ(立ってるのは俺だけだけど)。


 すると、玉座が光りだし、玉座に1匹のモンスターが現れた。



 鬼でも蛇でもない。



 3つ首のドラゴンだった。



 キング〇ドラですか?





攻略のヒント

―ドラゴン―

 各地で伝説がある、ファンタジー界の代表的存在。

 各地で多少の違いはあるが、共通しているのは、圧倒的に強いことである。

 

 ダンジョンで初めてドラゴンが確認されたのはイギリスのナックラ迷宮である。

 そのドラゴンは4つ足で翼のない地竜であったが、強靭な体と高熱のブレスは脅威であり、まさしく伝説級のモンスターであったという。


『週刊エクスプローラ― 世界のダンジョン特集』


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