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評判最悪男、魔女になる  作者: 出雲大吉
第8章

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第158話 いつも呼ぶけど、本部長って俺のことが好きなんかね?


 俺達はついに30階層のボスであるタートルゴーレムを倒した。

 すごいよね。


 協会に帰還した俺達はすぐにマイちんの所に行き、報告した。

 そして、もらった清算結果はすごいものだった。


 タートルゴーレムのドロップ品である宝石はかなり高価だったのだ。

 これを必要経費やパーティー貯金(参謀兼会計の提案)を差し引き、そこから6人で分けても、かなりの額であった。


 多分、俺のマジカルテレポートで30階層に行き、タートルゴーレムを倒して帰還するというルーチンワークで、一生遊んで暮らせるだろう。


 まあ、つまんないからしないけど。


 俺達は30階層を突破したことで、もう虫モンスターとは会わなくてもいいうえに、この成果だ。


 俺達は大いに喜んだ。

 多分、31階層からは強さを増したモンスターが出現するだろうが、ひとまずは、この偉業を喜ぶことにした。


 俺達がロビーのソファーで、成果について、喜んでいると、いつも受付の向こうにいるマイちんがやってきた。


「ルミナ君、ちょっといい?」

「いいけど、どうしたの? 金なら返さないぞ」

「そんなんじゃないわよ。本部長が呼んでるの。ちょっと一緒に来てもらえる?」


 え?

 これからシズルにチョコを貰って、イチャイチャする予定なんだけど……


「とっても忙しいんだー」

「いいから行きなよ。私、待ってるし」


 シズルは待ってくれるらしい。


 でも、こいつを一人でここに置いておくの?

 東京本部は≪ヴァルキリーズ≫発案により、ナンパ禁止だけど、ナンパなんて線引きが難しい。

 ましてや、シズルさんは変なのに絡まれやすいことに定評がある。


 うーん…………そうだ!


「シズル、鍵を貸すから家で待っててくんね?」

「いいけど…………いいの?」

「別に、家探しされて困るもんはねーよ」

「そんなことしないけど……」


 すーぐ、いい子ぶる。

 普通は家主がいなかったら、その隙に家探しするだろ。

 それが常識。


「絶対にやましいもんがあるよね?」

「当たり前じゃないですかー」


 ちーちゃんが笑いながらアカネちゃんに同意を求め、アカネちゃんは当然のごとく、頷く。


「ねーよ!」


 俺は茶化してくる凸凹コンビを睨む。


 そういうのはパソコンと携帯の中じゃい!


「じゃあ、待ってるね」

「後でな。お前らもまたな。あ、明日はさすがに休みにしよう」


 俺が明日の日曜を休日にすることについては、全員が同意した。

 また、今度、30階層突破の打ち上げをすることに決めたところで解散となり、各自、帰っていった。




 ◆◇◆




 俺は皆を見送り、マイちんと一緒に本部長室に向かう。


 本部長室に着くと、マイちんが扉をノックし、入室した。

 俺もまた、マイちんに続く。


「来たか………まあ、座れ」


 俺とマイちんは本部長に促され、いつもの高級ソファーに座った。


「で? 何の用? 俺は以前、若者の青春を奪うなって言わなかったか?」


 俺は対面に座る本部長を睨む。


「ん? なんかあるのか?」

「本部長、本部長、今日は2月14日ですよ…………」


 マイちんがコソッと教える。


「2月14日…………そういえば、そうだな。娘にもらったのはいつが最後だったかなー」


 本部長が哀愁を漂わしている。


 哀れやのう。


「奥さんからもらえよ」

「妻にもらったのはいつが最後だったかなー」


 本部長がさらに哀愁を漂わした。


 めっちゃ哀れやのう。


「家に帰んないからだぞ。忙しいからって、家族をないがしろにするからだ」

「ああ…………クソガキで有名なバカに正論を言われた」


 殴っていいかな?


「嫌だ、嫌だ。こんな大人にはなりたくねーわ」

「なるんじゃないぞ。まあ、お前はなりそうにないな」


 絶対にならんわ。

 働かずに、家にいるわ。


『それはそれで、うざがられると思うけど』


 シャラーップ!


「で? お前は慰めてほしくて、俺を呼んだのか? 俺はデリヘル嬢じゃねーぞ」

「誰がそんなんで、お前を呼ぶか、援交バカ」


 誰が援交バカだ!

 ってか、何で知ってんだよ!


「じゃあ、何だよ」

「30階層を突破したそうだな。まずはおめでとう」

「ありがとよ。あのカメ、めっちゃ堅かったわ」

「だろうな。タートルゴーレムはいくらお前でも一人では倒せん。だから、お前達は30階層で足踏みすると予想していた」


 するわけねーじゃん。

 なめんな。


「ウチのパーティーは優秀だから」

「そうだな。優秀だ。とても優秀だ。優秀過ぎる」

「だろう」


 フフン!


「ハァ…………学生が30階層を突破したということがどういうことかわかるか?」

「すごい」

「ああ、すごい。東京本部では≪正義の剣≫と≪ヴァルキリーズ≫しか達成していない。しかも、あいつらはクランだ」


 そうは言っても、強いのは幹部連中だけだ。

 あとは雑魚。


「クランなんて、人数が多いだけだろ」

「それでも、学生に劣っているとは思えん」

「ばーか。クランなんて、ぬるま湯に浸かっている連中だよ。まさしく、有象無象だ。こちとら少数精鋭で頑張ってんだぞ。あんな幹部共の言いなりな自分のない連中に負けるわけねーだろ」

「お前ら、第2世代は皆、同じことを言うな…………」


 当たり前だろ。

 決して、クランに入れてもらえないから悪口を言っているわけじゃないぞ!

 …………あきちゃん以外は。


「事実、そうじゃん。俺らとあいつらの差がそれを証明している。別にクランを否定しているわけじゃないぞ。俺だって、東城さんのクランにいたんだから」


 クランは情報共有だったり、仲間探しだったり、良い所はいっぱいある。

 ただ、なあなあな、お友達ごっこになりやすいのは確かだ。


「なあ、神条、お前の目から見て、≪魔女の森≫はどうだ?」

「優秀だし、それぞれ自分の役目をよくわかってるな」

「なるほど。桂木は?」


 本部長はマイちんにも聞く。


「ルミナ君の転移魔法のおかげもあるでしょうが、学生にしてはレベルが高いです。また、バランスの取れた良いパーティーだと思います」

「…………そうか」


 本部長はマイちんの評価を聞くと、悩みだした。


「何だよ」

「学生が30階層を突破したことは、すぐに噂になるだろう。そうなると、さすがに注目を浴びるのはお前だけじゃない。他の仲間もだ」

「今さらじゃね? 俺達はスタンピードを止めたんだぞ」


 ってか、シズルがいる時点でね……

 大注目ですわ。


「学生が20階層を突破した時も、スタンピードを止めた時も、そこまで騒がれなかったのは、お前がいたからだ。お前はクソガキで有名だが、それ以上に強いことで有名だ。だから、お前の他の仲間は、これまで特に注目は浴びなかった。俺だって、≪魔女の森≫が活躍しても、まあ、お前がいるしなって思ってた。だが、30階層突破は違う。あそこのタートルゴーレムはお前では無理だ」


 本部長の俺に対する評価が高いのか、低いのか、わからんな。


「無理ってことはねーだろ」

「お前の自慢の力と魔法で倒せたか?」

「うーん」


 無理かなー。


「あれはパーティーで協力しないと、倒せんボスだ。それは調べればすぐにわかる。≪正義の剣≫と≪ヴァルキリーズ≫が攻略方法を公表しているからな」

「そうなん?」

「あいつらはクランのサイトを作っている。そこに書いてあるんだ」


 知らんかった。

 はよ教えろや!

 荒らしてやるのに……


「ふーん。まあ、わかった。でも、注目を浴びて、なんか問題あんの?」

「勧誘、取材、やっかみ。まあ色々だな」

「死刑だなー」


 取材はまあいい。

 俺らは学生だし、そこまで大っぴらにはならない。


 でも、勧誘とやっかみはアウト。

 ルミナちゃんパンチの出番だわ。

 

「そうすると思ったから、お前を呼んだ。やめろ。今はただでさえ、アメリカのエクスプローラがいるんだ。騒動を起こされるとマズい」


 まだ居るのかよ……

 はよ国に帰れ。


「目の前で自分の女がナンパされてるのを黙って見てろってか? 殺されないだけ、有難がって欲しいね」


 二度とエクスプローラを出来なくしてやるぜ。


「雨宮か……あれは大丈夫。まず声はかからん」


 巨乳なのに?


「何でだよ?」

「いや、うーん……あー、掲示板を見てみろ」

「???」


 俺は歯切れの悪い本部長が気になり、首を傾げる。

 そして、隣に座っているマイちんを見た。


「うーん、ほら? ルミナ君って、見た目が女子でしょ? なのに、シズルとイチャイチャしてるから、周りはこう、えーと、生暖かい目で見ているというか、そういう人達を見る目というか、個性を大事にというか、ジェンダー的な考えは尊重しなくちゃとか、えーと、えーと…………」


 いつも冷静なマイちんが慌てふためいている。


 しどろもどろだが、言いたいことはわかった。

 まあ、子供のころから知っている俺と従妹がそう思われてればねー。

 

「前にも言われたけど、そんなにイチャついてるか?」


 別に普通だと思うけど。


「距離が近いのよ。貴方達はよくソファーで並んで座ってるけど、距離が恋人のそれなの。でも、普通はそれくらいでは騒がれないんだけど、貴方とシズルは有名だし、目立つから」


 あー、シズルが(元)芸能人だからかー。

 言われてみれば、俺だって、もし、ミレイさんがそんなことになってたら注目して見るわ。


「ふーん……ってか、俺は男だよ? ジェンダーもクソもあるか」

「そりゃあ、私はわかるけど、男の貴方を知っている人は少ないのよ。貴方はここに来て1ヶ月で女になり、もうすぐで1年になるわ。昔から貴方を知っている人だっているけど、それは小さい頃の貴方よ」


 俺はこの東京本部でデビューした。

 ≪Mr.ジャスティス≫やサエコ、ショウコ、あきちゃん、そして、その他の第1世代、第2世代の連中と出会ったのも東京本部だ。


 だが、俺の中学時代は川崎支部である。

 東京本部に遠征することもあったが、ほとんどは川崎支部で活動していた。

 あいつらの中の俺はほとんど小学生時代のかわいい俺なのだろう。

 だから、俺=男らしくカッコいい男には繋がらないのだ。(多分)


「なるほどねー。じゃあ、いっか」


 ちーちゃんと瀬能はついてきてくれるって言ってたし、アカネちゃんとカナタは裏切らないだろう。


 勧誘の方は大丈夫そうだ。

 やっかみは…………まあ、マイちんが見てない所で秘密裏に報復すればいいや。


「頼むぞ。今は本当にマズいんだ」


 本部長が怖い顔で頼んでくる。


「アメリカのエクスプローラってヤツ? 先生達といい、お前といい、うるさいなー。ってか、いつ帰るん?」

「さあ? なんか理由をつけて帰らないんだよ。せめて、他所の支部にいけばいいのに」


 日本食にでもハマったかね?

 もしくは、いい人でも出来たのか…………


「ふーん。まあ、安心しろよ。なにせ、会ったことも、見たこともねーし」

「ん? そうなのか? 結構、協会にいるぞ。今日だって、無駄にいたし」


 無駄だってさ。

 本部長の中で完全に厄介者になってるわ。


「いや、今日も見てねーな。きっと俺に恐れをなしたんだろう」

「見てすらないのか? 誰も?」

「複数人いるん? それすらも知らね」

「…………うーむ」


 本部長が悩みだした。


 帰っていいかい?

 家でシズルが待ってるんだけど。


「悩まんでもいいだろ。俺には関係ねーよ」

「まあいい。もう帰っていいぞ」


 やっと解放された。

 結局は大人しくしろって言いたいだけだったな。

 時間の無駄だったわ。


「ごめんね。あ、これあげる」


 マイちんはそう言って、透明な包み紙に入った一口サイズのチョコをくれた。


「ありがとー」


 本部長の話に付き合って良かった。

 しかし、マイちんは毎年、このチョコだなー。





攻略のヒント

 エクスプローラはブログやSNSなどで活動報告をしている。

 その中には一読しておくべきものもある。


 また、下世話な話になるが、人気が出ると、広告収入なども見込めるため、やってみるといいだろう。


 有名なものとしては、大手クランのHPや春田秋子のブログなどがある。


 なお、春田秋子のブログはどんな内容が書かれていたとしても叩かない方が身のためだ。


『週刊エクスプローラ 活動報告をしてみよう』より

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― 新着の感想 ―
[一言] 傍から見ると百合百合しい二人、だが片方の中身は(以下略 シズルも中々の変人ですよね、惚れた弱みなのかもしれないけどw
[良い点] 某ネット小説まとめサイトで紹介されていたので読んでみたところドハマリしました。最新話まで読み終わりましたが続きが楽しみです。毎日の楽しみにしたいと思います。
[一言] マイちんからのささやかなバレンタイン いいですねぇ
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