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評判最悪男、魔女になる  作者: 出雲大吉
第8章

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第147話 さようなら、シズル。そして、またお前かい……


 年末年始は色々とあったが、久しぶりの休息であり、楽しめた。


 そして、ついに3学期が始まる。

 俺は3学期が始まる1日前には実家を出て、一人暮らしの家に戻ってきた。

 そして、買い物をし、久しぶりに自炊した。


 本来なら、ここで明日の学校の準備をしないといけないのだが、幸か不幸か、俺は停学である。

 始業は明日の木曜からであり、停学期間に土日を加えると、俺が学校に行くのは5日後の月曜からだ。

 実に優雅で怠惰だが、反省文と課題がある。


 しかし、反省文はすでに書き終えている。

 自慢ではないが、反省文は書き慣れているのだ。

 それに、過去に書いた反省文のバックデータは取ってあるので、これをコピーすればよい。


 これは俺が反省文を書き続けてきたことによる財産である。

 どうせ、すみませんでしたを連呼すればよいのだ。


 課題については、俺には優しい彼女がついているので、バッチリだ。

 シズルは小言を言うが、なんだかんだ手伝ってくれるので、非常にありがたい。


 というわけで、明日から暇だ。

 さすがに、ダンジョンには行けない。

 協会と学校は繋がっており、俺が協会に行けば、すぐに学校に連絡が行くだろう。


 俺は完全に暇になってしまった。


「明日からどうしよう?」


 俺は無気力でベッドに倒れこむ。


 寝て過ごそうかな?


「どっかに出かけようぜ」


 シロは本当に外に出るのが好きだな。

 まあ、家にいてもしゃーないし、明日からは出るかなー。

 シズルが放課後に家に来るから、その時間までに戻ればいいだろう。

 この間、行けなかった映画でも見るかなー。


 ちなみに、停学中は不要な外出をしてはいけない。

 まあ、そんなものを守る俺様ではない。

 無視だ。


「なあ、メルヘンマジックをレベル8にすると、呪いの魔法を覚えるって言ってたけど、どんなんなの?」


 俺はふと、年末にシロが言っていたことを思い出した。


「ウィッチカースだな」

「び、びっち?」

「ウィッチ……魔女の呪いだよ」


 びっちじゃなかった。

 嫌な呪いじゃなくて良かったわ。


「なんか物騒だなー」

「相手の動きを鈍くするデバフの魔法だな」


 うーん、強いけど、微妙。

 レベル8にしてまで覚える魔法かねー。

 ウチのパーティーにデバフを覚えているヤツはいないけど、あんまり惹かれない。


「しょぼくね?」

「まあ、お前の場合はな。普通の魔女は接近戦が出来ないから重宝するんだが……」


 なるほどね。

 呪いで動きを鈍くしておいて、魔法で攻撃したり、逃げたりするわけだ。


 うん、いらね。


「メルヘンマジックはもう上げなくてもいいかなー。そろそろ普通の魔法を覚えておこうか……」


 俺は火魔法がメインだが、役割がカナタと若干、被っている。

 カナタは優秀な子で、火魔法はかなりものだし、俺は雷魔法を覚えるのが良さそうだ。


「メルヘンマジックはマックスにしたほうがいいぞ」

「ん-? なんかいいことあるん?」

「基本的にレアジョブから出たレアスキルをマックスにすると、ボーナスが貰える」


 ボーナス?

 金?


「何をもらえるんだ?」

「単純に能力が向上する。お前の場合は魔法の威力だったり、精神力だな」

「ふーん、じゃあ、シズルの≪忍法≫をマックスにしたらスピードでも上がんのか?」

「多分。俺っちも忍者は知らんからなー。速さか器用さのどちらかだろ」


 まあ、忍者と言えば、そんなイメージだ。


「なるほどねー」

「まあ、メルヘンマジックはダンジョン探索でも有用だから取りな」


 そこまでいい能力とは思えないが、悪い能力ではない。

 必要なスキルポイントも少ないし、取っておくか。


「ちなみに、レベル7は何を覚えるん?」

「キューティーヘアー」


 なにそれ?

 もうすでに俺の髪はキューティーなんだけど。


「どんなの?」

「髪が伸びる」

「しょぼ!」


 もう長いわい!


「あと、動かせる」

「化け物じゃねーか!」


 怖いわ!

 メデューサじゃん!

 ちょっと違うか……


「それ、役に立つん?」

「うーん、両手で敵を抑えて、首絞めるとか?」

「やっぱ、化け物じゃねーか! ホラー映画になっちゃうわ!」


 絶対に皆から引かれそう……

 取りたくねーな……


 でも、レベルを10にした方がいいって言うしなー。

 まあ、スキルポイントがもったいないけど、その魔法を使わなきゃいいか。


「前々から気になってたけど、ネーミングセンスがなさすぎじゃない? どこがキューティーなんだよ」

「さあ? 俺っちも知らない」


 ダンジョンやスキルを作った人ー。

 名前、変えてー。


 俺は祈ったのだが、『ごめーん、無理ー』って、言われたような気がした。




 ◆◇◆




 俺は暇な停学期間中を映画を見たり、買い物に行ったりすることで時間を潰した。


 そして、ようやく、月曜日。

 俺にとっては3学期初登校である。


 きっと、3学期も楽しい学校生活が送れるであろう。


 俺はそう信じ、学校へ向かったのだが、校門前にいた教頭に早速、捕まってしまった。

 教頭は朝っぱらから小言を言いまくってる。


 うっぜ。


 俺はいつまで続くんだとイライラしながら聞いていると、チャイムが鳴った。

 すると、教頭はようやく解放してくれた。


 どうでもいいけど、これって遅刻になるん?


 俺は急いで、自分のクラスに向かった。

 そして、教室に着いたので、中に入る。


「チョリース」

「遅い。お前、停学食らった明けに遅刻するなよ」


 俺が軽快に挨拶をすると、すでに来ていた担任からお小言を頂く。


「いや、来てたし。教頭からありがたい言葉を貰ってただけだし」

「ああ…………そういえば、朝から説教するって、意気込んでたな」


 だから、校門前で待ってたのね……

 情熱ある教師だこと。


 俺はうんざりしながら自分の席に座る。

 もちろん、一番前であり、シズルの隣だ。


「さて、ようやく、クラス全員が揃ったな。まずは、お前らに言っておくことがある。お前らも知っているだろうが、日本はアメリカと同盟を結んでいる。もっと言えば、ダンジョン関連でも特別な協力関係でもある。それで、本日より、向こうから東京本部に交流というか、視察にエクスプローラや関係者がやってくる。お前達に関係のない話ではあるが、協会やダンジョンに行く際は、要らぬトラブルを絶対に招かないように…………わかったか?」


 伊藤先生は最後の『わかったか?』を身を乗り出して、俺に向けて言う。


「先生、決めつけは良くないです」

「私達は交流期間中、お前を協会への出入りを禁止したかった。しかし、協議の結果、お前の事情を考慮し、それはやめておくことにした。先生達も含め、周りに迷惑をかけないように! 絶対だぞ。絶対だ!! わかったか!?」


 信頼ゼロ。

 ある意味絶大な信頼だが……


「生徒を信じな?」

「信じた結果、年末の忙しい時にお前を警察まで迎えに行ったよ」


 さーせん。


「努力しまーす」

「ケンカを売られても、買うんじゃないぞ」


 まーだ、言ってらー。


「英語、わかんねーし。挨拶はマザー〇ァッカーだっけ?」

「お前、マジで殺すぞ……」


 怖いー。

 教師がしちゃいけない表情で、言っちゃいけないことを言ってるー!


「大人しくしてまーす」

「頼むぞ!」


 まあ、俺には関係のないことだ。

 外人を見たら避ければいいのだろう。

 余裕、余裕。


 伊藤先生はその他の連絡事項も言い、HRが終わると、授業の準備を始めた。

 今日は一時間目からこの人が担当なため、そのまま授業を始めるのだろう。


「あ、そうだった。3学期になったし、席替えするか。3学期は短いけど、年も越えたし、ちょうどいいだろ」


 ほうほう。

 席替えか……

 俺はシズルの隣であることには満足だが、一番前であることは大変に不満だ。

 いい機会だろう。


 俺にはシロというチートモンスターが付いているので、自分の席を自在に決められるのだ。


「よーし、くじを持ってきたから順番に引けよー。ほれ」


 伊藤先生は折りたたまれた白い紙が入っている箱を俺に渡す。


 はい?


「出席番号順では?」


 今までは最初に出席番号1番のシズルが引いていた。

 

「お前はずるをしている可能性がほぼ100%だから、お前が先に引け」


 こいつ、見抜いてやがる!


「わ、私は後でいいです。残り物には福があるって言いますし」

「そうか。じゃあ、お前は後な。よし、雨宮から引け」


 伊藤先生はそう言って、シズルに箱を渡す。

 シズルが引くと、シズルは窓際の真ん中くらいだった。


 よしよし、じゃあ、俺は23番を引けば良いわけだ。


『なあ、相棒。多分、お前は引かせてもらえないぞ』


 なんで?


『多分、お前は最後だ。残り物には福があるって言ったし、余った席だろう』


 ………………あ。


「せんせーい。俺も引きたいでーす」

「お前はダメ」

「おいこら、23番を引いてやるからよこせや!」

「うーん、じゃあ、引け」


 伊藤先生は俺に箱を渡してくる。


 お、素直だな。


 よし、シロ。

 どれだ?


『…………右端の下のやつ』


 俺はシロに指示された紙を取り、開けた。

 すると、そこには23番と書いてあった。


 やったね!


「23番でーす」

「お前、やっぱり、どこに何が書いてあるかわかってるな…………よし、お前は最後な」


 伊藤先生はそう言って、23番の紙を奪った。


「おい、こら! 一度引いたんだから、返せや! 公平性に欠けるぞ!」

「お前は公平性の意味も知らんのか? 公平性を重視するからお前は最後なんだ」


 ぐうの音も出ないとはこのこと!

 クソが!

 差別だ!


『なんとなく、こうなるだろうなーと思ってた』


 だったら、言えや!

 違うのを引いたのに!


『そうすると、お前はその引いた席になる』


 …………雁字搦めじゃねーか!!


『神に祈れ。残り物には福があるさ』


 かみさま~。

 お願いします。

 23番にしてくださーい。


 すると、神様が『いいよ!』って言ってくれた気がした。


 シズルから始まったくじ引きは出席番号順で引いていき、皆、決まった席に一喜一憂している。

 俺は23番を誰も引きませんようにと祈った。


 そして、順々に引いていき、最後の2枚が残った。


 箱の中にある2枚のうち、右にあるのが、23番であり、左にあるのは13番だ。

 

 13番。

 すなわち、今、俺が座っている席だ。

 そして、隣は土井になっている。


 非常に嫌な予感しかしない。


 今、出席番号最後の元木さんが引こうとしている。


 元木さんは大人しめの女子でおどおどした子だ。

 その元木さんの手は右に行こうとしている。


「おい……」

「ヒッ!」


 俺が低い声を出し、それを止めると、元木さんはおびえたように手を引いた。


「ルミナ君!」

「神条、あんたマジで最低!」

「何してんのよ!」

「あいつ、マジでチンピラよね」


 女子全員からバッシングを受けてしまった。


「ホント、クズだな」


 伊藤先生は俺を見下ろしながらそう言い、再度、くじをシャッフルし、元木さんに箱を渡す。


 伊藤先生の当たりが強い……

 やっぱり警察に補導はマズかったらしい。


「元木、好きなのを引け。もう結果は見えてる。俺、今日、占いで最下位だったし」


 俺が元木さんにそう言うと、意を決した元木さんは紙を取った。

 そして、中身を見た後に、申し訳なさそうな顔をして、俺を見る。


「ご、ごめん」

「いいよ。知ってた」


 正直、今の席の隣に土井が決まった時にこうなるんだろうなーって思ってたもん。

 神様、使えねー。


 そして、すべての席が決まったので、各自、席を移動する。

 もちろん、俺は移動しない。

 ってか、俺って、ずっと、ここなんだけど……


 皆が移動をし終えると、隣を見た。

 もちろん、図体のでかい土井がいる。


「お前、俺のことが好きなん? 運命の人なん?」

「俺だって、後ろが良かった」


 そりゃそうだ。


 3学期は良くないことが起こりそうだなー。

 早く2年になりたいわ。





攻略のヒント

 日本で発生したスタンピードについて、調査をしたい。

 わが国でも、以前に発生しており、今後のために、協力と情報共有を図ることが目的である。

 また、例の調査も同時に進めてもらいたい。

 ただし、軽はずみの行動は控えるように。

 調査対象は非常に問題のある人物であり、以前も調査員をドブ川に投げ捨て、投石するなどの非道行為をしている。

 厳重に注意されたし。


『???』より

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