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評判最悪男、魔女になる  作者: 出雲大吉
第8章

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第146話 今年も良い1年になるといいなー


 生母の命日に、警察に補導され、しこたま怒られた俺だったが、冬休みを家でゴロゴロしながら謳歌していた。

 多少、うざい時もあったものの、母親が作る料理を食べ、姉妹と交流し、寝る。

 また起きて、ゲームをして、寝る。

 次の日はテレビを見て、寝る。


 実に無気力で楽しい冬休みである。


 その間に、よくアカネちゃんがホノカを訪ねて、遊びに来ているが、外に行く気配はない。

 おそらくというか、絶対に寒いからだろう。

 じゃあ、来るなと思うが、アカネちゃんの家と俺の実家は近い。

 だから、気軽に来るし、下手すると、チャイムも鳴らさずに入ってくるレベルである。


 こうしてみると、王道な幼なじみっぽいが、幼なじみの王道展開である『朝、起こしに来る』はされたことがない。

 されても困るし、アカネちゃんは朝早く起きるような子じゃない。

 なにより、アカネちゃんは妹の幼なじみであり、友達だ。

 アカネちゃんが俺のために、特別、何かをすることはない。

 俺もいらない。


 それでも長い付き合いではある事に変わりはない。

 だから、この冬休みにしょっちゅう顔を合わせるのもいいし、お姉ちゃんやホノカと一緒に行った初もうでについてくるのもいい。


 だが、さすがに、アカネちゃんの顔を見るのも飽きてきた。

 なにせ、2日連続で初もうでに行っているからだ。


「ほら、こんな空気になるでしょ。だから、言ったのに」


 年が明け、1月3日。

 俺はパーティーメンバーである瀬能、ちーちゃん、シズル、カナタ、そして、アカネちゃんと共に学校がある町の神社に行くことになっている。


 昨年、今年のパーティーの祈願をしようとシズルが言いだしたので、皆で行く約束をしていたのだ。


 そして、約束通り、初もうでに行くことにして、駅で待ち合わせをしているのだが、先ほど言った通り、俺とアカネちゃんの家は近所であり、乗る電車も当然一緒だ。


 バラバラで行くのも変なので、一緒に行くことにし、一緒に歩き、一緒に電車に乗ったのだが、なんというか、お互いに『もうこいつはいい』感が満載だった。


 そして、待ち合わせ場所である駅に着き、他の皆を待っている時にアカネちゃんが俺を見て、先ほどの文句を言ってきたのだ。


「アカネちゃんがもう少し、清楚で優しくて、巨乳ならこんな気持ちにはならないんだろうなー」

「最低です。シズル先輩にチクります。私だって、もっと…………それ以前の問題でした」


 アカネちゃんは俺を見て落胆する。


「俺の美人さに自信を失くしたか?」

「私、この前、センパイの夜の姿を初めて見ましたが、女子女子しすぎでしょ? おじさんが悲しそうな顔で見てましたよ」


 アカネちゃんは年末のある日、ウチに泊まっていった。

 徹夜でホノカと遊んでいたらしい。


「別に普通だろ」

「細かくケアしすぎです。20代後半のOLじゃないんですから。私でも、あんなにしませんよ。それに風呂上りとはいえ、バスタオル一枚で出てこないでください。全員、なんて言ったらいいか分かりませんでしたよ」

「知るか。ほっとけ。風呂上がりに服着ると、べたついて嫌なんだよ」

「そして、寝巻はパジャマじゃなくて、ジャージ。どこのギャルですか、あなたは?」

「うるさいなー。ネグリジェよりかはいいだろ」

「そこまで行ったら、もう幼なじみじゃないですね。引きます」


 いや、すでに引いてるし、そもそも、幼なじみじゃない。


「お姉さまって呼んでいいぞ」

「知らないって怖いですねー。センパイを慕う魔女っ娘クラブがめっちゃ大きくなってますよ。来年、高等部にいったらクラン結成ですって」


 中等部は暇なんか?

 他に良い男はおらんのか?


「何それ? クランリーダー、誰? 俺?」

「さあ? その辺が決まらないっぽいですね」

「そもそもなんで俺なん? そりゃあ、後輩に指導したりしたけど、そこまでのことか?」

「センパイは見てて、面白いですからね。目立つし、話題になりやすいです。それで始めは悪ノリだったのが大きくなって、流行りになった感じです」


 女子は怖いわー。

 すぐに流行りを作る。


「じゃあ、そのうちに廃れるな」

「どうでしょう? ガチ勢がいますので」


 そんなのいんの?

 こわー。


「ガチ勢って……」

「ダンジョン祭のレッドオーガに殺されそうになったところを助けてもらった子やこの辺に住んでて、スタンピードの被害を免れた子もいますので」

「スタンピードならお前らもじゃん」

「パーティー名が≪魔女の森≫ですよ? それに良いことも悪いことも、センパイが中心です。逆に言えば、私が何をしようとセンパイのせいです」


 まじかー。

 まあ、それがリーダーと言えば、リーダーだ。


 ≪正義の剣≫の功績は≪Mr.ジャスティス≫の功績。

 ≪正義の剣≫の悪行は≪Mr.ジャスティス≫の悪行。

 リーダーは良くも悪くも、パーティーに責任を持たなければならないのである。


「よし、無視しよう!」

「それで良いと思います。センパイに迷惑をかけるのはやめようが基本方針みたいですし。まあ、報復が怖いのもあるみたいです」


 中等部のガキに報復なんかせんわ!

 多分だけどな!


「年始から嫌な話を聞いたなー」


 俺は来年度の心配事が増えたことにちょっと落ち込んでいると、他の仲間達が来たため、新年の挨拶をし、皆で神社に行くことにした。


「ところでさ、あんた、停学になったってマジ?」


 神社に向かっていると、ちーちゃんが聞いてきた。


「あ、ボクも聞いた。何したんだよ」

「僕も聞きました。どうしたんですか?」


 瀬能とカナタもちーちゃんに乗って、聞いてくる。


 いや、何で知ってんだよ。

 俺はシズルにしか言ってない。

 ちなみに、その時のシズルのリアクションは『バカだねー』だった。


「ちょっと冗談を言ったら警察に連れていかれただけだよ」

「アカネが『センパイが援助交際したー』って言ってたけど……」


 言ったのはお前か!


「てへぺろ」


 アカネちゃんは舌を出して、ウインクする。


 うん、殴りたい。


「してねーよ。そういう冗談を言ったら店員に警察を呼ばれただけ。おかげで停学3日だわ」

「そして、冬休みが延びたーって喜んだら、怒られ、課題と反省文ですって」


 アカネちゃん、解説をありがとう。

 もう仕事は終わったから帰れ。


「バカだなー」

「バカだねー」

「ば……災難でしたねー」


 おや、カナタ君?

 君、今、何を言おうとしたのかな?


 俺はちょっと気になったが、まさか、カナタがそんなことを思うはずはないと思い、スルーすることにした。


 そして、神社に着くと、かなりの数の参拝客がいた。

 この神社は協会に近いということもあり、ダンジョン学園の学生やエクスプローラ達はよくお参りに来る神社である。

 そのため、ここにいる多くは学生やエクスプローラであろう。


 俺達は人の多さに辟易したが、人ごみをかき分け、なんとか本殿まで到着すると、今年1年のダンジョン探索の祈願をした。


「人が多いねー」


 お参りを終え、境内にあるベンチでひと段落していると、シズルが周りを見ながら言った。


「まあ、ここは有名だからなー」

「今年1年、無事にダンジョン探索ができるといいねー」


 だなー。


「神条さんも今年中に男に戻れるといいですね」


 カナタが笑顔で言ってくる。


 ん?

 そういえば、昨日も今日もそれについては何も祈ってないな。


 昨日は家族の無病息災。

 今日はこのパーティーがうまくいくように願った。


「俺、もう一回、行ってくるわ」


 俺は立ち上がり、もう一回祈るために本殿に向かった。


「あいつ、男に戻る気ないだろ」

「完全に忘れてたね」

「今年は無理かなー」

「もうそのままお姉さま街道を突き進めばいいのに」

「余計なこと言っちゃったかな?」


 聞こえてまーす!


 俺はそんな仲間達を無視し、もう一度、本殿に行き、祈る。


 今年は男に戻って、シズルとラブ&ピースしたいです!


『それは無理かなー』


 シロ、黙れ。

 念話だと、神様っぽく聞こえるだろ!


 俺は祈りを終え、皆が待つ、ベンチへ戻る。

 すると、5人は俺をのけ者にして、盛り上がっていた。


「お待たせ。何を話してんの?」


 俺は5人に声をかける。


「あー、ボクとチサトさんのエクスプローラ試験の結果がまだなんだよ。ちょっと遅いなーって話してた」


 俺の問いに缶のおしるこを飲んでいる瀬能が答える。


 なんだ、そのことか……

 あ、そういえば、こいつらが合格だって、伝えてなかったわ。

 言っていいのかな?

 なんか、喜びが減るから言わない方が良い気がする。


「ちょっと時間がかかるんだってよ」


 俺は結果を言わないにしても、遅れてる理由くらいなら言ってもいいだろと思った。


「あんた、何で知ってんの?」


 瀬能と同様に缶のおしるこを飲んでいるちーちゃんが聞いてきた。(俺のは?)


「俺さ、2学期最終日に本部長から依頼を受けたんだよ。そん時に聞いた」


 依頼については、言ったらダメと言われているので、こいつらにも言ってない。

 シズルにはしゃべったが……


「そういえば、放送で呼ばれたね。あれ、何だったのさ? なんか、切羽詰まってたから、また、スタンピードでも起きたのかと思ったんだけど……」


 俺は耳をふさいで、放送を聞いていないから、どんな放送だったかは知らない。

 かなり急を要してたから、焦りがあったんだろう。


「うーん、依頼内容は言えないっぽい。まあ、解決したとだけ言っておこう」

「ふーん。なら、聞かない方がいいか……ところで、何であたし達の結果が遅くなるのさ?」

「色々と調整があるんだとよ。だから、クーフーリンとサエコをAランクにするタイミングで、お前らに資格を発行するらしい」


 クーフーリンはともかく、何でサエコもなんだろう?

 あいつはBランクでいいのに……


「………………」

「………………うん?」


 ちーちゃんと瀬能の動きが止まった。


「どうした? 多分、再来週くらいには結果が出ると思うから、もし、受かってたらお祝いしてやるぞ?」


 焼肉は反対されるだろうから、いつものファミレスでいっか。


「…………こいつ、こんなにバカなの?」

「…………失言にすら気付いてない」


 何、この上級生達?

 人がせっかく祝ってやろうとしてるのに……


「……ルミナ君。隠してるつもりなんだろうけど、資格を発行するって言っちゃってるよ」


 シズルがそーっと耳打ちしてきた。


 ん?

 ん-……

 言ってるね……


「ちーちゃん、瀬能! 合格おめでとう! 俺はお前らなら受かるって信じてたぜ!! いやー、先輩方は頼もしいなー! なあ、カナタ!」

「ですねー。僕も問題をちらって見ましたが、すごく難しかったです。さすがですね!」


 ほれ、アカネちゃん。

 空気を読め。

 お前の唯一の取り柄だろ。


「瀬能先輩、チサト先輩。おめでとうございます! 新年から良いニュースですね。幸先が良いとはこのことです」


 さすがはアカネちゃん。

 お前を連れてきて良かった。


「めでたいなー」

「ですねー」

「素晴らしいことです」


 俺とカナタとアカネちゃんは自分の事のように喜んでいる。


「……おめでとうございます。そして、なんかすみません」

「ありがと。嬉しいよ。あんたは頑張って……」

「まあ、一安心だね。リーダーにものすごい不安を感じるけど……」


 お前らもテンションを上げたらどうなんだ?

 当事者だろうに。


『年末も新年もバカ。今年もきっとバカするんだろうなー』



 バカは死んでも治らない……ってか?



 うるせーよ!!





攻略のヒント

 全エクスプローラに対し、レベル及び所持スキル、ジョブの報告を義務付ける。

 また、協会の職員はその確認を行い、把握すること。


『ダンジョン省から各協会への緊急通達』より

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[良い点] お父さんどんな気持ちなんだろう…… そしてルミナちゃんはもうお姉さま街道突っ走ってもらって。
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