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評判最悪男、魔女になる  作者: 出雲大吉
第7章

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第127話 夏には早く冬になれと思い、冬には夏になれと思う


 優しい俺はキララをあきちゃんに紹介した。

 そして、あきちゃん達は≪あきちゃんファミリー≫なるパーティーを結成した。


 俺はその場で≪Mr.ジャスティス≫に電話し、キララをフリーのあきちゃんのパーティーに入れてほしいと頼んだ。

 ≪Mr.ジャスティス≫は良いよーとすぐに承諾してくれた。


 相変わらず、≪Mr.ジャスティス≫は実に(都合の)良いヤツである。



 その後、家に帰った俺は貰った写真を見ている。


 知ってたけど、あいつ、マジですげーな。


「相棒、お前の欲望垂れ流しはもういいぞ。ラブ&ピースはどうした?」

「ラブ&ピース? なにそれ? 男はエロと金じゃ!」

「そっか。頑張れ」


 あ、ツッコミすらない。


「冗談じゃねーか。それにエロだって、ラブ&ピースに含まれるんだよ」

「そうかもしれんが、自分本位が過ぎるわ」

「シズルの事をちゃんと考えろってんだろ? わかってるよ」


 耳タコだわ。


「大切にしろよ。ところで、お前、これからどうすんだ?」


 シロが話を変え、漠然とした質問をしてくる。


「これからって?」

「ダンジョン攻略だよ。せっかくマジカルテレポートを覚えたのに、お前ら、ここのところ、14,5階層をウロウロしてんだろ」


 俺はダンジョン内を転移できる魔法を覚えている。

 これを使えば、20階層まで一気に飛ぶことが出来るのだ。


「しゃーねーだろ。他の連中はレベルが低いし、ちーちゃんと瀬能には試験があるんだから」


 明日からはもう12月だ。

 ≪Mr.ジャスティス≫と決闘をしてから1ヶ月近く経つ。

 その間に、俺達は20階層以降には行っていない。


 理由は言った通り、仲間のレベルが低いからだ。

 あいつらは学生であり、まだキララに毛が生えた程度である。


 スタンピードでレベルが上がったし、当人達の素質も悪くはない。

 だが、やはり焦らずゆっくりやろうと思ったのだ。

 過保護と言われるかもしれないが、無理はさせたくない。


 もはや、あいつらは俺にとって、代えが利くものではないのだ。


 そして、そんな仲間の内、学校の先輩であるちーちゃんと瀬能は俺のために、在学中であるのにも関わらず、エクスプローラの資格を取る。


 その試験時期を聞くと、12月の初旬、つまり、今週末だ。

 今日は日曜なので、あと、5日しかない。


 俺は何度も試験に集中した方がいいので、ダンジョン探索は休みにしようかと言ったのだが、先輩2人は勉強漬けはキツいし、ダンジョンには行きたいそうなので、特に試験のための休みは設けていない。


 しかし、20階層以降は俺達が嫌いな虫が多い。

 そのため、先輩2人のストレスになったらいかんと思い、この1ヶ月は14、5階層でレベル上げを中心に活動していたのだ。

 

「まあなー。しかし、瀬能とチサトはすげーな。この前、中間試験があったっていうのに、資格試験も受けるんだから」


 先週まで、学校では中間試験があった。

 瀬能とちーちゃんはそれでも資格試験の勉強もしてたし、当然、中間試験の方の勉強もしていた。

 しかも、俺とアカネちゃんの試験対策までしてくれたというおまけ付き。


「あいつらは勉強超人なのかね? 俺は人生を何度繰り返そうとも出来る気がしねーわ」


 前にこっそりアカネちゃんとあいつら、やべーって、陰口を叩いた。

 そして、あがめたてまつった。


「あいつらの何がそこまで駆り立てるのかねー」


 俺という最高のリーダーであり、かけがえのない仲間のためさ!


「これがユリコなら勘ぐるんだが、あいつらはそんなことしないだろーなー」

「瀬能は器がでかいし、チサトも基本的には人が良いからな」


 基本的にはね。

 あいつ、ツッコミという名の小言がうるさい。

 ちなみに、アカネちゃんも小言を言うこともあるが、あいつは言葉には出しても、一切止めてこない。

 シズルは無視してくる。

 カナタに至っては、称賛しかしない。


 かけがえのない仲間達だぜ……


「今週であいつらの資格試験が終わるから、これからは少しずつ攻略していくよ。当面の目標は30階層だなー」


 ≪Mr.ジャスティス≫達は30階層のボスを倒し、30階層までの地図を作成した。

 これで安心して挑めるってもんだ。

 ≪Mr.ジャスティス≫は実に(以下略)。


「ふーん、じゃあ、来週くらいから21階層か……まあ、ゆっくりやりな。お前の中間試験も大丈夫だったし」

「ああ、ギリだけどな。ちーちゃんと瀬能は本当に感謝だわー」


 先日、テストが返ってきた。

 あいつらの過去問と勉強を見てもらったおかげで、俺とアカネちゃんは赤点を免れたのだ。


 ちなみに、妹のホノカは赤点だった。

 ざまあみろと思って、実家に帰ったのだが、ホノカは母親に『お兄ちゃんですら赤点じゃないのに、あんたは何してるの!?』と怒られ、半泣き状態だった。


 ですらって……

 泣きたいのはこっちじゃい!

 あいつら、俺をどんだけバカだと思ってるんだろう?


 俺は憤慨してそのまま帰った。

 

 もう二度と帰るか!


「あいつらも受かると良いけどなー」


 それは俺も思う。

 これで落ちたら、時間を割いてまで勉強を見てもらった俺とアカネちゃんが気まずくなっちゃう。




 ◆◇◆




 翌日、俺は携帯の目覚ましの音で目が覚めた。

 そのまま、時間を見ると、まだ7時だった。


 おやすみ…………


「いや、起きろよ」


 俺の耳元で俺の幸せを阻害する不快な声が聞こえる。


「…………寒い。眠い」

「遅刻するぞー」

「ハァ……うえ、マジで寒い」


 俺はなんとか布団から出て、立ち上がるが、寒さに震える。


「いいから顔を洗って準備しろよ。時間ねーぞ」

「はいはい」


 俺はノロノロと洗面台に向かう。


 時間はまだ7時だし、始業までは時間がある。

 しかし、女というのは時間がかかるのだ。


 昔は顔を洗って、前日に作っておいた弁当を準備し、着替えて行くだけなのだが、女の場合は色々とケアがあるし、着替えも時間がかかってしまう。


「めんどくせー」

「じゃあ、そのままで行けよ」

「そんなみっともないことできるか」


 笑われちゃうだろうが。


「いや、どちらかというと…………なんでもない」


 朝から歯切れの悪いヤツ。

 お前に歯があるのかは知らないけど。


 俺は顔を洗った後、朝食を食べ、弁当を準備する。

 その後、着替え、鏡台の前で髪をとく。


「長いと、めんどくさくない? 切らないの?」


 必死に櫛で髪をといていると、シロが鏡越しに聞いてくる。


「長い方が楽なんだよ。それにこっちの方が似合うし」


 いつ見てもめっちゃ美人だし、髪も綺麗だわー。

 問題なのは、こいつが俺ということだな。


「しかし、さみーなー。そろそろ暖房かねー」

「俺っちは寒い方が好きだから、ない方がいいな」


 そういえば、こいつは氷のブレスを吐く、ホワイトドラゴンだった。

 夏はぐだってたし。

 まあ、こいつがブレスを吐くところを見たことはないが。


「俺が凍え死んじゃうよ。しかし、俺も女に慣れたもんだぜ」


 俺は髪をとき終えると、グリップでまとめる。


「お前は最初からこんなんだったろ」

「いや、女になって、男の自分との葛藤があったと思う」


 記憶にはないがね。


「ねーよ。お前、初めてアレになった時も、一人で赤飯を焚いて、食ってたじゃねーか。何が『大人になったなー、わはは』だ」


 よく覚えてんな、こいつ。


「そういえば、あれ、美味かったな。また作るか……」

「まあ、美味かったな。来月は餅作れ」


 そうか。

 もう12月ということは来月には年が変わる。

 日の巡りは早いもんだなー。


「いや、餅って…………作れるわけねーじゃん。買ってやるからそれを食え」

「マジかー……まあ、無理か。俺っちは食ったことねーから楽しみだわ」


 食いしん坊だねー。

 詰まらせて死ぬなよ。


「さて、出来た。似合う?」


 なお、似合わないって言ったら殺す。


「似合う、似合う。さっさと学校に行こうぜ」


 もっと褒めろや。


「さて、行くかね」


 俺はシロの言葉に若干、不満だったが、仕方なく立ち上がり、家を出た。


「さみ」


 俺は思わず、声が出た。


 今年は雪が降るのかねー。


 わびさびがわかる俺は季節を感じながら、学校へと向かった。


 まあ、わびさびの意味は知らんが……


 俺は寒さにも負けず、学校に着くと、自分の席に座る。


「おはー」

「おはよう」


 もちろん、隣の席に座るシズルに挨拶をする。


 シズルは以前の俺がちょっとやさぐれてた時から母親ぶって、ちょっとうざかったが、最近はようやく元の優しいエロ女に戻ってくれた。

 俺のラブ&ピース計画がようやく実ったのだ。


「寒いなー」

「寒いよねー」


 さてと……


「今年はマフラーがいるかもなー。寒いし」

「持ってないの? 返そうか?」

「ん?」


 何を返すの?

 何か貸したっけ?


「いや、≪疾風のマフラー≫。前にもらったじゃん。あ、でも、マフラーしないんじゃなかったっけ?」


 あー……パーティーを組んだ時にこいつにあげたわ。

 スピードが上がる装備品で、俺には不要だったから上げたんだ。

 そういえば、こいつ、ダンジョンで装備してるな。


「いや、今年はいるかなーと、寒いしね」


 めっちゃ寒い。


「……そっかー。確かに今年は寒くなりそうだね」

「だよなー。買おうかなー、どうしようかなー。寒いし」

「………………」

「あ、それと今週のダンジョン探索はさすがになしにしようと思うんだけど、いいかな?」

「確かに、チサトさんと瀬能さんの試験が金曜だもんねー。いいんじゃない?」


 副リーダーもこう言ってることだし、そうしよう。


「皆に連絡しとくわ。いやー、しかし、寒いな」

「………………」


 寒いねー。

 特に首元が寒いねー。

 来週末くらいにマフラーが欲しいわー。


『相棒、気持ちはわかるが、アピールがうざい』





攻略のヒント

 

 こんにちわー。


 最近は寒くなったねー。

 あきちゃんは風邪を引かないように、うがい手洗いは徹底してるよ。

 おかげで、あきちゃんは人生で一度も風邪を引いたことがないんだ!

 すごいでしょー。


 皆も風邪には気を付けてねー。


 さて、今日はとても寒いので、久しぶりに真面目な話をしようと思う。


 皆もダンジョンの気温が微妙に外と連動してるのは知ってるよね?


 夏はちょっと暑いし、冬も若干、肌寒い。


 私はこの季節の連動について、少し疑問に思ったことがある。

 モンスターへの影響はどうなんだろうか…………とね。


 私はこれを4年前から趣味で研究している。

 まだ確証に至るには、サンプルが足りないけど、冬になると、虫系や爬虫類系のモンスターの動きが微妙に遅くなっているデータが出ているのだ。


 すごいでしょー。

 つまり、すべてではないだろうが、地球上の生物と生態がかなり似ているのではないかな?

 

 まあ、もうちょっと研究してみるよ。



 あ、それとあきちゃん達をディスった記者さんへ

 

 絶対に許さないからな!!

 あきちゃんを敵に回したことを後悔させてやる!!



 じゃあ、今回はこの辺で!


 また、近い更新するから、みんなちゃーんと、毎日チェックしてね?


『≪モンコン≫ことBランクエクスプローラ春田秋子のブログ』より 

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― 新着の感想 ―
[一言] 昨日はルミナちゃんとアカネちゃんの誕生日だったんですね。おめ。 ルミナくんの女子力が高過ぎて、もうクラスメイトあたりは男だったって事わすれてるんじゃ このままじゃ、シズルにも忘れられそう
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