第012話 ダンジョン探索終了!
ゴブリンを狩ることに決めた俺達は、シズルを先頭にし、ゴブリンを探していた。
しかし、何回かスライムは倒したが、ゴブリンはまだ見つかっていない。
「いないね。スライムは良く見つかるんだけど」
「まあ、1階層はスライムがメインだからな。2階層に行けば、結構いるんだが」
どうでもいい時には出てくるが、出てきてほしい時には出てこない。
物欲センサーってやつか?
「うーん、2階層に行く?」
「ダメ。焦るのはわかるが、最初ほど順序よく進めないと、後で躓く」
焦りは禁物。
急がば回れだ。
俺の長所はこの冷静さである。
まあ、スキル≪冷静≫のおかげだけど。
「そうね。急がば回れって言うし、もうちょっと探してみる」
おや? 気が合うね。
結婚する?
俺は心の中でプロポーズをする。
「でも、まあ、確かに埒が明かないな。俺も探してみるわ」
俺はスキル≪索敵≫を使い、周囲を探してみる。
うーん、いないなー。
「いないな。仕方がない、宝部屋に行くか」
「宝部屋?」
「ああ、良く宝箱が見つかる部屋のことだ。1階層の地図は持ってきてるな? 赤丸がしてある部屋がそうだ」
ダンジョンには宝箱がある。
宝箱はダンジョン内にランダムで配置されるが、小部屋とかに良く出てくる。
「えーと、あ、確かに赤丸がしてある。ここからだと近いのはここかな?」
シズルは地図を取り出し、広げると、ここから近い赤丸部を指差す。
「じゃあ、そこに行こう。宝箱があるところはモンスターが出やすいからゴブリンがいるかもしれん」
「よーし、レッツゴー!」
レッツゴー!
俺達は近くの赤丸の小部屋に向かうことにした。
「お、ここだ、ここ」
部屋の扉の前に着くと、俺は中の様子をスキル≪索敵≫で確認する。
お、いるわ。
ってことは宝箱もありそうだな。
シズルを見ると、シズルもゴブリンを確認した様子だ。
シズルは覚悟を決めたのか、もう緊張しておらず、冷静に武器の確認をしている。
「よし! 行けるわ」
「わかった。じゃあ、扉を開けて、中を確認しろ。俺は扉の外にいる。まあ、ヤバくなったら助けてやるから、安心してゴブリンを狩ってこい」
「ええ、任せて」
シズルは扉を開けて、中の様子を窺う。
部屋の中には宝箱があり、その宝箱の前にはナイフを持ったゴブリンが立っていた。
シズルはゴブリンを見つけると、部屋の中に入り、ゴブリンと対峙する。
ゴブリンもシズルに気付くと、すぐにナイフを構え、シズル目掛けて走ってきた。
シズルが突進してきたゴブリンを躱すと、ゴブリンは体勢を崩し、倒れこんだ。
ゴブリンは慌てて立ち上がろうとするが、シズルはそんなゴブリンを蹴り飛ばす。
おー、すげー!
シズルの蹴りをまともに受けたゴブリンは、ナイフを手放した。
馬鹿なゴブリンは、目の前に敵がいるにもかかわらず、ナイフを拾おうと、シズルに背を向けてしまう。
シズルはそんな致命的な隙を見逃さず、背を向けたゴブリンの首を短剣で切りつける。
ゴブリンはそのまま倒れこんで、暴れていたが、しばらくすると、動かなくなり、煙と共に消えていった。
楽勝じゃねーか。
ってか、ゴブリンがアホだな。
「ふぅ、よし!」
「おつかれさん。完勝だな」
俺はガッツポーズをしているシズルに近づくと、シズルに労いの言葉をかける。
「ありがとう。なんとかなったわ」
「蹴りが良かったな。お前、なんか慣れてない?」
ヤンキー?
「そんなことないわよ。ケンカなんかしたことないし」
「そうか? まあ、良かったよ」
「本当よ? あっ、それとレベルが上がったみたい」
「おっ、スキルポイントはいくつだ?」
常識の範囲内でありますように。
「えっと、5ポイントね。多い?」
ふぅ、良かった。
普通だ。
レベルが上がると、スキルポイントが手に入るが、大体3~6ポイントである。
「いや、普通だな。スキルポイントは多少、前後するが、大体そんなものだ。早速、スキルを取れよ」
「うん。何がいいかな? ≪空間魔法≫のlv3って、何を覚えるの?」
「お前、≪空間魔法≫が好きだな。≪空間魔法lv3≫はオートマップだな。自分が歩いた道を自動的に地図に描いてくれる魔法だ」
「すごいじゃん。それにしようかな」
「やめとけ。お前、地図を持ってるだろ。それはオートマップを持っている協会の職員が作成したものだ。ダンジョン攻略の進捗率を上げるために協会が無料で配ってるから、俺達がオートマップを持ってもあまり意味がない」
最初は地図を売るヤツもいて、そこそこ儲けてたみたいだ。
しかし、偽物が横行し、被害が大きくなったため、協会が手を打ったのだ。
「うーん、じゃあ、≪忍法≫を上げるか、≪身体能力向上≫を上げるか……どっちがいいかな?」
「無難に≪身体能力向上≫を上げとけ。≪忍法≫は今でも充分にオーバーキルだ」
あんなの、オークでも一発KOだよ。
「わかった。じゃあ、≪身体能力向上≫を上げるね」
シズルは目の前の文字を操作し、≪身体能力向上≫を上げた。
「よし、じゃあ宝箱を開けるか。あ、魔石も拾っておけよ」
「了解」
シズルは落ちていたゴブリンの魔石を拾い、カバンに入れると、宝箱に近づく。
「宝箱を開ける前に、お前の≪諜報≫で宝箱の罠の有無を調べてみろ」
「えーと、むむむ……多分、罠はないと思う」
だろうな。
「まあ、1階層の宝箱に罠はないだろうな。じゃあ、空けてみろ」
シズルは宝箱に罠がないことを確認すると、宝箱を開ける。
「お宝~」
はいはい、かわいい、かわいい。
シズルが変な掛け声で宝箱を開けると、宝箱の中から腕輪が出てきた。
「腕輪だ! 何か能力が付いてるかな?」
「さあ? こればっかりは、スキル≪武具鑑定≫が要る。俺は持ってないから、帰って、協会に頼むことにしようぜ。1階層の武具なら1000円くらいだったと思うぞ」
「よーし、これも貰ってもいいの?」
「ああ、やるやる。鑑定してもらって、使えそうなら自分で使えよ。要らなかったらそのまま売ればいいし、初ダンジョン、初宝箱だから、記念に取っておいてもいいぞ」
そういうヤツは多い。
俺? 即効で売ったな。
焼肉代にした。
「ありがとう。そうしようかな? えへへ、ちょっと嬉しいな」
おー、喜べ、喜べ。そして、感謝しろ。
お礼はそのおっぱいでいいぞ。
「よし、今日はこんなものだな。初日にしては、順調だ」
「そう? 私はまだ行けるけど」
「言ったろ? 焦るな。今日は初日だから無理はしない。大丈夫だ、お前のジョブや素質は予想以上に良かった。これなら問題ない」
「わかった。ルミナ君の言う通りにするわ」
そうそう、俺の言うことは何でもしろよ。
ぐへへ。
「じゃあ、今日は帰還する。帰還魔方陣のところまで行くぞ」
「了解!」
俺達はその後、帰還魔方陣を使い、無事にダンジョン探索初日を終えた。
◆◇◆
帰還魔方陣を使い、協会に戻ってきた俺達は、いつもの警備員に帰りの挨拶をした後、受付までやってきた。
「おかえりなさい、2人共。無事に帰ってきて良かったわ」
「ただいま、マイさん」
「ただいまー」
俺とシズルはマイちんに挨拶を帰す。
「初ダンジョンはどうだった?」
「うん。緊張したけど、ルミナ君にサポートしてもらったから安心だった」
そうだろう、そうだろう。
「そう、良かったわね。ジョブは何にしたの?」
「あー、それなんだけど、新規ジョブだ。レアジョブの≪忍者≫だとよ」
「え!? 本当に!? ≪忍者≫ってどんなの?」
マイちんも驚いている。
「えーと、スキル≪忍法≫が使える。火遁と水遁の術」
「良くわからないけど、何かすごそうね。新規ジョブは登録しないといけないから、また詳しく聞かせてちょうだい。登録名は匿名のほうがいいわよね?」
「うん。それでお願い」
エクスプローラには、新しいジョブが見つかった場合、ジョブの内容と習得可能スキルを報告する義務がある。
報告された新規ジョブとスキルは協会のHPに載せられる。
そこで新規ジョブの獲得者の名前も出るのだが、学生などの未成年は匿名にすることが多い。
「わかったわ。でも良かったわね。初期からレアスキルがあると伸びるわよ」
≪踊り子≫もあったことは、内緒にしておこう。
「うん、ありがとう。これから大変だけど、頑張るよ。ルミナ君、よろしくね」
「ん? ああ、よろしく。それよりも成果を出せよ。なんか腕輪があっただろ?」
「あ、そうそう。マイさん、これが今日の成果です」
シズルはそう言いながら、マイちんに今日の成果を渡す。
「はい、確かに受けとりました。ちょっと待っててね。査定と腕輪の鑑定をしてくるから」
マイちんはそう言うと、奥の部屋に引っ込んでいく。
「いくらぐらいになるかな?」
「スライムローションと腕輪は売らないんだろ? 魔石だけなら、5000円を超えるか、超えないか、だな」
魔石は高く買い取ってもらえるが、スライムやゴブリンの魔石は安い。
これがオークになると、オーク単体で5000円を越える。
2m程度の巨豚であるオーク一体5000円を高いと思うか、安いと思うかは、そのエクスプローラ次第だけど。
「そっかー、本当に全部貰っていいの? 何か気が引けるんだけど」
「さっきも言ったけど、ご祝儀だから気にするな。明日からはキッチリ半々にする。この後、時間あるか? この後、その辺も含めて、今後の予定を話しておきたい」
「わかった。時間は大丈夫。お腹空いたわね。ご飯行く?」
お! デートの誘いですか?
行く行くー!
俺達がこの後のデート(?)の予定を詰めていると、奥からマイちんが戻ってきた。
「おまたせ。これが魔石とアイテムの明細書よ。腕輪は≪ビギナーズバングル≫ね。鑑定書はこれ」
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ビギナーズバングル
物理防御 +5
特性 なし
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まあ、普通の装飾品だな。
別に珍しくもない。
明細書を見ると、魔石が全部で4400円、スライムローションが3000円、≪ビギナーズバングル≫は1万5000円となっている。
エクスプローラ初日の1階層であることを考えると、かなり良い成果である。
普通は、この半分も稼げない。
俺のおかげだぞ。
感謝しろ。
お礼は(略)
「どうする? 全部売却する? ≪ビギナーズバングル≫は、どのジョブでも装備可能だから、売らずに使ったほうが良いと思うわ」
「うん、そうする。あとスライムローションも売らない」
「あ、やっぱり? 女性エクスプローラはスライムローションを売ってくれないのよね。だから、いつも品薄なのよ」
へー、そうなんだ。
俺は全部売ってたけど、今度からは転売しようかな?
いや、お姉ちゃんにプレゼントしたら喜んでくれそうだ。
妹? あいつはいいだろ、別に。
俺は心の中で、お姉ちゃんにスライムローションを渡すが、それを知った妹に駄々をこねられるのが安易に想像できて、苦笑した。
「じゃあ、魔石だけね。ちょっと待っててね」
マイちんがDカードに魔石代を振込みに奥へと行く。
「この後、マイちんがDカードを持って戻ってくる。それを受け取れば終了だ。ここまでがダンジョン探索の流れになる」
「ええ、わかったわ」
「マイちんを待ってる間に、依頼システムを説明しておこう」
「依頼システム?」
俺は頭の上に?マークを浮かべているシズルに説明をする。
「ああ。依頼システムは、掲示板依頼と指名依頼がある。指名依頼は正に今、お前と俺の関係だ。お前がっていうか、マイちんが俺を指名して依頼した感じだな。高ランクのエクスプローラは、よくこの手の依頼が来る」
「へー、ルミナ君にもよく来るの?」
「来るぞ。多いのがアイテムや素材の収集依頼だな。ダンジョン奥のアイテムや素材を取ってこいって、よく言われる。逆に少ないのは護衛依頼とかだな。少ないというか、1回も来たことない」
他にも、エクスプローラの取材もあったが、1回だけだな。
二度と取材を受けるなと、川崎支部のハゲに怒られた。
解せぬ。
「やっぱり? ルミナ君はそっち方面は向いていないと思うよ」
「わかってる。俺も受ける気はない。それで、掲示板依頼の方だが、協会のHPには、相談、雑談などの掲示板がある。そこに依頼掲示板があるから、そこで依頼を見て、協会の受付に言えば、受注できる。暇だったら覗いてみろ。ダンジョン探索の途中で依頼達成可能なら、ついでに受注しておくといいぞ。あと、雑談掲示板は見るな。絶対にな」
俺の悪口、陰口のオンパレードだ。
まあ、俺も≪正義の剣≫の悪口をあることないこと、書きまくったけど。
有名税ってやつかね?
「へー、おもしろそう。ちょっと見てみるわ」
「ああ、依頼を受けるとランクも上がりやすいしな。学生の場合、依頼を受けると、学校の評価点が良くなるって聞いたことがある」
実は中学の時の俺の評価点は、結構、良かったりする。
シズルに依頼について、説明していると、マイちんが戻ってきた。
「はい、これ。今日はお疲れさまでした。明日も探索するの?」
マイちんが俺に赤いDカード、シズルに白いDカードを渡してくる。
やっぱり目立つね、コレ。
「明日は……どうするの?」
シズルが行きたそうな表情をしながら、俺に聞いてきた。
「明日も行くぞ。本当は初日の次の日だし、休みにしようかと思っていたが、余裕そうだし、問題ないだろ」
「ええ、ありがとう。マイさん、明日も行きます」
「そう? あまり無理はしないでね? ルミナ君、シズルをお願いね」
任せてください! 娘さんは幸せにしてみせます。
俺はマイちんからシズルをよろしくされた。
やったね!
攻略のヒント
当協会のHPには、掲示板を設置しております。
掲示板は、依頼の申し込み、スキルやジョブの相談、パーティー募集など、様々な掲示板があります。
皆さまにお願いがございます。
一部の掲示板において、倫理・道徳に著しく反した書き込みが多数、見受けられます。
この掲示板は、年齢制限もなく、どなたでもご覧になられる掲示板ですので、ご利用なされる皆さまは、ルール、マナーを守ってお使いください。
『エクスプローラ協会HP 掲示板のご利用について』より