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第108話 もしかしなくても、俺って、クズなのかなぁ?


 マイちんに依頼の話を聞いた翌日、俺は学校に行くために家を出た。


 家を出ると、少し肌寒さを感じる。

 今はもう11月。

 夏の暑さやゾンビ、虫地獄も過ぎ去り、秋である。


 俺の格好もミニではなく、ロングなスカートに変わり、肌色面積も少なくなっていた。

 

 自分の肌色面積が減ると同時に、他の女子も厚着が目立つ。

 もったいないが、こればっかりは仕方がない。

 

 今となっては、ファッションのためとはいえ、寒いのに、ミニを穿くやつの気が知れない。

 

 まあ、俺の場合はロングでも似合うから良いのだけど。


 俺は内心で自画自賛をしながら学校に向かって歩いていると、前方に見たことある女神と引き立て役の生意気サイドテールを発見した。


「おねーちゃん!」


 俺は女神を視認すると、走って追いつき、声をかけた。


「あ、ルミナ君、おはよー」

「うん! おはよー! ついでに、ちーちゃんもおはよ」

「…………おはよ」


 ちーちゃんはだるそうに答える。


 こいつ、寝不足だな。


 ちーちゃんは基本的に遊んでばっかな人間である。

 そのくせ、頭は良いうえに、成績も良い。


 神様、このダウナー女に天罰を!!


「ちーちゃん、どうしたの? 遊び疲れ?」


 クズめ!!


「いや、この土日はあんたが体調崩して、ダンジョン探索がなくなったろ? その間にエクスプローラ試験の勉強してたら寝るのが遅くなっちゃったんだわ」


 ………………なんか、ゴメンね。


「エクスプローラ試験? 何? 免許を取るん?」


 エクスプローラの免許は18歳以上でないと、取得できない。

 しかし、ダンジョン学園の学生であれば、仮免を持っているため、取得が可能だ。

 もちろん、卒業しないといけないが、免許を取得すれば、俺のように専門実技の試験は免除である。


 とはいえ、取るヤツは少ない。

 何故なら、エクスプローラ試験は難しいし、学園を卒業すれば貰える免許を頑張って取る意味がわからない。


 俺?

 俺は特殊なケースだし、試験もロクに勉強せずに受かった記憶がある。

 さすが俺!


「ちょっと瀬能と話し合ってね。まあ、後で話すよ。今日って、ダンジョンには行くの? 依頼がどうとか言ってたけど」


 瀬能とちーちゃんが話し合う?

 え? 上級生によるクーデター?


「依頼次第だからなー。一応、準備しといて。しかし、寒いねー。ちーちゃん、あったかいコーヒーでも飲む?」

「…………あたしも瀬能も、あんたからリーダーの座を奪わないから急に優しくしなくても良いよ」


 じゃあ、紛らわしい事を言うな、ボケ!


「ルミナ君達は、今日は依頼なの?」


 俺が内心で毒づいていると、俺のすさんだ心を浄化する聖女の声が聞こえてきた。


「そうだよー。昨日、マイちんから電話があったんだ。まあ、依頼人も依頼内容もわかんないから受けるかはわかんないけど。お姉ちゃんは? ダンジョン?」

「だねー。なんかクランの人達が急にダンジョンを攻略し始めちゃったから忙しくなってきた」


 この東京本部にあるロクロ迷宮は長い間、攻略が進んでいなかった。


 東京本部を狩場にしている大手クランは≪正義の剣≫と≪ヴァルキリーズ≫だが、この2つのクランはダンジョン攻略より、治安維持をメインに活動しているため、攻略するパーティーが少なかったのだ。


 そのため、これまでは30階層にすら到達していないというほどに進んでいなかった。

 ちなみに、俺が以前に所属していた川崎支部の最深到達階層は40階層を越えていた。


 しかし、先月に起きたスタンピードにより、このままではマズいと考えた≪正義の剣≫の≪Mr.ジャスティス≫は以前より考えていたダンジョン攻略へのシフトチェンジ計画を早め、ロクロ迷宮のダンジョン攻略に力を入れだしたのだ。

 それにより、この前、≪Mr.ジャスティス≫達はロクロ迷宮の30階層に到達したらしい。


「あいつらも必死なんだよ。自分達の留守中にホームであるロクロ迷宮でスタンピードが起きたんだから。しかも、よりにもよって、その窮地を烈火のごとく嫌ってる俺が救ったんだし」


 ロクロ迷宮でスタンピードが発生したことを知った≪正義の剣≫は超特急で東京本部に帰還した。

 しかし、帰還したらスタンピードは俺が止めていたのだ。


 その後、あいつらに会った時、すげー悔しそうな顔をしてたから、めっちゃ煽ってやった。


 あいつら、拳を握りしめてたね。

 ちょーウケる(笑)


「……うん。ルミナ君、あんまり、クランの人にケンカを売らないでね。クランの人達、尋常じゃないくらいに怒ってたよ」

「あたしも現場にいたけど、あんた、煽りすぎ」

「自分達の無能さを棚に上げて、逆ギレとはねー…………マジ、ウケる(笑)」


 また、煽ってやろー。


「こいつ、どういう人生を送ったらこんな性格になるんだろう」

「昔は、素直で良い子だった…………ような、気が、しないでもない……」


 お姉ちゃんは困った顔でもかわいいなー。




 ◆◇◆




 学校に着き、お姉ちゃん達と別れた後、俺は自分の教室に入る。

 俺の席は一番前で、ド真ん中という特等席だ。

 授業中に寝ることも許されず、私語も教師の悪口も言いづらい席である。


 しかし、良い点もある。

 それは隣にはシズルがいることだ。


「おはー」


 俺は自分の席に座りながら隣に座るシズルに挨拶をする。


「おはよー、ルミナ君。もう体調は大丈夫なの?」

「もう大丈夫。まあ、たいしたことなかったし」


 俺はかっこよくふるまうために強がって見せる。


「そうなの? シロから相棒が痛い痛い、うるさいって、メッセが来たけど」


 おい!!


『すまん。うるさかったから』


 俺のカッコいいイメージが崩れるだろ!!


『その点は大丈夫だから安心しろ』


 そうかね?


「シロはオーバーだからな」

「そうかな? まあいいけど。それよりも今日の依頼って?」

「内容は俺も知らない。昨日、マイちんが言ってたけど、お前に似た感じの依頼人っぽい。お前、マイちんの他にも従姉妹いんの?」

「従姉妹はマイさんだけだよ……私に似た? 誰?」

「知らね。あー、でも、俺が知ってるって言ってたな」


 シズルに似ている……


 俺はシズルをジーっと見る。


 そして、髪を見て、顔を見る。

 さらに、胸を見て、腰を見る。

 最後に足を見て、胸を見た。


 誰だろ?

 お姉ちゃんではないだろうし、うーん…………


「ねえ、なんで胸を2回見たの?」


 お前の特徴だから。


「見てない。うーん、まあ、放課後にわかるか。また、めんどくさい依頼じゃないことを祈っておくかねー」

「ねえ、なんで?」


 うるさいエロ女だなー。


「ちょっと、目に入っただけで、他意はねーよ」

「…………絶対に嘘だ」


 まあ、嘘だけど。


「そんなことより、俺を見て、なんか気付かない?」


 俺はシズルのジト目から回避するために、話をそらすことにした。


「なんか変わったの? 特に変わってないけど」

「お前はダメだなー。よく見ろって」

「んー……太った?」


 なんでやねん!


「……お前、逆の立場になって考えてみろ」

「ごめん、ごめん。あー、バッフィングしたんだね」


 …………なんて?


「バッフィング?」

「違うの?」

「日本語しゃべれ」

「爪を磨いたんじゃないの?」


 こいつ、絶対にわざとわかりにくく言ったな!


「それそれ。バッフィング」


 明日には忘れそうだわ……


「綺麗だねー」

「だろ?」


 俺は両手の甲をシズルに向け、自慢する。


「うんうん…………あのさ、自棄になってない?」


 さっきまで笑顔で頷いていたシズルが急に暗い顔をして聞いてきた。


「なってる。もう女として生きようかなーと」


 お前とヤレねーし。


「ルミナ君…………」


 シズルが俯いてしまった。

 そうしていると、担任の伊藤先生がやってきたため、俺は話しを止め、前を向いた。


 暗いヤツだなー。

 笑うところだぞ?


『笑えねーよ!』


 シロは冗談も通じない……


『お前、マジでヤバいぞ』


 何が?


『お前、シズルとヤルどころか見捨てられそうだわ』


 は?

 またまた、シロさんったら、ご冗談を。


『相棒、お前の空っぽな頭でよーく考えてみろ。この1ヶ月のお前を好きになるヤツがいるか? お前は今、これまで培ってきた信頼と好感度をものすごい勢いで消費してるぞ』


 誰が空っぽいじゃい!!


『空っぽだよ……いいか? 仲間が心配して、気にかけてるのに、当人は無視してエロいことを考えてるヤツをどう思う?』


 なにそいつ?

 クズやん。


『とあるグループが言い返せないのをいいことに悪口を言いまくってるヤツは?』


 最低だな。

 死ねばいいのに。


『彼女は彼氏に負い目があるから彼氏が悪いことをしても何も文句を言えない状況なのに、それに調子に乗っている彼氏は?』


 うっわー……

 引くわー……


『そんな彼女とヤルことしか頭にないバカは?』


 え?


 ……………………うん。

 まあ、良くはないかなー。


『そして、そんな彼女が必死に悩んでるのに、エロいことが出来ないで拗ねて、ふざけているバカは?』


 ……………………。


『何も言わず、隣を見な』


 俺はシロに言われて、そーっと、隣に座っているシズルを見る。


 シズルは俯き、泣きそうだ。


『最後に、そんな彼女を暗いヤツだなーって、笑うヤツについて、どう思う?』


 あれ?

 俺、ヤバくね?


『だいぶ前から、ヤバいぞ……』


 マズくね?

 

『だいぶ前から、マズいぞ……』


 あかんやん……


『だいぶ前から、あかんぞ……』


 ど、どうしよう!?


『ようやく目覚めたか……まあ、どうしようもないがな』


 え!?

 もうダメなん!?

 まだ、間に合うよね?


『ギリな。でも、かなり薄氷の上にいるから気をつけな』


 はい!!


 とはいえ、どうしよう…………


 そうだ!

 こんな時に役に立つヤツがいたわ!

 よし、あいつに助言を仰ごう!!





攻略のヒント

 エクスプローラの免許は、18歳以上から取得可能だが、特例として、ダンジョン学園に所属している学生はその限りではない。

 ただし、免許の発行は卒業後となる。

 

『エクスプローラ試験の手引き』より

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― 新着の感想 ―
[一言] 男に戻ったら付き合って→はい、の一か月後にもう女のままでとか言い出したら泣くよね
[一言] この性格に育ったのはこういう時にお姉さんが叱らないからでは…。まあ凹んだあとは明後日の解釈で反省しそうだけど(余計にややこしくなる)
[一言] 大丈夫だ、見捨てられたとしてもそこに漬け込んで百合子が助けてくれる。そう、慰めてくれる。(意味深)
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