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第29話「不思議な人ばかり」

 ふかふかのクッションのように柔らかい椅子に座っている俺は、とても車内とは思えない豪華な内装を横目に夜見さんを見つめていた。

 現在俺たちはリムジンで俺の家を目指しているのだが、なんとなく今の状況が腑に落ちないのだ。


「どうしたの?」


 視線を向けていると、たくさん椅子があるのになぜか俺の隣へと座っている夜見さんが不思議そうに俺の顔を見上げてきた。

 真珠のように大きな瞳には鏡のように俺の姿が映る。


「なんだか、ご機嫌ですね?」

「そう?」


 白いワンピースに身を包んでいる彼女は、右手で自身の髪を耳へとかけながら首を傾げた。

 結構めんどくさがり屋の彼女が外行き用の服に着替えている時点で既に違和感があるのだが、それ以上に彼女の口元がずっと笑みを浮かべるように緩んでいることが気になる。

 表情にあまり変化がない人だからわかりづらい人だけど、こんな表情をするのは凄く機嫌がいい時だけだ。


 いったい、何を企んでいるのやら……。


「そんなに警戒しなくても、別に君を取って食ったりしない」

「いえ、誰もそんな心配はしていませんよ。ただ……」

「ただ?」


 俺は言ってもいいのかどうか考える。


 彼女の場合俺が何を考えているのかわかっていながら聞いてくる事が多い。

 だからここで口にしてもしなくてもあまり変わらない気がするが、機嫌がいい今のような時だとはぐらさずに話してくれることもある。


 ダメ元で、聞いてみるか……。


「朝部屋に行った時、夜見さんの部屋の荷物が結構減っていませんでしたか? あれって――」

「乙女の部屋の物を確認しているなんて、一年会わないうちに頼人は変態になっていた」

「――っ!? ち、違いますよ! 職業柄周囲を観察する事や物の配置を覚えるのが身に付いてるだけで、変な意味で観察していたわけじゃないですから!」


 そんな恐れ多いこと、誰ができようか。

 いくら俺でも命知らずのようなことできるわけがない。


「言葉一つで簡単に誤解を受けるから気を付けるほうがいい」


 言うように促したの、夜見さんなのに……。


「というか、わかっててとぼけましたよね?」

「さて、なんのことやら」


 かわいらしく小首を傾げながら、飲みものを口へと含む夜見さん。

 答える気がないな、この人……。


「じぃーっ……」

「それで、メイドさんはメイドさんでなんで俺のことを見つめているんですか……?」


 いったい何があるのか。

 いつも夜見さんの傍に付いているメイドさんがジッと俺を見つめてきている。


 この人はメイドさんとして夜見さんの身の回りの世話をしている人だけど、話に聞く限りどうやら護衛として俺の後釜になった人らしい。


 優しい大人のお姉さんのような見た目をしている人で、見た目の可憐さだけを見れば腕が立つようには見えないが、身のこなしや隙のない立ち振る舞いを見るに相当腕が立つだろう。


 だから抜擢されたのはわかるが――この人、見た目とは裏腹に意外と歳は俺と夜見さんの一つ上なんだよな……。

 普通に二十歳くらいの大人にしか見えないのに、相変わらず天上院の人間は不思議な人ばかりだ。


「クロエはね、頼人に興味があるんだよ」

「きょ、興味?」

「うん、自分とどっちが強いのか腕試ししたいらしい」

「…………」


 うん、本当なんでこんな不思議な人ばかりなんだ、天上院の関係者は……。


「絶対に嫌です」


 俺は必要性に迫られない限り力は振るわないことにしている。

 だから断ったのだけど――よほど手合わせをしてみたかったのか、メイドさんはシュンとしてしまった。


「頼人、後でおしおきだから」

「理不尽すぎませんかね……?」


 俺はそんなやりとりを夜見さんとしながら、自分の家を目指すのだった。

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