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07.先に行けってセリフは状況次第では格好悪かった。

***前回のあらすじ***

俺は深夜に魔法が使えないか試してみた。結果。俺には魔法は使えないらしい。だよねー。チートの夢は途絶えた。大人しく自分に出来ることを頑張ろうと決めた俺だったが、いつもの様に薪を集めていたら、二股に別れた何の変哲もない枝を見つけた。けど、これパチンコになるんじゃないか?俺はその枝を使ってパチンコを作った。1本のパチンコをきっかけに、俺はアシュリーとちょっと仲良くなれた。

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※文字数2088字です(空白・改行含みません)

「そういやさ」


 あれ以来、俺とアシュリーはかなり仲良くなった。相変わらず文句を言われる事も多いが、一緒に身体を鍛えたりパチンコの練習をする時間が増えた気がする。何だか弟が出来た気分だ。今更だが、俺は隣を歩くアシュリーに尋ねてみることにした。


「あ?」

「俺たちってどこ向かってんの?」

「はぁ? 今更だな」


 アシュリーが呆れた様に言った。

 何となく聞く暇も無かったじゃん。最初の内は俺も言葉全然分からなくて必死でそれどころじゃなかったし。


「カザンスだよ。大きな&&%&#で俺たちの&%&@*があるんだ。後歩いて3日ってとこだな。もうじき@%$%#に出るよ。俺たちはお前に会ったあの森のもっと先にあるセバル&%#$$#$@#の帰り」


 ぐほぁ。やべぇ、聞き取れない単語がいっぱい出て来た。なんだって?


「待って、なんて?」

「あー……。行けば判る」


 やっぱそう来るか。大分言葉判る様になったと思ったんだけどなぁ。聞きなれない言葉は流石にまだ無理か。最近は普通に会話交わせるようになったし、俺も最近は頭の中で単語の意味考えなくても言ってる言葉が判る様になったし、大分流暢に話せるようになったと思っていたんだけど。

 でも、考えてみたらまだ数日だもんな。これだけしゃべれるようになっただけでも自分を褒めてやりたいくらいだ。


「&&%&#に付いたらお前のパチンコも改良しようぜ。もっと強い木かいっそ『アスィッダ』で作る方が良さそうかも」


 1個聞き取れた。アスィッダ、かな? 何かと思ったらアシュリーが自分の携えていたナイフを手にして刃の部分をこんこんと叩いて見せた。なるほど、鋼?鉄?兎に角金属って意味っぽい。


「でも鋼は高そうだよな」

「まぁ値段は高いけど、&&%&#に着いたら何とかなると思うよ」

「取りあえず硬い木探してみるか」


 兎に角今向かっている何処かに着けば何とかなるらしいが、俺はこっちの金持ってないし、多分その辺欲しがったらイング達の迷惑になる。俺は硬い木を使う方向で行く事にした。


***


「ユウヤ! ちょっと来いよ! こっち!」


 いつもの様に夕暮れが迫り、俺はいつもの様に薪を集めていた。イングとゴットは魚や獣なんかを取ってくる。取れない時は保存食の干し肉を齧る事になるが、今のところ食いっぱぐれたことは無い。

 俺はアシュリーに腕を掴まれて、枝を抱えたまま付いていく。


「なに、どうした?」


 アシュリーは得意げにニヤっと笑い、俺を一本の木の所へと案内する。ビアンカがいつものニコニコ笑みを浮かべてその木の下に立っていた。


「ビアンカまで。この木がどうかした?」

「硬い木だよ! この木の枝なら強いパチンコが作れるぞ」


 マジで?! 俺はビアンカを見やった。


「ああ。この木はシェスプと言って、馬車の車輪だとか、ベッドなんかにも使われるとても丈夫な樹なんだよ」


 俺はアシュリーを見やった。アシュリーがドヤ顔で俺を見た。徐に差し出された手を、俺はガッシと握った。


***


「おい、ユウヤ大丈夫か?! 頑張れ、もうちょっとだから……っ!」

「っく……っ、だ、だい、じょう、ぶだ……。アシュリー……。先に……先に、行けぇッ!」


 一度は言って見たかったセリフだが現状はとても格好悪かった。何故なら俺はシェプスの樹に張り付いてじたばたと樹によじ登っている最中だから。先に軽々と木の枝から枝に移り、上から俺を見下ろしてアシュリーがおろおろとしている。

 格好悪くても落ちれば死ななくても大怪我くらいは免れそうもない。それが判っているだろうから、アシュリーの声も結構マジだ。恐ろしくて下は見れないくらいには高い場所までじたじたと這い上ってきていた。


「だから下で待ってろつったのに……」

「俺のパチンコだぁぁ!」


 俺は顔を真っ赤にして、何とかアシュリーの居る枝の上まで身体を持ち上げた。手がぶるぶる痙攣する。木登りなんて何年ぶりだ?小学校の時以来だ。俺は幹に縋りついて息を整える。


「ユウヤ、見ろよ!」

「──わ……」


 凄い光景が広がっていた。

 遥か遠くまで一面にどこまでも続く森。遥か遠くに霞む山脈。何かの建物だろうか。塔の様なものが見える。大きな夕日が森を茜色に染め、空は美しいグラデーションに彩られている。まるで、絵画の様な光景だった。

 日本じゃ絶対に見れないだろう風景。俺は余りの美しさに、不覚にも感動で涙が出そうになる。


 俺とアシュリーは枝を取る目的も忘れ、その美しい光景に目を奪われていた。


***


「お前らほんっと何やってんだ……」

「も……申し訳ありません……」

「アシュリー、お前が付いていながら……」

「ごめんなさい……」


 ──結果。夕日が沈むまで二人で枝に腰かけて眺めていたら、暗くなってしまった。身動きが取れなくなった俺を、イングが迎えに来て、イングに背負われ木から降りている所。因みに枝はイングが剣で一刀、軽々と切り落としてくれた。落ちた枝は下でビアンカが抱えてくれている。


 ああ恥ずかしい……。お姫様抱っこじゃないだけマシだけど、もうすぐ17歳だっていうのにおんぶとは。涙出ちゃう。


***


その後木から下ろされた俺とアシュリーはたっぷりとイングのお説教を受けることになった。

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