04.言葉判らなくても現地に行くと覚えるってのは本当だった。
***前回のあらすじ***
目が覚めると、俺の傍には見知らぬ男たちがいた。どう見ても日本人じゃない彼らの言葉は全く分からなかった。しかも男の体には返り血と思しき血がべったり付いていた。ビビってしまった俺だったが、思いの外彼らは好意的で、飯をご馳走してくれたり、毛布を貸してくれたりした。どうやら面倒を見てくれるつもりらしい。俺は彼らの好意に甘えることにした。
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※文字数1953字です(空白・改行含みません)
「アルフェッタ」
「アルフェッタ アシュリー、#$@&%3@ユウヤ?」
「アルフェッタ イング、ユウヤ&%@、##@$&%@#!」
鳥の声と言葉の端々に聞こえる俺の名前に目が覚めた。
眠い目を擦って体を起こすと、俺に気づいたイングがにっかり笑みを向けてくれる。
アシュリーは機嫌が悪そうだ。俺を一瞥するなり苦虫を噛み潰した様な顔でチッと舌うちをしている。
何か俺は気に障るような事をしたらしい。だけどなんだ、チッって。朝っぱらから失礼なヤツだな。
「アルフェッタ ユウヤ、$#@&%$$@?」
相変わらず何て言ってんのかわかんないけど、アルフェッタってのは、聞き取れた。多分これ、『お早う』って意味っぽい。
「あ、アルフェッタ、イング!」
試しに使ってみるアルフェッタ。
「アルフェッタ」
「アルフェッタ、ユウヤ」
ゴッドとビアンカも挨拶を返してくれた。合ってたっぽい。へへへ。ちょっと嬉しい。
俺は掛けていた毛布を払い、綺麗に畳んでからイングの所に毛布を持って行った。
「イング、これありがと」
「ナーバナーバ」
今のは多分どういたしましてって事かな?イングが毛布を受け取り、サムズアップをして見せた。
「ユウヤ! %$#+&&$#@、&&#$%&%@*#!」
アシュリーが俺に向かってなんか言ってる。だからわかんねぇんだっての。俺が首を傾げていると、アシュリーがイラついたように俺に近づいて来てがしっと手首を掴み、ずんずん歩き出す。ちょ。何。アシュリーが進んだ先には川が流れていた。アシュリーがずいっと川を指さす。
「カー ザバ スビサレータ。テシテシテシ!」
な……、なんだ? カー? ザバ? スビ・・ テシテシテシ、これは早くしろって事っぽい。ニュアンス的には『早う早う早う!』って感じだ。
んん?っと俺がアシュリーを見ると、面倒そうに頭をガシガシしてから、アシュリーが今度は身振りを交えて伝えて来る。
「カー ザバ! テシ!」
ああ。とっとと顔洗えって意味か。多分カーが顔、ザバは洗えって意味かな?ザバって良いな、覚えやすい。
「あー、理解理解、わるいわるい」
むすったれた顔でずいっと顔を拭く布を付きだしてくるアシュリーから布を受け取ると、俺は顔を洗った。
「スビサレータ、テシ!」
行くぞと言う様にアシュリーが指で来い、と示してずんずんと戻っていく。俺は小走りに近づいて隣を歩いた。
「なぁ、アシュリー?」
不機嫌そうなアシュリーに俺は遠慮がちに声を掛ける。世話になっている身だ。謙虚に行かねば。
「あ?」
……そこは俺のとこと一緒なのね。
「スビサレータって何?」
なんとなくニュアンスは伝わったらしい。アシュリーは説明しようとして、口を開けたまま止まった。あー、と上を指さすようにしたまま考え込んでいる。上手く説明が出来ないらしい。我に返ったように無言で俺を睨むと、良いから来いと言う様にカモーンな仕草をした。
……そのうち判るだろう。
皆の元に戻ると、もう皆旅支度を整えていた。
「ユウヤ、アシュリー、スビサレータ」
またこれだ。スビサレータ。超気になる。皆は頷くと、イングを先頭に歩き出した。
あ。判ったかも。多分出発するぞ、みたいな意味だ。アシュリーがこれだよ、と言う様に俺を見た。確かにこれは身振り手振りじゃ説明しにくいかもしれない。俺は判ったという様に頷いて見せた。
少しずつ言葉が聞き取れる様になってきた。アルフェッタがお早う、ナーバはどういたしまして、カーは顔、 ザバは洗え、テシは早くで、スビサレータが出発。よしよしよし。何だか楽しいぞ。英語もこんな風に覚えりゃきっと楽しかっただろうに。
ビアンカが俺の隣を歩き出す。並んでみるとちっこいなー。140㎝くらいしかない。小太りだから余計にころんころんしてみえる。おばちゃんだが可愛いぞ。多分イングと同い年くらいかな。もう少し上かも。
ビアンカは歩きながら俺に言葉を教え始めた。俺は必死に頭の中に詰め込んでいく。何?は、『ステイ』。知りたいものを指さして、『ステイ?』って聞くとビアンカはお袋の様ににこにこ笑って教えてくれた。俺はちっちゃい子みたいにあれは何?これは何?と質問をしまくった。なるほどー。赤ん坊がこれいうのは、今の俺と同じような気持ちだったのかもしれない。言葉を覚えようとしていたのかも。そう考えると赤ん坊ってすげぇな。
日が暮れ始め、野宿の準備に入ると、イングに言われて薪を集めた。イングは身振り手振り交えて教えてくれるから分かりやすい。
枝はコット、拾うがスティード、ダーダが沢山、ラーレティが川って意味らしい。やべー。言葉覚えるの超楽しい。案外行けんじゃん。言葉通じなくても。
飯を食う時も皆が話している間も、俺は耳を欹てて、皆の言葉を吸収していった。数日後には、簡単な会話なら、ある程度なんて言ってるかが判る様になった。
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