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29.お前の様なやつにはやらん!

***前回のあらすじ***

俺とアシュリーが訓練をしていると、アシュリーの幼馴染ってやつがやってきた。こいつはアシュリーが好きっぽい。俺を敵対してきたから、俺は売られた喧嘩を買ってやることにした。

「うわぁ~……」


 朝っぱらからギルドに届けられた贈り物の山。全部アシュリー宛だ。当然贈り主は、昨日のアイツ。ちらっとアシュリーの顔を覗き見ると、苦虫を噛み潰した様な凄い顔をしていた。


「……なぁ。ラルフってどんなヤツ……?」


 ラルフは明らかにアシュリーが好きっぽい。そしてラルフは明らかに俺を敵対視している。これ見よがしな贈り物は、半分くらい俺への当てつけが入ってる気がしてムカムカしてくる。


「あー……。幼馴染なんだけどな。金持ちのボンボンで思い込みが激しいんだ。……に、しても、何なんだアイツ。散々俺の事みなしごって馬鹿にしてたくせに」


 ──ああ、そうか。そう言えば此処のチビ達も皆同じ境遇だったっけ。アシュリーも此処でこいつらと同じように育ったと言っていた。

 ラルフの家はこの街でもかなり大きな服飾店を営む商人の家らしい。幼い頃にギルドに引き取られたアシュリーは、ギルドに引き取られた子供達へ慈善事業の一環で寄付をしている親に連れられてきたラルフと出会ったのだそうだ。

 幼い頃からラルフはアシュリーにちょっかいを出し、みなしごと揶揄い、その度にビアンカに叱られていたんだそう。アシュリーはラルフに馬鹿にされるのが悔しくて、必死で腕を磨いたそうだ。


 話を聞いた感じだと、ラルフはあれか。好きな子程虐めちゃうタイプらしい。だけど少なくともアシュリーのこの顔見る限り、アシュリーの方は好意的とは思えないんだよな。そりゃそうだ。虐めている方は楽しくても、虐められて馬鹿にされて嬉しいヤツなんて居ないだろう。


「孤児なんて誰も貰ってくれないから面倒見てやるって言われたらさ。俺にだってプライドくらいはあるんだよ」


 ……不器用っつーか馬鹿なんだな。何となくわかった気がする。

 アシュリーは荷物を運んできた配達人に全部送り返す様に交渉をしに行った。


「ラルフもねぇ。悪い子じゃぁないんだけど、少しばかり己惚れ屋だからねぇ」


 俺の隣に来ていたビアンカがぽつりと漏らした。まぁ、可哀想なのかもしれないけど、宣戦布告してきたのは向こうだし、ラルフがアシュリーに向けた言葉が、例え悪気が無かったにせよ、俺様拗らせた馬鹿だったにせよ、俺は大分カチンと来ていた。

 そういう言葉で、アシュリーがどれだけ傷ついたんだろう。アシュリーのその時の気持ちを思うと、断固あんなヤツを認める気にはなれなかった。


***


「──ラルフは、まぁ結構モテるわけ。大きな装飾店のひとり息子だしさ。見た目も良いだろ? でも──。俺は嫌いとまでは行かないけど、困るんだよな」


 薪割をする俺の傍で、いつもの様に切った薪を仕舞いながら、アシュリーは眉を寄せた。


「別にラルフは俺の事好きってわけじゃないんだと思うよ。俺がアイツに靡かないのが気に入らないんだ」


 要するに、ラルフはリア充君らしい。大きな服飾店の商人の息子で、金持ちで、見た目も良くて跡取り息子だ。大抵アイツが甘い言葉を囁けばいちころらしいが、アシュリーはそういうので判断するような子じゃない。結果中々落とせないで居たアシュリーが、最近やってきた俺と常につるんでいるっていう噂でも入ったらしい。

 俺に対してのあの敵対心はそういう事か。よろしい、ならば戦争(クリーク)だ。受けて立ってやろう。

 まぁ、俺のってんじゃないけどさ。そう、多分あれだ。可愛い弟分をお前の様なやつにはやれん! みたいな心境だ。


「アシュリーは俺の相棒だからな。徹底的に邪魔してやる」

「頼もしいわ」


 俺が意気込んでそういうと、アシュリーは可笑しそうに笑った。


***


 昼前にラルフが花束を抱えてやって来た。アシュリーの顔が引きつっている。対するラルフは満面の笑みだ。


「アシュリー! 今日も愛らしいね。 俺の贈った贈り物は気に入らなかったかい?」


 ラルフはアシュリーの前まで来ると片膝を付いて両手に抱えた花束へと口づける。

 うわー。コイツ、ナルシストか。さぶいぼ立つわ。


「ちょ……。あのなラルフ。花束渡すなら他の女の子にやればいいだろ?」


 ドン引きしているアシュリーに気づかないのか、ラルフは陶酔しきった様に甘い笑みを浮かべてじりじりと近づいて行き、アシュリーはじりじりと後退をしていた。


「やきもちかい? 可愛いな。心配しなくても花を贈るのは君だけだよ。君の愛らしさの前ではこの花束も霞んでしまうけれど、俺の精一杯の気持ちだよ。どうか受け取ってくれないか」

「あ──、はいはいごくろーさん、どーもどーも」

「ああああああ!? 何をするんだ貴様!?」


 俺はサクサクと近づくと恭しく差し出された花束を、アシュリーの後ろから手を伸ばし、わっさと掴んで傍に居たガキンチョへとパスした。


「これどっかその辺の花瓶にいけといて。ハイ、花束は受け取った、帰れ帰れ」


 俺はシッシと手を振って見せる。


「このッ! 『落下物(フォルツェン)』 の分際で! それにあの花は貴様じゃなくアシュリーにやったんだ! そんな事も判らんのか!」

「あのな? 此処ギルドなわけ。俺達お仕事なの。ホイホイ来られても邪魔なの。俺ら金持ちのボンボン程暇じゃないの。お分かり? ほれ、帰れ」

「貴様ぁぁ……! 誰がこのギルドに寄付をしてやってると思って──」

「あん? 何? お前パパにでも泣きつくってか。 アシュリーに振られた腹いせにギルドへの援助止めてよぅーって? 良い年こいて恥ずかしくないわけ? あのなぁ、そんな真似するようなヤツにアシュリーが靡くとか本気で思ってるんだったらお前頭相当おめでたいぞ?」

「なっ……! 誰がするかそんな事! それに俺は振られてない!」

「そうか、少し見直したわ。んじゃ、アシュリー、エレナんとこいこーぜ。仕事仕事」

「お、おう──」


 アシュリーがおろおろしながら慌ててついて来る。当のラルフはちらっと見たらガキンチョsに群がられていた。ぎゃーぎゃー騒いでいるけどまぁ大丈夫だろう。

 ちょっとやり過ぎたかとか、可哀想な気もしない事も無いけれど、多分この程度でめげる様なヤツじゃないだろうなー。それに、俺がほんの少し見直したのも本当だ。


 一瞬しまったと思いはしたんだ。ラルフの家の寄付が無くなると、ギルドも困るんじゃないかって。俺が余計な喧嘩買ったせいで、ギルドが困る状況になるのは俺も困る。

 でも、アイツ、当たり前の様に『誰がするか』と答えていた。卑怯者じゃ無さそうだ。


 最初の印象は最悪だったけれど、今はそこまで嫌なヤツじゃないと思い始めていた。アイツの方は俺の事、多分大嫌いだろうけれど。

いつもご閲覧、誤字報告、ブクマ、評価 有難うございます! ただいま登場人物紹介ページ制作中です。

日曜日には出来上がるかな。キャラクターが増えて来て誰じゃとなってそうですが、もう少しお待ちください。次回の更新は明日になります。

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