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23.ファンタジーじゃ無いんだ。

***前回のあらすじ***

俺はイング達と共に初の魔物討伐へと向かった。初心者向けと聞いていたが、想像以上に手ごわい。俺は持ってきていたスマホを使い、魔物の討伐に一役買う事が出来たが、スマホの充電はそこで切れてしまった。

 倒した魔物は、ビアンカによって浄化される。そのまま放置すると、魔物の毒素によって森が腐ってしまうのだそうだ。腐った森は毒を帯びる。浄化をされた魔物の体内からは結晶が取れ、取れた結晶からは魔具と呼ばれるマジックアイテムが作られるらしいが、馬鹿みたいに高いらしい。俺達が倒したバラガから取れる結晶は小指の先ほどの小さな真っ黒い石だった。浄化され結晶を抜き取られれば、魔物の身体は森に住む獣の餌となり、後は森に還るらしい。


 戦闘の間、後ろに居たビアンカを、俺はてっきり介護要員だと思っていたけれど、こっちが本当の役目らしい。道理でしょっちゅう討伐の依頼で出かけていると思ったらそういう事か。おばちゃんなのに凄い。ビアンカが浄化の詠唱を紡ぐと、周囲にふわりと光の粒が舞った。まるで蛍みたいだ。……いや、蛍も本物見たことないんだけどさ。凄く幻想的で綺麗だ。ビアンカが紡ぐ詠唱がまるでレクイエムの様に聞こえる。血なまぐさい光景の筈なのに、妙に厳かで神秘的な光景だった。


 俺はアシュリーと並んで岩に腰を下ろして、その光景を眺めて居た。


「初めてお前に遭った時は、あれより弱い魔物にビビりまくって腰抜かしてたんだよなぁ」

「あ、やっぱバラガよりもあれの方が弱かったんだ? あの時は皆あっという間にやっつけてたけど、バラガはちょっと苦戦した印象だったから」

「あ? この程度は苦戦の内には入んないぞ? あのな、ユウヤ。相手は魔物だぞ? そんな簡単にぽんぽん倒せるなら俺らみたいな仕事が成り立つわけないじゃん」

「ぁ、そうか」


 言われて気づいた。 苦戦してると感じたけれど、当たり前に考えて、俺らの世界だって銃を持っていても1匹の獣を倒すのに何人も警官だの猟友会だのの人が駆けまわって、やっとの事で倒しているのを見たことがあった。例えば、風景だったり、言葉だったり、アシュリーの水色の髪だったり、魔法があったり、魔物が居たりして、明らかに俺の世界とは異なるけれど、生活をしてみるとよくわかる。ずっと、ファンタジーの世界に来たんだと思ってた。剣と魔法の世界には、違いなかったんだけど。

 俺は海外とか行ったことがないけど、多分海外に体1つで移住とかする感覚に似ているのかもしれない。此処は、ファンタジーの世界じゃないんだ。物語の世界じゃない。普通に、俺の住んでいた世界と同じ、もう一つの現実なんだよな。


 ゲームみたいに1発で楽勝に倒せる程、現実が甘い筈は無かった。そんなに簡単な筈はない。簡単じゃないから、こういう依頼がギルドに来て、ギルドが専門家を派遣しているわけだから。専門家だから楽勝かって言えば、そんなわけでも無かった。どんな仕事だって、多少の苦労はつきものだって事くらいは流石の俺でも判る。

 俺みたいな初心者から見れば苦戦に感じても、言われてみれば皆冷静だった気がする。危険ではあっても、一撃で倒せなくても、ちゃんと勝算はあったんだろう。

 慌てて焦ってたのは新米の俺だけだ。

 俺は皆の危機に貢献できたつもりだったけれど、そもそもイング達はCランク以上の討伐を請け負ったこともある猛者だ。簡単じゃ無くても、多少怪我とかしたとしても、それは想定内だろう。Fランクにそこまで危機的状況になるほど素人じゃなかったんだ。終わってみれば、まだ戦闘開始してから1時間も経って居ない。


……うぁー。大分恥ずかしい。テンパって焦った挙句に貴重なスマホの電源を使い切ってしまった。なんかスマホに申し訳なくなってきた。ごめんな。ポンコツな持ち主で……。


 「ユウヤ、アシュリー。任務完了だ。帰るぞ!」


 イングに呼ばれて立ち上がる。アシュリーが悪戯っぽくにしし、っと笑って俺の背中をばんっと叩いて駆け出した。浄化が済んで核も入手したから討伐任務は完了だ。俺はアシュリーの後を追ってイングの方へと駆けだした。


***

 大分テンパってしまったけれど、初めての魔物討伐は上手く行った。イングがこれならやれそうだなと太鼓判を押してくれて、俺は少しほっとした。

 本音を言えば、魔物相手でも血を見るのは嫌いだ。どうしても可哀想だの残酷だの、甘っちょろい考えが脳裏に浮かんでしまう。

 その度に俺は、イングに言われた言葉を復唱した。


 『命の重さを忘れるな。格好悪くて良い。情けなくて良い。死を恐れろ。その怖さを忘れるな。目を背けるな。受け止めて、前に進め』


 恐怖も罪悪感も消えはしないけど、イングの言葉は、ちゃんと俺が向き合えている、大丈夫だと言ってくれてる、そう感じた。俺はこのままで、良いんだ。きっと。イングにもう一度問われる。


「ユウヤ。どうする? 今後も討伐の依頼、やれるか?」

「やれます」


 俺はしっかりと、頷いた。もう迷いは浮かばなかった。


 道すがらに、イングが今後の討伐の話をしてくれた。この世界では、魔物も害獣駆除みたいな位置づけらしい。割と頻繁にギルドへ討伐以来が舞い込んでくる。魔物はそれぞれクラスが付けられ、Gランクまである中でFランクまでは初心者向け。今回の討伐の対象だったバラガがFランク。魔力を持たず、飛ぶとかも無くてそこまで早くも無い、頑張れば一般人がシャベルやツルハシ武器に倒せるレベル。

 Dランク、Eランクになると難易度が上がる。翼があって空を飛んだり、木々の間を高速で駆け抜けたり、死なない程度の毒を持って居たりする。

 Cランク以上になると規模がヤバかったり、サイズが凄かったり、魔力を使うヤツだったり毒を吐いたり、ファイアーぶっ放してきたり電撃放ったり、コカトリスみたいなのもいるらしい。

 ただしCランク以上はレア。Aランクになると俺達一般人に仕事が回ってくることは無いらしい。此処に来るともう伝説級になるそうだ。つまるところ国から派遣されるハイスペックの精鋭の仕事なのだそうだ。ひょっとしてひょっとすると、ドラゴンなんかも居たりするんだろうか。洒落にならないんだろうけど、遠目で良いから1度でも見てみたいなぁ。リアルのドラゴン……。

 ちょっと明日にでもトッドに図鑑見せて貰ってドラゴンが居るのか確認しよう。きっとハイパーレア過ぎてお目にかかるのはまず無理だろうけれど。

 俺は当面、Fランクまでの依頼をこなす事になるらしい。イングとゴッド、ビアンカはBランクまでこなしたことがあり、アシュリーとクロード、キリクはCランクまでこなした事があるそうだ。


「他の連中は?」


 ふと疑問に思った。ギルド、結構人は居たよな?他の連中って何しているんだろう。


「20人くらいかな。別の仕事してるよ。ホセもそうだろ? ホセの所に後3人鍛冶職人がいる。薬師が3人。占者だったり、鑑定士だったり、ガキ共の世話をする奴だったり料理人だったり、そういうギルド内の仕事に就いてるヤツもいるよ。討伐は此処にいるイングにゴッド、俺にクロード、キリクに、ビアンカ、エルザ、他に5人くらい居る。討伐以外の依頼を受けるヤツも居るけどね。以前農場の手伝いに同行したフーゴなんかは討伐以外の依頼専門だな」


 あー、なるほど。思ったよりも戦闘メインの冒険者?っていうのかな。そういうヤツは少ないっぽい。アシュリーがケラっと笑う。


「心配しなくてもギルド同士で連携も取ってるからさ。うちで受けられない場合は他のギルドに回すこともあるし、共戦することもあるんだ」

「そういうわけでうちは戦闘要員が少ないからな。大体組むのはこのメンバーになるって事だ。良く組む相手の方が癖も覚えるし連携も取りやすいだろう? 心配しなくてもお前にいきなりCランクの仕事をやれとは言わないさ」


 なるほどな。俺がポンコツだからあえて当ててくれているわけじゃなかったのか。良かった。慢心しない様にしよう。取りあえず、今日の討伐の教訓活かして明日から特訓しないと。今日みたいな調子じゃ全然だめだ。乱戦になるとイングとかに当たりそうで打てなくなる。不規則に動き回られると途端に当たらなくなる。乱戦になった途端動けないんじゃ何の役にも立てない。もっと命中率を上げて、乱戦になっても味方を巻き込まない、これが出来ないと大迷惑だ。


「なぁ、アシュリー。命中率とかさ。精度上げるのってどうすりゃいいと思う?」

「そうだなぁ……。良い方法が無くも無いな。明日早速やってみるか」

「……ああ、うん、頼む……よ?」


 なんか一瞬アシュリーの浮かべた笑みが何か企んでいる気がして、思わず疑問形になってしまった。

いつもご閲覧有難うございます! 次回の更新は明日になります。

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