19.初仕事!
***前回のあらすじ***
俺はギルドの連中に、日本語のいただきますの意味を教えた。生きると言うのは命を頂くことだ。俺はクロードに勧められ、初めて自分の意思で命を狩った。
「ユウヤ。今日から簡単な依頼を受けて貰うよ」
朝、イングにそう声を掛けられた。俺は気持ちがピリっと引き締まる。
「はい!」
「飯が終わったらエルナの所に行きな。そこで仕事を回してくれるから」
「判りました! ……アシュリーは?お前どうすんの?」
「俺はもうちょい難易度高い仕事だよ。今日から討伐で暫く留守になるな」
「あ、そうなんだ……」
何気にここ最近はずっとアシュリーと一緒に行動してたからちょっと──
「何?ユウヤ俺が居ないと寂しいの?」
──寂しかねーよ全然。
「ばぁーか。気を付けて行って来いよ」
俺がアシュリーの頭をくしゃくしゃ撫でると、アシュリーから拳固が飛んできた。何でだ。
***
「それじゃあねぇ、今日ユウヤに任せられるのは、この辺になるわね」
受付嬢のエルナに声を掛けると、エルナはおっとりとした口調で俺の前に3枚の依頼書が並べた。1枚は薬草の採取。2枚目は探し物。3枚目は農場の柵を直す仕事。
1枚目と2枚目は結構難しそうだ。3枚目の農場の柵は、薪割をしてたから行けそうな気がする。
「それじゃ、これで」
俺は農場の仕事を指さす。
「これね? それじゃ、こっちが農場までの地図。報酬はこのくらい」
高いのか安いのかいまいち判らないけれど、多分大体時給700円くらいってところか。大分安いけど仕事の内容からしてそのくらいなんだろう。でも、やっと仕事らしい仕事が出来る。今まではニートみたいな生活だったもんな。薪割だの狩りだのはしてたけど、それは全部ギルド内の仕事だ。初の依頼。頑張るぞ。報酬は仕事が終わってからの支給になるらしい。
「それからねぇ」
エルナが蓋を開けた箱を取り出して俺の前に置いた。ドッグタグっぽいペンダントだ。ギルドのマークが刻まれている。
「これ、ユウヤのギルド証ね。首から下げて置いて頂戴」
おおお──! 結構おしゃれだ。裏を見ると、ユウヤ=デュオフォルツェンと刻まれていた。えへへへへ。俺は箱からギルド証を受け取り首から下げる。たったこれだけでギルドの一員!って感じがして嬉しい。
「今日は初めての依頼だから、人を一人付けるわねぇ。フーゴ、彼お願いー」
「おー」
フーゴと呼ばれたのは、壮年の男だ。良く日に焼けた肌に、口髭を生、白髪が混じった黒髪を後ろで1つに束ねている。渋い。
「宜しくお願いします!」
俺が頭を下げると、フーゴがくしゃっと目尻に皺を寄せて笑った。何か良いな。少し親父を思い出す。
「それじゃ行くか」
「はい! エルナさん行ってきます!」
「頑張ってねぇ」
俺はエルナさんに手を振ってから、フーゴと一緒にギルドを出た。
***
「じゃ、地図を見ながらまずは農場に向かってみな」
「はい!」
俺は言われた通りに地図を見ながら農場を目指す。街を外れ、農場や畑があるエリアへ入った。俺の知っている畑とは大分イメージが違う。日本の畑って、こう、綺麗に雑草が抜かれて綺麗に並んでる感じだけど、この世界の畑は何て言うか、野性味が凄い。一見空き地か?って思うくらいに雑。雑草がわさわさ茂ってる。野菜の畑は一応綺麗に並んではいるんだけど、これ雑草抜かなくて大丈夫なのか?アバウトだなー。
目的の農場までは2時間くらい歩いたところにあった。小高い丘を超えた先にあってかなり広い。アメリカの牧場とかこんな感じかなってイメージ。青々とした牧草が茂って、馬や牛やヤクが放牧されている。木造の家があって、そこが今回の依頼主らしい。俺はフーゴと一緒に依頼主の家に向かった。
「どうも。ジルヴラヴィフ・ヴェントのフーゴと……」
フーゴが俺をちらっと見る。
「ユウヤです。今日はよろしくお願いします!」
「ああ、異国の人かい?珍しいね。今日はよろしく頼むよ」
依頼主のアルテンさんは人の好さそうなおじいちゃんだった。俺は早速仕事に取り掛かる。柵の修理のやり方をまずはフーゴに教わって、それから先は俺が1人で仕事をこなす。先に古い杭をシャベルを使って抜いて、新しい杭をハンマーを使って打ち込んでいく。結構な重労働だ。こっちに来て直ぐの頃だったら多分出来なかったかも。薪割様様だ。杭を打ち込むコツは薪割と殆ど一緒だった。俄然日本人魂に火が付く。俺は出来るだけ丁寧に柵を作っていった。グラつかないように、均等に。この柵はアルテンじいちゃんにとっての命綱だろうから。邪魔な蔓草も綺麗に毟って見た目も綺麗に仕上げていく。フーゴが満足そうに頷いた。
「ユウヤは仕事が丁寧だな。これなら安心して任せられそうだ」
フーゴにそう言われて、俺は凄く嬉しかった。仕事が終わったら、依頼主に確認して貰う。アルテンじいちゃんは目尻に皺をいっぱい寄せて凄く気に入ってくれた様だ。帰りに持っていきなとヤクの乳で作ったバターを持たせてくれた。
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