表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/60

13.薪割は筋トレに最高だと思った。

***前回のあらすじ***

俺はギルドの最初の仕事を任された。言わば雑用係だ。掃除に洗濯、水汲みに薪割。そのくらいなら余裕って思った俺だけど、実際やってみたらきついのなんの。昔の人ってこういう生活してたんだよな。昔の人ってパねぇと思ったけれど、此処は昔じゃない。Nowだ。俺も此処でそういう生活をしていくことになるんだ。此処には電気もガスも水道も無いんだから。一通り雑用を終えた俺は、精魂尽き果ててしまった。

 雑用係任命から1週間。やった! やったぞ!! 俺はついにやり遂げたんだ!! 俺の脳内に昔の某ボクシング映画のテーマ曲が高らかに鳴り響く。うぉぉぉぉー!


「あー、うん。お前にしては良く頑張ったと思うよ……」

「貴族のボンボン並みのひ弱さだよな……。ちび共でももっとマシに働くぞ?」


 ……っく。判ってるよ。そういうなよ。でも本当にきつかったんだよ……。慰める様にイングが俺の肩をぽんっとする。なんか余計に惨めになるんだよなぁ。


「取り合えず雑用お疲れさん。次の雑用係までは、当面お前は簡単な依頼は熟して貰うけどそれ以外は勉強と訓練だな」

「簡単な仕事ってどんなの?」

「掃除だの探し物だの届け物だの薬草の採取だの、だな」


 それなら何とかできそうだ。うん、と俺は頷いた。普段は午前中に勉強して、午後から体を鍛えたり俺の武器になるスリングの練習に費やせばいいらしい。勉強は子供たちと一緒に受けることになるっぽい。……お子様に混じってか。結構辛い所があるけど、俺は文字も殆ど読めないし書けない。まだまだ知らない言葉も多いし、俺だけ特別にしてと言えるわけも無い。寧ろお子様の方が俺より上だろう。止む無し。


「ああ、そうだ。ホセが呼んでたよ。多分パチンコ?スリング?が、出来たっぽい」

「マジで?行く!」


 俺はアシュリーと一緒に駆け出した。


***


「よう、ユウヤ! 出来てるぜ!」


 汗だくのホセが俺を見てにっかりと笑った。ホセが脇に置いていた布に包まれたものを取ってテーブルに乗せ、布を解いていく。俺をアシュリーはそれをガン見した。


「「おぉ──────!!」」


 現れたスリングは、めちゃくちゃ恰好良かった。握りの所はちゃんと指の形に窪みがつけられ、滑り止めの革がきっちりと巻かれて、シルバーのビスで留めてある。二股に別れた発射台の部分は短めで、艶のある黒い金属製。左右に2本ずつ白い魔物から取ったゴムが取り付けられていて、弾を宛がう所に革が付けられ、腕を支える台が付いている。ベルトに装着できるように革製のケースまで作ってくれていた。グリップのすぐ上の金属部分には、ギルドの文様、翼の生えた剣が刻まれている。その脇に何か文字が刻まれていた。アシュリーがのぞき込む。


「ジルヴラヴィフ・ヴェント、ユウヤ=デュオフォルツェン 神の命により異世界より参上」


 俺は赤面してしまった。うっはぁ。すげぇ中二病感漂うけど嬉しい。


「ありがとう、ホセ!」


 俺が礼を言うと、ホセは焼けた肌に似合う真っ白い歯を覗かせて笑った。


***


 翌朝から、俺は子供たちに交じって食堂で勉強を始めた。文字が読めると出来る仕事も増えて来るらしい。ガキンチョに交じって真顔で勉強する俺を横を通り過ぎていく連中が微笑まし気に笑って見ていたが、俺は結構マジでお勉強。講師をしてくれたニーナの勧めで最初は絵本みたいなやつから、少しずつ分厚い本にシフトして、文字もひたすら書きまくった。そのまま文字だけ書いてもつまらないから、俺は思い立って小説風に書いてみることにした。これならモチベも上がるだろう。ニーナにもガンガン質問して、俺はこの世界の事を覚えていった。


 俺が文字や言葉を覚えると、イングがここでの仕事を色々と教えてくれた。最初の内は薬草採取だのの簡単な仕事を。それから獣の討伐などの難易度の高めの仕事を。これに慣れれば魔物の討伐、更にこれがこなせるようになるとダンジョンに籠ったり、塔での討伐なんかが加わって、最終的に護衛の仕事が出来る様になって一人前になるらしい。先が長い。


 やっと終わったと思ったけど、俺は自分から頼み込んで薪割や水汲みを手伝わせて貰う事にした。身体もしっかり鍛えて、それが日常でいつも通りだって思えるくらいになりたくなった。根性無いし、直ぐにサボりたくなるところがあるんだ。油断すると俺は自分に甘くなる自覚があるから、あえて自分に厳しめに行く事にした。宣言することで自分を追い込んでサボれないようにした。

 アシュリーは相変わらず、自分の仕事の合間に俺の所に来ては、一緒に筋トレやスリングの練習に付き合ってくれた。


***


 あれから俺は毎日欠かさず薪割と水汲みを続けている。気づいたら薪割と水汲みは俺の仕事になっていた。釈然としない事も無いけど、俺も半ば無意識に、朝起きたら歯を磨くのと同じくらい、自然と薪割と水汲みするのが日課になっていた。

 最初の内は2本になったスリングのゴムが中々引けなかったけれど、これもコツを覚えて引ける様になった。威力も段違いに上がった気がする。


「ユウヤ、最近体力付いて来たな」


 アシュリーに言われて、俺はちょっと嬉しくなった。なんと!あれから毎日薪割と水汲みを続けた結果、俺の筋肉どこじゃになっていた貧相な腹筋は見事なシックスパックになっていた。前にビアンカが軽々薪を割っていたけど、確かにコツがあって、コツを掴むと殆ど力が要らなくなったんだよね。今では俺の薪も結構綺麗に割れる様になった。薪割ってどうも全身の筋肉を使っているらしく、俺は全体的に随分引き締まった感じになっていて、鏡を見るとニヤけるくらいイケてると思う。気のせいか顔までシュっとした気がする。


「まぁな、薪割も水汲みも続けてるから」


 俺はぐっと力こぶを作って見せた。前はへなちょこだった力こぶ、今はガチっと綺麗に出てる。


「んじゃ、トレーニングもうちょい厳しいやつに変えるか」


 ……やぶへびだった。

ご閲覧・評価・ブクマ 有難うございます! 次の更新は明日の夜になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ