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12.昔の人ってパねぇと思った。

***前回のあらすじ***

俺とアシュリーは翌朝ギルド内で鍛冶職人をしているホセの元に向かった。ホセが俺のパチンコ改めスリングを作ってくれるらしい。ホセがスリングを作ってくれている間に、俺はアシュリーとスリングの弾を作ることにした。俺たちがしている事が珍しいみたいで、ギルドのオッサン連中が俺の弾作りを手伝ってくれる。皆でこれはどうやる?こういうのどう?なんてやってると、何だか文化祭みたいで楽しかった。気づけば俺のスリングの弾は大量に出来上がっていた。

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※文字数2519字です(空白・改行含みません)

「ユウヤーッ! おっきろぉ──っ!」

「そう毎回食らうかぁ──っ!」


 朝。襲撃を仕掛けて来たアシュリーに扉の開く音で目が覚めた俺はすかさず毛布を掴んで投げて反撃をする。毛布が直撃したアシュリーはうわっぷと声を上げてその場にコケた。ざまぁ。


「ちっ。ユウヤつまんねー」

「うるせー、毎朝腹に肘鉄食らって溜まるか」


 俺はもそもそベッドから這い出す。あれから俺は街で服も購入し、ジャージは現在部屋着に格下げされた。流石に目立つんだよな。この世界でジャージ。着替えを済ませてアシュリーと食堂に向かう。俺が食堂に着くと、向かい側にイングが腰を下ろした。アシュリーが気を利かせて俺の分の飯も取ってきてくれるらしい。


「今日から少しずつ仕事して貰うからな。まずは雑用からやってみな。此処では雑用は1週間交代になる」

「雑用ってどんな事すんの?」

「薪割だの水汲みだの選択だの調理場の手伝いだの掃除だのだな」


 ああ、そうか。流石にガス水道は無いか。洗濯はやっぱ洗濯板でごしごしすんのかな。


「初日はあたしが付いてて上げるからね」

「あ、おはよ、ビアンカ。うん、宜しくお願いします」

「あいよ。それじゃ、食事が済んだら洗濯から始めようね」


 良かった。知らない人に教わるのは少し緊張するから、ビアンカに教わるのは助かる。俺はちゃっちゃか食事を済ませた。アシュリーは今日は別の仕事が入っているらしい。数日ぶりのアーチャー装備でゴッドと一緒に駆けて行った。


 まずは洗い場の脇の物置に向かう。そこから大きな籠を出し、ビアンカと一緒に各部屋を回る。部屋の前にはシーツだの汚れた服だのが置かれていて、俺はそれを籠に入れていく。


「下着なんかはどうしてんの?」

「男が当番の時は男どもは洗い物に出してくるけど基本は皆自分で洗ってるね」


 流石に女性もいるからなー。ヤロウ同士なら構わないってわけか。幸い今日はビアンカが一緒だからか、オッサンのパンツ洗う苦行は免れた。一通り部屋を回ると籠はあっという間にいっぱいになった。もう1~2回回らないと駄目だなこれは。俺は籠を抱えてビアンカに付いて洗い場に行く。洗い場には用水路みたいな石造りで水が引いてあって、洗濯板みたいなのが置かれていた。俺はビアンカと話をしながらガンガン洗っていく。これ結構きついな。特にシーツ。デカいよ。何枚あるんだよ。洗濯機が恋しい。日本って便利だったんだなぁ、今思うと。これもコツがあるらしく、ビアンカはサクサク洗って絞って籠に積んでいっている。おばちゃんのビアンカがケロッとしてやってるのに男の俺が音を上げて溜まるか。俺は汗だくになりながらなんとか洗濯を終えた。


 が、当然これで終わりじゃない。今度は木と木の間に張った紐に洗った洗濯物を干していく。洗剤のCMにありそうな白いシーツが何枚も風に靡く様は見ている分には気持ちが良いが、あれ再現するとなると結構大変だった。何せ水を含んだシーツがクソ重い。綺麗に皺を伸ばして、結構高い位置に張られた紐引っ掛けていくんだが、シーツってデカいじゃん。油断してると地面に付いちゃうんだよ。そうなったら洗い直しの刑が待っている。雑用って聞いて舐めてた。洗濯が終わると掃除。でもこれは案外大丈夫だ。小学校の時の掃除で慣れてるぞ。

 掃除を終えると薪割。……マジかこれ。斧ってめっちゃ重い。更に刃物。すげぇ怖い。頭の上に落としたら死んじゃうじゃないか。昔の人ハンパねぇ。毎日じゃないんだろうけど、風呂も竈も薪使ってたんだよな? 皆こんな事してたの? マジで? 全然割れねぇ!


「もっとこう、腰を落として、こうやって……こうだよ」


 コーン、っと良い音がして薪が真っ二つに割れた。……ビアンカねーさん凄いっす。尊敬するわマジで。コイツも慣れれば直ぐに出来る様になると言われたけど、俺は早くも心が折れそうだった。ヒィヒィ言いながらなんとか不格好ながらも薪を切っていく。あっという間に手が豆だらけになった。


 しかもこれだけじゃない。終わると今度は調理場だ。井戸まで行って水を汲み、それを桶に移して中に運び込む。桶自体が重いんだよ。バケツなんかとはわけが違う。それに水をたっぷり入れて運ぶと、相当重い。それを何往復もしなくちゃいけないんだ。手の皮が剥けて痛い。やっと水汲みが終わったと思ったら今度は竈に薪をくべて火を起こす。すげー熱い。煙で咽る。雑用って思いの外重労働だった。……なぁ、昔の人ってマジでこんな生活してたの? こういうの毎日の様にやってそれプラス仕事もしてたんだよな? 畑仕事だとか。 子供とかもそれやってたんだろ? いや、昔の人だけじゃないか。此処の連中はこれが日常なんだ。昔の話じゃなく『now』だ。俺は現代人のひ弱さを痛感した。1日が終わった頃には、俺はもうヘロヘロだった。


「お前それは幾らなんでも貧弱すぎだろ」


 疲れ過ぎて飯も食えない俺はノロノロとジャガイモをすりおろしたスープだけ貰った。あああああ、美味いよおぉぉぉ。アシュリーに呆れた様に言われても文句1つ言い返せない。何せ女性でおばちゃんのビアンカはケロっとしているのだから。対して俺は腕も足もぱんぱんだ。スプーン持ち上げるのも辛いくらいに腕が痛い。しかも両手はズル剥けて包帯でぐるぐる巻き状態。情けねぇ。


「仕方がないだろ、日本って国は全自動社会だったんだよ、ドア開けるのも近づけば勝手にドア開くし指でボタン押すだけで火が付くし蛇口捻れば水も出ればお湯も出るしボタン押せば洗濯から乾燥まで全部やってくれるんだよ、掃除だってスイッチ入れれば勝手にうろうろして掃除してくれるんだよ、階段だって自動で上まで運んでくれるし場所によっては道も自動で動くんだよ」


 ……文句は言えないが代わりに言い訳をして、自分で言ってて、うわ日本すげぇ、マジでSFみたいだと思った。


 まぁ、日本の凄さを今さら実感した所で、此処には火を起こすには薪が必要だし蛇口も無いし全自動洗濯乾燥機も無いんだ。外に放り出されれば俺みたいなモヤシ生きていける気がしない。しかもこれで雑用。きついとか泣き言言ってても仕方がないんだ。一週間、なんとしてもやりきらねば。


 俺は飯だけ食うと早々に部屋に戻り、泥の様に眠った。


ご閲覧 有難うございます! 次は明日の更新になります。

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