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作者: 雅樂 多祢

これはきっと夏のせい。

いつもどおりの制服姿なのにどこか魅力的に映るのも。

花火をみている君の横顔から、目がそらせないのも。

それはきっと夏のせいだ。


学校帰りに立ち寄った地元の小規模な花火大会。

楓と一緒に来たのははじめてなんかじゃない。

そのはずなのに。

僕はどうしてこんなにも取り乱すのか。


思い出されるのはあの雨の日。

いつもの何気ないノリの、楓の問いかけ。

「私達の関係って何だろうね?」


僕は気づかなかった。

彼女の目がいつも以上に真剣な色を帯びていたことを。

返答を待つ間、怖くて肩がかすかに震えていたことを。


僕の答えをきいた彼女は急用を思い出したといって逃げるように立ち去った。

その時になってようやく僕は、僕がしたことの罪深さを知ったんだ。


そんなことがあっても、変わらず僕たちは幼なじみを続けている。

だが、今の僕はあの日のように、楓との関係を断言することはできないだろう。

だけどそれはきっと恋なんかじゃない。

そんな美しいものでは決してない。

もっと唾棄すべきことであると、僕は知っている。


風船のように頬を膨らませながらたこ焼きを食べまくる楓。

その姿は昔飼っていたハムスターを思い出させた。

可愛い―なんて。

そんな言葉を軽々しく使うことは許されない。

もう彼女のあんなにつらそうな顔は見たくないから。


けどそれだけの同情心で彼女の心を縛る僕は一体何なんなんだろうか。


これからも変わることのない二人の関係。

こんなものが本物じゃないことは僕にもわかる。

これは楓を傷つけないことを免罪符に作ったまがいもの。

だけど僕はこの偽りの関係から踏み出せない。



花火大会が終わり、あっという間に夏は過ぎ去った。

新学期が始まって、軽やかに学校生活は進んでいった。

だけどあの日から止まった二人の時計は動かない。

ただただ、鈍い悲鳴をあげ続けるだけ。


僕は今日も変われない。彼女を縛り続ける鎖のままだ。



読んでいただきありがとうございました。

久しぶりのワンドロ作品でした。

率直な意見を貰えると素直に嬉しいです!


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