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奴は腹黒です

「アレックス様!?」


 ん? なんだ? 

 この偉そうなマルコってやつもアレクには頭が上がらないのか?

 アレクってよっぽどどっかの偉いさんなのか?

 そう言えば名字でなんだっけ?

 ……思い出せない。なんて言ったっけ? なんか聞いた事ある名字だったけど。


 覚えているのは、リノア=アーネスト、セリス=ウォーターフォード、そしてシリウス=ブラックという事だけだ。

 女の子二人の名前は、覚えないといけないと思っていたから覚えている。


 アレクの名前を聞いた時も、何か引っかかる物があったけど、それを考えているうちにきた『シリウス=ブラック』に俺の頭は埋め尽くされてアレクの名字は消えてしまった。


 『シリウス=ブラック』その名前を聞いた瞬間、某魔法使いの小説を思い出してしまい、まさか、自分はその世界にやってきたんじゃないかと思って一人ウケてしまった。

 でも、よくよく考えて生徒は列車でこの学校に来たわけじゃないし違うだろうという結論に至った。


 まぁ、その際に一人で『ぷっ』と笑ってしまってシリウスに睨まれたりしたけど、誤解だ、冤罪だ。

 俺は別にシリウスの事で笑った訳じゃない。……いや、正確にシリウスの名前で笑ったけど、シリウス自体を笑った訳じゃない。


 という事で俺はアレクの名字を知らないけど、どうやらアレクの家柄はハードラ家という家より上らしい。


「マルコよ。どうせ戦うなら、みんなの前で堂々戦ったらどうだ?」

「し、しかし……」

「それともハードラ家は、正々堂々戦う事をしない家なのか?」


 うわ~……アレクの奴もえげつない言い方するな。

 しかも、顔は真面目に戻して言ってるけど、口元笑ってるし。あいつ絶対性格悪いな。

 あんな立場が上の家からあんな言い方されたら、断るに断れないじゃん。っていうか勝手に話進んで、俺巻き込まれてない!?

 

「くっ……分かりました。決闘致しましょう」

「よし、決まりだな。シリウス手配闘技場の手配を頼む」

「本当にするのですか……分かりました」

 

 そう言ってシリウスは、渋々と言った感じで踵を返しどっかに向かって歩き出した。

 そうか、決闘しないといけないのか。

 って、えっ? 俺の意向の確認は!?


 「おいおいアレク!! 俺は決闘するなんて一言も言ってないぞ!! それに決闘って何なんだよ!?」

 「おい! おまえアレックス様に向かって――!!」

 「マルコ、いいんだ。それよりライト、おまえオリエンテーションちゃんと聞いてなかったのか?」


 オリエンテーション?

 あ~……一度学校行ってたし、寮生活も問題ないと思ったし、授業の話もおおまかな流れは一緒だったから、頭の中でこれからの学園生活に夢膨らませり、シリウス=ブラックの名前を思い出しては、蒸し返すようにちょっと笑ったりしてて、詳しく聞いてなかったな。


 「はは、あはは……」

 「ったく、ライトはしょうがないな」


 アレクは額に手を当てて首を左右に振っている。

 その横でマルコが「俺をほっといて……」と言い「元気出してください! マルコ様の時代はこれからです」とか言って取り巻きの二人がマルコを励ましている。

 なんだかちょっとシュールな光景だ。

 というより俺の意向の確認はどうなったんだ? うまく誤魔化された?


「いいか? この魔法学校では、生徒同士の問題は決闘によって解決される。そして、決闘に勝った方の言い分が通り、負けた方はそれに従うという事になっている」


 なんだそれ!? それって間違ったら力こそ正義ってなるんじゃないの!?


 「心配するな。ちゃんと決闘場の申請時に無茶苦茶な要求は却下される事になっている。それに今回は負けた方が勝った方に謝るという事になっている」


 なんで俺の心が読めるんだ!?

 前の学校といい、俺はサトラレ属性でもあるのか!?

そんなのあったらリノアに面と向かい合えないじゃないか!!

 俺、大丈夫だよな!?


 ……うん、冷静に考えれば大丈夫だ、もし本当にサトラレ属性会ったらすでにリノアになんかの反応を示されているはず。


 というか、なんで決闘を学校側が認めているのは分からないって聞いたところ、決闘でより実践に近い形で経験を積む事が大事からだと言う事らしい。危ないのじゃないかと思ったけど、決闘は申請方式になっているから、決闘時は専用の回復魔法使いが、傍らに待機するらしい。


 それと、魔法が暴発してよそに行かないように、魔法による結界も張ってあるみたいだ。

 戦士学校とえらい違いだ。


 あっちなんて、普通のグランドで模擬戦とかいって普通に殴り合い、意識失くしたりしたら、自分らでタンカで保健室のおばちゃんのところに運んだっていうのに。


「ん? 今思ったけどアレク、いつの間にシリウスに『謝る』って条件の指示出したんだ? そんな俺が知ってる限りそんな会話してる様子なかったけど?」


 ふと、思ったけどアレクはこの騒ぎに来てから、シリウスとそんな会話してなかったはずだ。……と言う事は……?


「い、いや、シリウスとはあうんの呼吸でな……」


 アレクは明らかに狼狽えながら言葉を探している。

 やっぱり!!

 こいつ、だいぶ前から俺とマルコの様子を見て、機会を伺ってやがったな!?


「アレク!! おまえ!!」

「ち、ちょっと魔法戦士の力を見たくてな! ライトも入学早々絡まれて時間食うのは嫌だろう?」

「そりゃそうだけど、おまえ確信犯だな!?」

「ははは」

「笑ってごまかすな!!」


 俺がアレクを怒っている横で、取り巻きに気合いを入れられたマルコは、闘志をむき出しにしてシリウスが向かった方へと歩いていく。


 どうやら向こうはやる気満々の様だ。

 その光景を見て俺は『やっぱり俺の辞書に順調って文字はない』と確信して諦めた。

 はぁ~……なんで俺はこうトラブル体質なんだ。


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