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リア充しています

「あっ、あれ可愛い!」


 リノアは道に並ぶアクセサリー店に飾られているネックレスを指さして、近づいていく。そして、俺もリノアに連れだってその店へと近づく。

 俺は今リノアとデートしている。


 手を繋いで。


 いや、勢いでやったものの、手を繋いでから俺の心臓はその動きを速め、今までの人生で一番じゃないかと思うくらい働いている。 

 というか、働き過ぎた。


 働きすぎて普段では汗が出ない手の平に汗が出そうだ。

 とりあえずとまれ! 鼓動と汗よ!!

 ……いや、鼓動は止まったら死んでしまうし、ほどほどに遅くなれ。


「これ可愛いね!」

 

 俺が自分の心臓に言いきかせていると、リノアは目をキラキラさせながらネックレスを見て言ってくる。

 リノアが見ているネックレスはチェーンが細くて、トップにハート型のシルバーの中に小さなダイヤモンドのようなものがついているシンプルな造りの物だった。

 デザインはシンプルだけど、ハート型というこの世界では加工が難しいだろう造りだし珍しい。


「あら、お嬢さん、お目が高いですね! そのネックレスは特殊な形なので加工が難しくて一点ものなんですよ!」

 

 ネックレスを見ているリノアに店員さんが声をかけてくる。

 リノアが可愛いからどこかいいところのお嬢様かと思ったのかもしれない。

 まぁ実際その通りなんだけど。


 でも、一点物か……リノアが欲しそうにしているしプレゼントした方がいいかな?

 日本では付き合ったら、何か月記念とかでプレゼントしたりする習慣があったらしいけど、この世界ではどうなんだろう?

 まぁ俺は日本でそんな経験した事ないけど。

 でも、リノアには誤解を招いたり、それが元で辛い思いをさせたりしたからな。

 プレゼントの一つでもしたい。


 出来たらリノアが気に入っているものをあげたいけど、このネックレスは一点物。

 その分値段は……高い。


 でも、入学してから外に出てないし小遣いなんてほとんど使ってないから、買おうと思ったら買えるか……今日は一応多くお金も持ってきているし。


「可愛いですね! でも……今日は見に来ただけですから」


 リノアは店員さんにそう言って俺に「ありがとう、行こう」と言って、手を引いて歩いて行く。

 おそらく値段を見て諦めたのだろう。


 銀貨十枚。

 俺がこの世界に来て感じた部分だと、日本円の感覚に直すと約十万円くらいだ。

 貴族の子供とはいえ、今日はちょっと出かけようってくらいだったしそこまでお金を持っていないのかもしれない。

 まぁ俺は持ってるんだけど。


 アクセサリー店を離れた俺とリノアは雑談をしながら街を歩く。

 手を繋いで。

 最初に手を繋いでから時間がたったため、俺の心臓はちょっと慣れたのか、平常運転とまではいかないまでも、やや落ち着きを取り戻した。


 ふう~人間慣れるもんだな。

 でも、女の子の手って細いよな。

 前世では女の子と手を繋ぐなんて事なかったけど……これって本当リア充って奴だよな。


 さっきから通りゆく男が時々振り返るほど、リノアは可愛い。

 そんな可愛いリノアと付き合って手を繋いでいるなんて……充実し過ぎでしょ。

 この反動どっかでないよな?

 ……いや、だめだ。

 俺がこういう事考えるとろくな事にならない。

 それに、今までがトラブルばっかで大変だったし、これは逆にその反動だろう。

 とりあえず、今は何も考えずにリノアとの時間を楽しもう。


「でね、セリスったらいつも私の事からかうんだよ?」

「そっか、セリスとアレクに似てるよな。俺はいつもアレクにからかわれているよ。あいつはそれだけじゃなくていろいろ悪だくみするからな。あいつは腹黒王子だな」

「ふふ、ライト君はアレックス様と仲良さそうだね。でも、あんまりそんな事言うと怒られるよ?」

「シリウスか? まぁあいつは意外とねちっこいからな。でも、確かに地獄耳だし、忍者みたいにどこからともなく現れたりするから、気を付けた方がいいな」

「にんじゃ……?」

「あぁ、ゴメン、気にしないで!」

 

 危ない危ない。

 こっちの世界では忍者って言っても通じないからな。

 気をつけないと。


 ……ん?

 なんか視線を感じる?

 

 俺は不意に視線と気配を感じて辺りを見回す。


 ……誰も怪しい奴はいないよな。

 気のせいか。


「ん? どうしたのライト君?」

「あっ、いやなんでもない! それよりリノア、お腹空かない?」

「うーん、確かにちょっと空いたかも」


 リノアはお腹を押さえながら言う。

 ……やばい。

 俺はリノアのどんな仕草でも可愛く見えてしまう。


「じ、じゃぁ何か食べようか?」

「うん! ライト君のおごり?」


 リノアは微笑みながら俺に聞いてくる。

 その顔は冗談で言ったんだろうけど、俺はリノアの為なら何でも買います!


「もちろん! 何食べたい?」

「えっ? 冗談で言ったんだけど……」

「いいからいいから! 今日はおごるし行こう!」


 決して貢ぐ男になる訳じゃない。

 俺はリノアにいろいろ迷惑というか、誤解を招いて、結果的に怖い思いをさせてしまったからな。

 今日は俺のおごりだ。


 俺はリノアの手を引いて店を探した。


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