事件の……予感……??
「久しぶりに出かけるから服に迷ってしまったな」
俺は今日、久しぶりの外出と言う事で朝から着ていく服をどうするか迷っていた。
そして、迷いに迷って選んだ服は無難な感じで、半袖の黒シャツに黒いズボンと黒コーデだ。
秋とはいえ、まだ暑さが残っているし、今日は晴天だから半袖で十分だ。
それにしても黒は暑い……。
チョイスを間違ったか?
でも、上の服を白にしようかと思ったけど、それはそれで日本の中学生の制服みたいだし止めたんだからな。
今日くらいは制服から離れたい。
そう思って全身黒コーデにしたけど暑いし、それに……ジャグナル君たちの事言えないな。
今思うと、学校で寮に入っている間は街に出たりとかしないから、私服とかあんまり着ないもんな。
休みの日もみんなで闘技場で無詠唱の特訓してたし、学園に入るのは制服じゃないといけないから休みの日でも制服だったし。
まぁ、俺そんなに凝った服持ってないしな。
てか、買えないし。
平民だから仕方ないよな、うん。
まぁ今は無詠唱を教えているから研究名目で、国王さんから少しお金をもらっているので買えなくはないけど。
最近、無詠唱をみんな覚えたこともあり、物凄い金額を提示されたけど、今は学生だから学生に見合った金額を小遣いみたいな感じにしてもらう事にした。
学生の間から豪遊していると、碌な大人にならないっていうし。
それにお金持ち過ぎてても俺の場合、トラブルの種になるような気もするから、大人になった時に差額をもらうように頼んだ。
でも、大人になってから一気に大金を手にするのは、それはそれでダメな大人になる気が……。
年金みたいな形で老後にもらうか?
……この辺はおいおいでいいか。
今は今、今しかない学生生活を楽しまないといけないからな。
……あっ、戦士学校の再建に寄付するのもいいな。
この辺はまた相談だな……って考えがずれてきた。
まぁだから、それなりに今はお金はもらっているけど、服はシンプルイズベストだ。
というか、前世でそんなに服に凝ってなかったし、変にこだわったら余計におかしくなるからな。
「てか、みんな遅いな」
心の中で言い訳しながら俺は呟く。
俺は待ち合わせには早く行くタイプだし、早くには着いたけど、それにしてももういい時間のはずだ。
それなのに誰一人来ないとはどういう事だ?
「ライト君!!」
と思っていると、俺を呼ぶ声が聞こえてそっちを見ると、リノアが走って来ていた。
か、可愛い……。
リノアは暑いからか、髪をハーフアップにしていて、服装は白のシャツに紺の膝より少し下くらいまでのスカートを履いている。
シンプルな服装だけど、シンプルな分、リノアの可愛さが際立っている。
「遅くなってゴメン! ちょっと準備に時間がかかって……あれみんなは?」
「……」
「ライト君?」
「……あっ、ゴメンゴメン! リノアに見とれてた! ……良く似合ってるよ」
「そ、そう? ありがと……ライト君もカッコいいよ?」
……うぉぉぉおおおおお!!
なんだこれは!?
これがリア充か!!
この恥ずかしそうに頬を赤く染めがら、上目使いで言ってくるリノア。
……可愛すぎる!!
抱きしめたいけど、ここは街中、自重しないと……。
「ありがとうリノア。それにしてもみんな遅いな」
俺は爽やかスマイルで言葉を返す。
そうだ、まずは落ち着かないと……。
やっと掴んだ春だ。
とりあえず、前世でも味わえなかった青春を謳歌するんだ。
だから、ギラギラしちゃだめだ!
爽やかにいかないと!
「あれ? セリスとリースちゃんも来てないの? 二人とも早く用意できたから先に行くよって言ってたんだけど……」
「えっ? そうなの?」
「うん。一緒に行こうって約束してたんだけど、私が準備始めるくらいに二人とも準備できたって言って来て……。私も慌てて準備しようとしたんだけど、待たせるのもあれかなと思って先に行ってもらったの」
「そうなんだ。俺、結構早くに来たけど見てないな?」
「どうしたんだろ……?」
俺とリノアは二人で考え込む。
どうしたんだ?
まさか事件に巻き込まれたか?
……いや、二人とも無詠唱も使えるしそうそう事件に巻き込まれることはないだろう。
じゃなかったら二人もリノアをほっとかないで三人一緒に来たはずだ。
リノアが無詠唱できるから先に行くって言ったんだろうし、自分たちも無詠唱が出来るからな。
なら何が……?
というか、男連中はどうしたんだ?
男連中は現地集合にしていたはずだから、みんな寝坊って可能性もあるだろうけど……それは不自然だろう。
でも、マルコは性格真面目だから寝坊するタイプとは思えない。
むしろ、俺みたいに早くに行くタイプだと思う。アレクは……まぁ不真面目だけど、王子だから時間厳守するだろうし、シリウスもついているからな。
そう言うとマルコも取り巻きの二人がいるから、三人揃って遅れるとは考えにくい。
なら、いったい何が……?
「おい君たち! 君たちはリノアちゃんとライト君かい?」
俺とリノアがみんなが来ない事を疑問に思っていると、日焼けしたガタイのいいおっさんが声をかけてきた。
なんだこの怪しいおっさんは……?
まさか……事件の予感?




