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異世界も女性が強い社会になるのは近いかもしれません

 リースはそう言うとまだ傷心中のマルコをよそに、右手を前に出し集中し始める。

 思えばリースちゃんは成長株だ。

 一番最後に習い出したのに、リノアとセリスに追いついたんだからな。

 さて、どうだろう?


「んーー……はっ!!」

「おぉ!」


 魔法の発動までは少し長かったけど、水の矢が勢いよく放たれる。

 しかも、大きさも大きく威力も高い。

 これはびっくりだ。

 魔法の威力的にはマルコを上回っている、

 ……はっ!


 俺は気になってマルコの方を見ると、マルコは両手をだらんとして立ち尽くしている。

 その前で取り巻き二人がマルコの前で手を振り、「マルコ様大丈夫ですか!?」「誰か! 誰か助けてください!!」と叫んでいる。

 

 その光景はなんとも重大なシーンのように見えるが、なんて事ない。

 ただショックを受けて現実逃避しているだけだ。

 

 でも、さすがにマルコが可愛そうだな。

 今度マンツーマンで教えてあげよう……。


「やった! 出来ましたよ!」


 と言ってリースは俺に駆け寄ってきて手を取り、はねて喜んでいる。

 い、いや、その……手はまずいんじゃないかな……?


「お、おぅ。凄いな」


 俺は喜ぶリースの手を振り解く事が出来ずに、とりあえず言葉をかける。

 ど、どうしよう……。


「こら、リース! そんな事したらリノアが怒るでしょ!!」


 と、俺が困っているところにセリスが助け舟を出してくれる。

 ナイスだセリス!!

 でも、本当に妹に怒るような言い方だな。


「ふふふ、そんなの怒らないわよ?」


 セリスの言葉に続いてリノアが笑って答える。

 ……いや、正確には笑っているように答えるだ。

 一見笑っているように見えるけど、不自然な笑顔だ。

 や、やばい……?


「ご、ごめんなさい!!」


 セリスの言葉とリノアの笑ってない笑顔の迫力に押されて、リースは反射的に飛びのくようにして手を離す。

 そして、リースはリノアとセリスに頭を下げて謝っている。

 やっぱりあの子、ちょっと天然入ってるのかもしれないな。

 

「ったく、ライトがちゃんとしないからだぞ?」

「はい、おっしゃる通りです」


 返す言葉もございません。


「もう問題を起こしてくれるなよ?」

「そうだぞ。この前のバグデスファミリーの一件は、国王様の配慮で民衆には正義のヒーローのように伝えられているが、実際の根本的な問題はおまえの女性問題だぞ?」

「くっ……すいません」


 くそ、こことばかりにシリウスに説教されるとは……。


「それにしても夏休み前には出来なかったのにみんな凄いもんだ」


 アレクの奴、散々俺を落とした上でさらっと話を戻しやがった……なんて奴だ。

 まぁシリウスにグチグチ言われるよりいいけど。


「そうだな。俺もびっくりだよ。そうだ、次はアレクが――」

「次は私とリノアが行くね!!」


 俺が次にアレクにやってもらおうとおもったところで、セリスが手を上げてリノアと一緒にやるって訴えている。

 どうやら穏便に話し合いは終わったみたいだな。


「みたいだ。まぁ俺は最後でいい」


 アレクはセリスとリノアを見て微笑んで言う。

 なんだ? そのかっこいい奴が言うような言い方は……?


「じゃぁ行くよ!」


 そうしているうちに、セリスとリノアが前に出る。

 そして、右手を前に出した。


「はっ!!」

「「「おぉ!!」」」


 すると、右手を前に出した瞬間に水流が前へと放たれる。

 今のは全然、間がなかったぞ!?

 威力こそ、リースに及ばないまでもその発動までの時間は今までのメンバーで最速だった。というか、俺と比べても遜色ないくらいだ。

 あまりの出来事に、俺とアレク、シリウスの三人は同時に声を上げてしまった。


 ちなみにマルコは茫然と立ちすくみ、その横で取り巻き二人が、「これはきっと夢です!」「そうです! マルコ様起こして差し上げます!」とか言って、マルコの頬を摘み、マルコが、「痛いわ! やめろ! これは夢ではない!!」と言って怒っている。

 あの三人は何をやってるんだか……。

 でも、良かった。マルコの奴、自分で夢ではないって言ってるしまだ大丈夫みたいだ。

 大丈夫マルコ、いつかきっとおまえもうまくなるから。


「やったねリノア!」

「うん! 一緒に特訓した成果が出たね!!」

「二人とも凄いです!!」


 マルコ達三人とは違う形で女子三人は盛り上がっている。

 どうやらセリスとリノアは夏休みに二人で特訓してたようだ。

 もしかしてリースははみっているのか……?

 

 と思ったら話が聞こえて来て、「リースも一緒に頑張った甲斐があったよね!」「リースちゃんこそ! リースちゃんは家が遠いからいつも一緒には出来なかったけど、いつの間にあんな威力出せるようになったの?」と話している。

 どうやら、リースも一緒に特訓していたようだけど、家が遠いから毎日は無理だったようだ。良かった。


「これはうっかりしてると、女性の方が強くなる日が来るのかもしれないな」

「えぇ、まさかこれ程とは……」


 日本ではすでに女性の方が強い世界になりつつあります。


「その言い方だとアレクもシリウスも女性陣には劣るのか?」


 俺の問いかけにアレクとシリウスは視線を合わせてニヤリとして頷く。

 なんだよ、その反応。


「さぁ、どうだろうな。それはライトが判断してくれ」


 アレクはそう言うと前に出る。

 そして、その後ろを無言でシリウスがついていく。


 なんなんだ? お前たちは……そんなに格好つけて。

 いいさ、見てやろうじゃないか!


 俺は格好をつける二人に厳しい目で判断してやろうと思った。

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