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夏休みも終わりました

「じゃぁ行ってきます!」

「ライト、気を付けてな」

「ライト、身体に気を付けるのよ」

「お兄ちゃん、元気でね!」

「うん、また冬休みに!!」


 俺は家族に見送られ、迎えに来てくれた馬車へと乗り込む。

 今日で、もう夏休みも終わりだ。ジャグナル君達が帰った後は平和そのものだった。

 俺はフランに魔法を纏うコツを教えてもらったり、一緒に模擬戦したりと。

 一応フランとのわだかまりは解けたようだ。


 もっともあれ以降その話は出来ていない。

 でも、一応はフランも分かってくれている……と願いたい。

 おそらく次に何かあるとしたら、フランとリノアが会った時か?


 父さんと母さんは俺とフランがいつもの調子に戻ったのを見て、「あらフラン、機嫌治ったのね? そうよ、もしお兄ちゃんが結婚してもお兄ちゃんはお兄ちゃんよ」「そうだぞフラン。お兄ちゃんに子供が出来たらお前はおばさんになるんだぞ」とか地雷を踏みまくっていた。

 フランは父さんと母さんに笑顔で返していたが、目は笑っていなかった。


 まぁ幸いな事にフランの機嫌が悪いのは長く続かなかったことだ。

 フランの中で、次はリノアに会ってからとなっているかもしれない。

 それはそれで悩みの種だけど……。


 まぁでも、一歩先に進めたのはいい事だ。

 それに今回家に帰ってきてフランに魔法を纏うっていう新しい発想ももらえたし。


 ジャグナル君達が帰ってからは集中して特訓出来たからだいたいのコツは掴めた。

 あとは、フランの魔法を纏うっていうのと闘気を組み合わせる事ができないか自分なりに試してみるだけだ。


 闘気と言えば、フランに魔法を纏う方法を教える代わりに闘気を教えて欲しいと頼まれた。

 正直、教えるとフランがまた強くなってしまうし、嫌だから断ろうとしたけど、「じゃあ教えない」って言われた。

 まぁこれはまだいい。

 時間がかかっても自分なりにやれば出来そうだったから。

 問題は次の言葉だ。


 俺が別にいいけどみたいな態度を取るとフランは「じゃあ戦士学校に行って聞いてみようかな?」と言って、俺が「そんなの教えてくれる訳ないだろ?」って言うと、「うーん、力づくで?」と言って微笑んだ。

 その言葉が俺との駆け引きだったのか本気かどうかは分からないけど、もし本気だった場合、被害が大きすぎるのと、戦士学校は今再建中で迷惑をかけられないと思い、渋々ながらフランに教える事にしたのだ。


 それで結局フランに闘気を教える事になったけど、さすがのフランもなかなか闘気は難しいようで完璧には出来ないでいた。

 でも、それが逆にフランのやる気にスイッチが入ったらしく、「次にお兄ちゃんが帰ってくるまでに完璧に使えるようになっておくから!」と言われたけど、俺は心から「いや、使えるようにならないでくれ」と願った。


 まず、魔法と身体強化の魔法の時点で、彼氏候補が限りなく見つかりにくいってのに闘気まで使われたらもうお手上げになる可能性が高い。

 そんな事になったらフランは一生独身の可能性も……。


 でも、俺に出来る事はとりあえず、俺に匹敵するくらいの強さがある人、且つ、カッコいい人を見つける事だ。

 ……出来るかどうかは別にして。


 と、人の心配ばかりしてられない。

 俺も二学期に入るという事でまた学園生活に戻るのだ。

 何があるか分からないけど、二学期こそは問題児扱いされないようにしないといけない。だから、問題は起こしたくない。


 でもなぁ~トラブル体質だしなぁ~……。それにアレクもいるし。

 アレクだけじゃない、リースちゃんも無詠唱の特訓に加わった事で今のところ何も起きていないけど、トラブルの元になるような要因が増えている。


 というか、俺なんでこんなに一人でいろいろ考え込むようになったんだ!?

 考え込みすぎじゃね!?


 俺は不意にそう思い首を左右に振る。気が付くと馬車から覗き見るスーラ村はもう小さくなっていた。


「お兄さん、俺いい事ありますかね」

「口がうまいな坊ちゃんは。いい事……きっとあるでしょう。世の中辛いことがあった分いい事があるはずさ」


 そう言って御者のお兄さんと呼んだおっちゃんはかっこいい台詞をかけてくれる。

 そもそも俺に辛い事があったってなんで決めつけられたんだろうか?

 いや、こんな事聞いたからか?

 それとも顔に出ていたのか……。


「坊ちゃん、そんな考えてても仕方ないですって。今を楽しく行きましょう!」


 おっちゃんは俺を励ますように前向きな言葉を言ってくれる。

 今を楽しく……悪く言えば問題の先送り……。


 いや、こんなマイナスのことばっかり考えるからダメなんだな。

 こういうのをフラグって言うんだろう。

 考えない方がいい。


「そうですね! さすがお兄さんはいい事言いますね!」

「はは! そう言うぼっちゃんは口がうまいな!」


 俺とおっちゃんはそう言って二人で笑い合った。

 謎の絆がそこには確かにあった。


 もし、この光景を他の人に見られていたら変な風に思われていただろう。

 でも、俺はおっちゃんの言葉で少し救われた気がした。


次回更新予定は8月8日です!

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