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とりあえず手合わせは終わりました

「フランちゃん凄いね!」

「お兄さんも凄かったけど、フランちゃんのカッコ良かった!」


 俺とフランが話していると、子供達が近寄ってきてフランに声をかける。

 ちなみ俺には声をかけてこない。

 そう、みんなフランの事が好きなのだ。


 そのフランが前にみんなの求愛を断るのに、「お兄ちゃんより強い人じゃないと嫌」なんて事を言ったおかげで、俺は戦士学校の休みに村に帰ってくるなり、村の子供達に襲撃されるなんて事が起きた。


 まぁ襲撃された時は問題にならない程度に返り討ちにして、フランに事情を説明したら、フランがみんなに止めさせたけど。

 それが話し合いなのか、武力行使化は分からない。俺が襲撃されたって事でフランがえらく怒っていたから聞くのが怖かった。

 とりあえず結果的に襲撃はなくなったけど……。

 まぁそれくらい村の男の子にフランはモテているのだ。


「フランちゃん、カッコよかった……いや、可愛かった!」


 どさくさに紛れてジャグナル君が駆け寄りながら、フランに言葉をかける。

 その言葉を聞いたフランは引き攣った顔をしながら、全力で俺の後ろに回り隠れる。

 いや、俺を間に挟まないで……。


「フランちゃん、そんなに照れなくても――」

「照れてるんじゃないわよ! 嫌なの! だいたいなんなの!? その髪型!?」


 ついにフランが爆発する。

 そして、フランの容赦ない言葉にジャグナル君がフリーズする。


「ははは! ジャグナル君、ストレートに言われちゃったね!」

「ジャグナル、これ、現実」

「ったく、最初に気付けっての!」


 ジャグナル君の後ろからライア君、バルテル君、ドーラ君も現れ容赦ない言葉をジャグナル君に浴びせる。

 ……だから、俺を間に挟まないで…………。


「俺、もしかして……嫌われているのか……?」


 絞り出すような声で呟くジャグナル君。

 まるで生気がない。

 ヤバイ!


「い、いや! フランは髪型って言ってるし、フランは俺より強い人がタイプって言ってるから! イテッ!」


 俺がジャグナル君を立ち直さそうと声をかけていると、後ろからフランにいらない事言ってるんじゃないとばかりにボディーブローを喰らう。

 俺、間違った事言ってないはずなのに……。


 すると、ジャグナル君は、「そうか……髪型と強さか……」と念仏にように呟いている。

 あ、危ない……。

 その様子を見たフランが、「髪型と強さだけじゃないわよ! 顔もよ!」って言ってるけどその声はお坊さんと化したジャグナルの耳には届いていないようだ。


「こうしちゃいられない! 俺は帰るぞ! 帰って髪切って特訓だ!!」


 そう言って元気を取り戻して走っていくジャグナル君。

 立ち直り早っ! それにめっちゃプラス思考だ。

 キャラ変わりすぎでしょ!?


「あちゃちゃ、また変なスイッチ入っちゃって……ライト君いらない事言ったんじゃない?」

「いや、だって……」

「そうよ! お兄ちゃん!」


 あれだけ友達が凹んでたら励ますくらいは……だってどっちにしてもフランは振るんだろうし。

 ……あっ、俺問題の先送りしただけか!

 これじゃ余計にジャグナル君を傷つける可能性が……。

 くそ! 下手な優しさはいい結果を生まないって学習したばっかなのに!


「そうだよ。ばっさりと切って落ち込ましちゃいんだよ。その方がおもしろいでしょ?」


 いやいやライア君、面白さとか……あなたには逆に少し優しさが足りません。

 まぁ根は優しいんだけど。


「じゃあ僕たちもそろそろ家に帰ろうかな」

「えっ? 帰っちゃうの?」

「うん、実は昨日三人で話してたんだけど、このままじゃ迷惑かけるかなって。まぁその根本になってた人を連れて帰ろうとしてたんだけど、帰えちゃったしけど。でも、予定と違ってドーラ君まで違うスイッチ入っちゃったしあまり長くいるのは良くないだろうし」


 そう言って流し目で後ろにいるドーラ君を見る。


「俺が何したってんだよ!?」

「ドーラ、鬼教官」

「はぁあ!? 何がだよ!?」


 そう言ってバルテル君とドーラ君はいつものようなやりとりを始める。


「まぁこんな感じでうるさくなるし帰るよ。ライト君もいろいろ大変のようだし」


 ライア君は意味深な感じで言って来る。


 なんだ!? まさかライア君は俺の抱えている問題に気付いたのか?

 ……いや、それらしい事はみんなの前で……あっ! さっきジャグナル君に『フランは俺より強い人がタイプって言ってるから』って言ったからだろうか?

 でも、それぐらいで……それで気付いたとしたらライア君、勘よすぎでしょ!?

 ……まぁ昔から勘は良かったけど。


「そっか、残念だな。じゃあまた今度!」


 俺は出来る限り平静を装って言う。


「そうだね、また今度ゆっくりと。……じゃあ二人とも帰るよ!」


 そう言ってライア君は言い合いをしているドーラ君とバルテル君の言い合いをぶった切って帰っていく。

 ……さすがライア君。


 それにしても疲れたな。

 フランとの戦いも予想外な事を覚えててびっくりしたし、避けるのに神経使ったし。

 今日はフランとの約束も果たしたし……


「俺も帰るか」


 そう呟いて俺はフランに声をかけて家路についた。

 ちなみに、フランともっと話したがっていた男の子達から、恨みの籠った視線を後ろから受けたのは言うまでもない。


次回更新予定は7月31日(日)です!

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