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意外な一面を見ました。そして、フランが口をきいてくれました

「お義母さん、お茶ありがとうございます!」

「いえいえ、見かけによらず礼儀正しいのね」


 俺はあまり気乗りはしなかったものの、とりあえずみんなを家に招く事にした。

 せっかく会いにわざわざ来てくれたんだ、追い返す訳にはいかない。

 この辺は俺まだ日本人としての感覚が残ってるな。


 どうやら話を聞くと、四人は夏休みの終わりまでこの村の宿に泊まるらしい。

 そんな事親が許すのかと思ったけど、どうやら四人は俺に会いに来るのと、特訓を受ける為に来たらしい。

 親に『魔法戦士に特訓を受けてくる』というと、どの家もあっさり許可が下りたらしい。なんとも勝手な……。


 ちなみに魔法戦士、つまり俺の生まれはウェルホルム王国でシークレット扱いになっているし、魔法学校と一部を除く人以外は俺の顔を知らないし、この村が騒ぎになったりはしてない。

 こういう時は写真がなくて良かったと思う。

 ただ、この村で噂は立っているようだけど、みんな昔から一緒の村で暮らしているから、あえて触れないでいてくれている。

 そう、村は家族同然なのだ。


 あと、俺は戦士学校の時の友達の事も親に話してあったけど、最初家に連れてきて見たときは二人とも驚いていた。

 でも、そこはさすがライア君。

 どこから出したか手土産を父さんに渡し、胸に手を当て礼をした。

 そして、それに続いてみんな綺麗な挨拶を行い、父さんと母さんも人は見かけじゃないと思ったようだ。

 そう、こう見えてみんな貴族の子供なのだ。


 それにしても、ジャグナル君の母さん呼ぶ呼び方が、少しニュアンスが違う気がして気になるけど……。

 どうやら父さんも本能で何かを察知しているのか、ジャグナル君には警戒しているようだ。


「戦士学校ではライトがお世話になったみたいで」

「いやいや、僕たちの方がライト君にはお世話になりました。今の僕らがあるのもライト君のおかげですし」

 母さんの社交辞令的なあいさつに、見事にキレイに返すライア君。

 そして、いつもの口と態度の悪さが目立つドーラ君も今日は紳士みたいだ。

 優雅にお茶を飲んでいる。

 かなり見た目とミスマッチだ。


 いや、ドーラ君だけじゃない。

 ジャグナル君とバルテル君もだ。

 いつもと一緒なのは服装くらいか?


「そうです。僕たちより一個歳が下だというのに一番しっかりしておられて、見習うところがたくさんありました」


 ジャグナル君まで……しかも僕って……。

 なんだろう……みんなのこんな姿初めて見たから俺が一番驚いてる気がする……。

 なんか鳥肌が……。


――――


 そして、しばらく雑談をしてみんな長居は邪魔になるからと言って帰ろうとしたので、俺は父さんと母さんに外で遊んでくると言って家を出た。

 それにしてもみんないつもと様子が違い過ぎてびっくりした。

 ライア君はともかく、他の三人まで一人称を『僕』なんて言うなんて……聞いているこっちは鳥肌が立った。

 まぁでも、みんな貴族の子供って事なんだろうな。


「ちっ、フランちゃんは帰って来なかったか……」

「残念だったね、ジャグナル君」

「いやいや……」


 どう表現していいか分からないけど、なんとも複雑な気持ちだ。

 

「おっ!」


 すると、ジャグナル君が前見て声を上げる。

 なんだ?


「おわっ!?」


 前を見た瞬間に炎が迫ってくるが目に入り、俺は咄嗟に氷の壁を出現させそれを防ぐ。

 別に土の壁でもよかったけど、俺は炎を見ると咄嗟に氷で対抗しようとしてしまう。

 まぁいいか、氷魔法だと蒸発して消えるしな。

 というか、なぜこんなところで魔法が……?

 この村で魔法と言ったら……


「お兄ちゃん!?」


 俺が氷魔法で炎を防いだ事によって生じていた水蒸気が晴れてくると、その向こうにはフランがいた。

 やっぱりフランか……。

 村の中で魔法をむやみに使うなってのに。


「お兄ちゃんなんでそいつと一緒にいるの!?」


 フランはジャグナル君を指さす。


「フランちゃん、改めまして! 私はライトお兄様と同じ学校で親友だったジャグナルと申します。以後お見知りおきを」


 突如、そう言って胸に手を当て頭を下げるジャグナル君。

 …………。

 なんだろう……このジャグナル君の変わりよう……。

 見ていて凄く寒気が感じる。


 フランなんて、おもいっきり引いているもんな。

 俺が思うに、今はこうやって気持ち悪いくらい紳士的で似合わない挨拶をしているけど、最初は普通のナンパみたいな感じだったんだろうな。

 じゃなかったら、引く事はあってもこんな風に再会してすぐに魔法を放ってくるなんてありえない。


 それにしてもこのジャグナル君の変わりよう……。

 ライア君なんて必死に笑いを堪えているし、ドーラ君は「あぶねぇ! また巻き添え食らうところだったじゃねぇか。でも、最初の時にそうやって入っていれば魔法ぶっぱなれる事なかったんじゃねぇか?」と言い、バルテル君が「魔法、たぶん、なかった、でも、結果、同じ」と言っている。

 なんとも言えない空気だ。


「ちょ、ちょっとお兄ちゃんどういう事か説明して!!」


 いやいや、俺の方がこの展開の説明をいろいろ聞きたいところだけど……。


 まぁいいか。

 フランが口をきいてくれただけよしとしよう。


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