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フランは頑固のようです。そして、予想外の事が起きました

「いや、まさかここまで頑固とは……」


 俺が家に帰ってから一週間、俺まだフランと口をきけてない。

 まさかこれほどとは……。

 俺は連敗街道まっしぐらだ。

 どうやら俺は交渉の才能はないらしい。


 ごはんの時間とかは一緒になるけど、口は聞いてもらえず、父さんと母さんも「フラン? お兄ちゃんは彼女が出来ても……結婚してもお兄ちゃんはお兄ちゃんよ?」「そうだぞ? お兄ちゃんはお兄ちゃんだし、もし結婚したらおまえのお義姉さんになるんだぞ?」と言ってフランをなだめようとしていた。


 でも、俺は知っていた。

 その言葉は逆効果だという事に……。


 でも、そんな事言える訳もなく、フランはますます不機嫌になった。

 その様子を見て、父さんと母さんは「遅い反抗期かしら?」「そうかもしれないな」と言っていたけど、俺だけはそれは違うと知っていた。

 ちなみ父さんと母さんはリノアの事でもしかしたら結婚とか言ってるけど、相手が貴族というのは頭から抜けているらしい。

 でも、気づいたら動揺するだろうしそっとしておこう。


心の中で父さんと母さんに「地雷を踏みにいかないでください」と願ったけど、残念ながらその願いがかなう事はなく、父さんと母さんはフランをなだめようとしていた。


 俺も俺でなんとかフランと話そうとしていたけど、今日もフランに逃げられて、フランは家から出て行ってしまった。

 だから、俺は今スーラ村を歩いてフランを探しているけど、なかなか見つからない。


「どこにいるんだフランは?」


 そう呟きながら歩いているその時だった。


「おいライト!!」


 後ろから俺を呼ぶ声がする。

 この声……そして、この絡んでくる感じのような言い方は……。


「ジャグナル君! それにライア君、ドーラ君、バルテル君も!!」


 振り返った先にいたのは戦士学校時代の戦友という名の友達だった。

 とはいえ、みんな年齢は一つ上なんだよな。


 ジャグナル君は変わらずリーゼントだけど……あれはどうしたんだろう?

 ライア君は変わらず、きれいな黒髪ストレート、ドーラ君は変わらず派手な金髪だし、バルテル君は……ちょっと髪伸びたな。伸ばすんだろうか?

 それにしても、ライア君が白シャツ着ている以外はみんな黒一色コーデでかなり厳つい。

 完璧に村で浮いているな……。

 まぁみんな変わってないって言ったら変わってないけど。


「久しぶりだね、ライト君」

「ライア君、いったいどうしたの!? それになんでジャグナル君はボロボロなの? なんかドーラ君まで少しボロボロだけど」


 なんでこんな小さな村にみんなが? それになんでジャグナル君はボロボロなんだろうか?

 自慢のリーゼントも縮れてボリュームが増えているし。

 ドーラ君は……中途半端だな。


 すると、ドーラ君が「俺は巻き込まれただけだ」って呟き、バルテル君が、「ドーラ、そういう、キャラ」と言い、「うるせぇ!」とドーラ君が返している。

 うん、この辺も変わってないな。


 でも、巻き込まれたってどうしたんだろう?

 ……ケンカか?

 でも、この村でジャグナル君相手とはいえ、そこまで一方的にやれる人いるだろうか?

 それにケンカならドーラ君とかもっと暴れてそうだし……。


「ん? あぁちょっとね――」

「ライト!! 俺はここに来て良かった!!」


 えっ?

 いや、ここに来た理由も聞いてないし、何があったのかも知らないし、そもそもジャグナル君ってそんなキャラだったっけ!?


「ど、どうしたの? 何があったの?」

「おう! 聞いてくれ! 俺はここで女神に会ったんだ!!」


 えっ? 女神?


「女神ってどういう事……?」

「実はね、さっきライト君の家を探していたら、前からかわいい子がやってきたんだよ。そしたら、ジャグナル君の好みど真ん中だったみたいで――」

「そうなんだ! だから俺はいても立ってもいられなくなって声をかけたんだが、魔法で返り討ちされてな、可愛くて強い子……まさに俺の理想だ!!」


 何やらジャグナル君はかなり興奮している。声かけて魔法で返り討ちにされて、さらに好きになったって……端から見たら危ない奴に見えるだろう。

 まぁ、ジャグナル君は打たれ強かったけど。


 そんな横でライア君は呆れながら、「ここに来た理由はライト君に会う為なんだけどね」と言っている。

 どうやら、夏休みを利用してみんなで会いに来てくれたようだ。

 それにしても可愛い子で魔法って……。


「ジャグナル君、もしかしてその子無詠唱じゃなかった?」

「ん? どうだったけ? 覚えてない!」

「そうなんだよ。聞きそびれたのかと思ったけど、あのタイミングじゃ詠唱する時間なんてなかったと思うし……。もしかして……?」


 ジャグナル君は覚えてなかったけど、さすがライア君、冷静に見ていたようだ。その横でドーラ君が、「なんで俺がジャグナルの野郎の巻き添え喰らわねえといけないんだ」と言い、バルテル君が、「ドーラ、そういう、キャラ」とさっきの下りと同じ事をしている。

 この二人は漫才出来るんじゃないだろうか?

 それにしてもこの村で魔法、そして無詠唱となると……。


「……それたぶん俺の妹だ」

「マジか!?」

「やっぱり!!」

「マジかよ。兄が兄なら妹も妹だな……」

「ライト、妹、強い、ドーラ、より、強い」


 俺の言葉に四者四様の反応を示す。

 どうやらライア君は予想していたようだ。

 そりゃそうか、無詠唱なんて存在しないと言われているのに、俺が使えて俺の住んでいる村に来たら無詠唱の使い手を見たんだから。


 ジャグナル君は自分が惚れた子が俺の妹だと知ってショックを受けたのか開いた口が塞がらないようだ。

 その横ではドーラ君は相変わらずバルテル君と漫才をしている。なんだか、魔法学校といい、戦士学校といい、俺の周りはバラエティーに富んでいるな。


 というよりまさかジャグナル君が俺の妹に惚れるとは……。

 もし、ジャグナル君がフランと結婚したら義理の弟……?

 ……あり得ないあり得ない!!

 それにフランは俺より強い男じゃないと好きになれないって言ってたし。

 残念だけど、ジャグナル君では俺に勝つどころか、下手に付きまとったらフランに消されるかも。


「ライト……」

「えっ、なに?」


 俺が勝手にいろいろ想像していると、ジャグナル君が思いつめた顔で俺を呼ぶ。


「ライト、俺、おまえの事、お義兄さんって――」

「駄目!」


 俺はジャグナル君が言うより先に言葉を遮り、ジャグナル君の頭をチョップする。

 一個年上だろうが関係ない。

 フランの相手はちゃんとしたフランの事を真剣に考える人でないといけない。

 ただの一目ぼれで許す訳にはいかないからな。


 ここはフランの兄として接しよう。


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