長期戦になりそうです
「まぁそうなの? どんな子?」
「そうなのかライト!? どんな子だ? 母さんに似てきれいな子か?」
俺が彼女が出来た宣言をすると、フランより先に母さんと父さんが食いつき気味に反応を示した。
父さんの言葉はつっこみどころもあるけど、とりあえず置いておいて、どうやら父さんと母さんは息子の俺の恋模様が気になるらしい。
世界が違っても親は親というものなのだろう。
フランはやはりさっき感づいたのか、驚きこそしないものの、暗い表情のまま俯いている。
それと対照的に父さんと母さんはニコニコ顔だ。
「おい、フラン!?」
俺が両親とフランの様子を見ていると、俯いていたフランが急に立ち上がり部屋から走って出て行ってしまった。
「まぁあの子、大好きなお兄ちゃんに彼女が出来て嫉妬しているのね。お兄ちゃんはお兄ちゃんなのにね?」
「まぁそのうちその辺は分かるだろ。ライト、彼女が出来てもフランの事を可愛がってやれよ? それでどんな彼女なんだ?」
……いや、父さん母さん、その辺の認識がちょっと違います。
俺は実の妹に『抱いて』と言われているんで、本気で嫉妬されてると思うし、可愛がったら余計にいけない気がします……。
俺は当然そんな事は言えず、とりあえずリノアの話を両親にした。
――
「フラン?」
父さんと母さんと一通り話を終えた俺は部屋に行くと言ってフランの部屋を訪れた。
ちなみに、父さんと母さんは俺の彼女リノアが貴族と知るとめっちゃ驚いていた。どうやら俺が学校に行っているとはいえ、周りが貴族の子供とかいうのは聞いていても現実がないようだった。
アレク達が本当に来ていたらえらいとこだったな。
おそらく父さんと母さんは王子であるアレクと友達になったって話したけど、実際会ったら卒倒するだろう。
まぁフランとちゃんと話をしようとして来たけど、部屋のドアはカギがかけられていて開けることが出来ない。
だから、俺は仕方なくドアをノックしたりドアの前から声をかけているけど、鍵をかけてくれるどころか返事もしてもらえない。
困ったな……まさかこんな展開になるとは……。
もっと怒ってくるかと思ったけど、まさかすねてしまう方だったとは……俺はまだまだ女心が分かっていないのかもしれない。
というか、女心が全然分かってないからこの前みたいな事件まで起きるんだよな。
ちょっとはその辺も勉強しないとこれから先もやばいかもしれない。
……あっ、こんな事言ってたらフラグ立ててしまう!
気を付けないと……。
でも、フランのこんな様子は初めてだしどうしたらいいのか見当もつかない。
どうする……?
でも、妹だからこのままほっとくって訳にもいかないし、俺のいる間にちゃんと話して納得してもらわないと……。
「フラン開けるぞ」
こうなりゃ力づくで……。
「おわっ!?」
俺がドアを開けようとすると、取っ手が帯電しているのか、触った瞬間に感電した。
フランの奴、雷魔法使ったな?
くそ、これじゃ無理やり入ろうにも魔法で対応されてしまう。
誰だ、フランに魔法を教えたのは!!
……って俺なんだけど。
強すぎる妹っても大変だ。
俺は自分で自分に治癒魔法をかけながらそんな事を考える。
「フラン! お兄ちゃんはフランと話をしたい!」
俺は正攻法でドアの前で語りかける事にした。
交渉人スタイルだ。
「フラン!! お兄ちゃんと話を――」
「私は話したくない!!」
すると、中からフランの声が返ってくると同時に、ドアの取っ手からバチバチと音がする。
……うん、今は無理だ。
今話しても逆効果だと思った俺はフランの部屋の前を後にする。
交渉は短期決戦でつくものじゃない。
こうなれば長期戦覚悟だ。
そう決意しながら。




