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家に帰ってきました

「ただいま!!」

 

 俺は意を決して家の玄関を開ける。


 学校が休みに入ると、俺は馬車で家まで送ってもらった。

 心のどこかで、トラブルに巻き込まれて、帰るのが遅くなったりしないかとかも思ったけど、途中、盗賊とかに襲われたりとかのトラブルもなく、順調に帰って来られた。

 そして、家の前に立っていてもどうにもならないので、意を決して玄関を開けたんだけど……。


「おかえりお兄ちゃん!!」


 家に帰って玄関のドアを開けるなり早々に、フランが俺に抱きついてくる。

 俺はそれを避ける事が出来ず、抱き受ける。

 ……これは妹だからセーフだよな?

 それにしてもまた成長しているな……ってそんな事思ってちゃだめだ! 


 俺の予想通り玄関を開けるなり、フランが抱きついてきた。

 これは予想の範囲内だけど、脳内でどれだけシュミレーションしても、この展開になってフランを躱す方法が思い浮かばなかった。


 妹が飛びついてくるのを避けるのは何かさすがに出来ないし、こっそり家に入ったり、無言で家に入ったりとかも考えたけど、下手したらフランが不審者だと思って魔法を放たれたら家に被害が出てしまうし……。

 そうこういろいろ考えたあげく、結局俺はとりあえずフランを抱き受けるといった選択肢しか思い浮かばなかった。


「あら、ライトおかえりなさい」

「おぉライト! また大きくなったな!!」


 フランが俺に抱きついているところへ、熊の様な大柄な父さんと美人の母さんが出迎えてくれた。いつ見てもアンバランスな気がするけど、仲の良い夫婦だ。きっと好きになるのとかは見た目じゃないんだな。

 ……いや、父さんもかっこいいとは言えないけど、ワイルドって感じだし、好みは人それぞれか。


 俺がそんな事を思っていると、父さんと母さんは「あらあら、本当に仲の良い兄妹ね」「きっと母さんの育て方が良かったんだよ」とか言っている。

 いやいや、もうちょっと年齢を考えようよ。

 俺も成人近くの歳だし、フランもそれなりの年齢だよ?

 普通に考えたらちょっとまずくない?


「ん? お兄ちゃんなんか女の匂いがする……」

「っ!?」


 女の匂い!?

 そんなの分かるのか!?

 今日は別にリノアを抱きしめたりとかしてないぞ!?

 普通にバイバイしただけだから触れてすらいないのに……まさかこれが女の勘ってやつか!?


「二人とも、玄関ではなんだから中に入ってゆっくり話をしよう」

「そうね、お茶でも入れるわ。おやつはクッキーでいいかしら?」


 おぉ! 父さんと母さんナイス!!

 さっきは失礼なこと考えたごめんなさい!!


「フラン、ちょっと降りてくれるか? 久しぶりなんだし、父さんと母さんの言う通りゆっくり話そう」


 俺がそう言うと、フランは不服な顔をして無言で降りる。

 えっ? まさか本当に彼女出来たって気づいちゃったの?


 俺はフランの反応に戸惑いながら、とりあえず父さんと母さんについて部屋に入った。


―――


「そうか、まさか王立魔法学園でも成績優秀とは……」

「すごいわねライト! さすがお父さんの子だわ!」


 俺たち家族四人はテーブルを囲って椅子に座り、俺の学校での生活の話をしている。

 とりあえず、俺は入学してからの事を話した。

 詳しいところまでは話してはいないけど、いろいろあって友達が出来て、その中の一人が王子だったって事や無難に成績の話をした。

 アレクの話をしたときはまさか、「王子様と友人になるなんて……」と二人してびっくりしていたけど、俺からしたらアレクはそこらの人と変わりない。

 むしろ、腹黒くで王子には思えなくて逆に警戒しないといけないほどだ。

 ちなみに決闘とかそう言った話はしていない。

 もちろん修学旅行の話もだ。


 それと、どうやら父さんと母さんは無詠唱とか出来きたり、魔法戦士と呼ばれるようになったといっても王立魔法学園で優秀な成績を収められるとは思ってなかったらしい。

 まぁ、普通の家庭から生まれた子がそんな事になるなんて思わないだろうし、現実味がないのだろう。

 目の前では、「さすが、あなたの子供ね!」「いやいや、母さんの子だからだよ!」と仲良さそうな親がいる。

 まさか、この年で新しい弟や妹が出来るとかないよな?


 俺はそんな事を思いながらふと横を見ると、無言で下を向いて座っているフランがいる。


「……お兄ちゃん彼女出来たの?」


 フランが不意に顔を上げたかと思うと、俺に核心を突く質問をしてきた。

 いやいや、早くないか!?

 こういうのって俺が夏休みをかけても言えずに終わってどうしよう……とか悩む展開じゃないのか?

 なのに、夏休みに入って家に帰っての初日、しかも家に入ってまだ一時間もしていないのに……。

 ……いや、これは神様が俺にくれたチャンスかもしれない。

 ここで早く清算しろと。

 ならばそれに乗るしかない! ……乗っていいよな?

 でも、ここで嘘ついても何もならないし……いくしかない!


「……うん、実は彼女が出来たんだ」


 俺はいろいろ考えた末に正直に話す事にした。

 こういう場合の嘘は後で取り返しのつかない事になる。

 でも、なんだろう……? 父さんと母さんに彼女がいるって言うより妹に言う方が言いにくいってのは……。


 俺は言葉を口にして、フランの反応を見る事にした。


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