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この展開はなんでしょうか?

「また、そんな嘘を言って――」

「本当だって! ほら!」


 俺の言葉を信用していなかったアレクだけど、俺が再度言うと馬車の外へと目をやる。


「……どうやら本当のようだな」


 俺とアレクが視線を送る先には、山頂には黒い雲がかかっていて、なんだかなんとも言えない雰囲気を醸し出している山があった。

 それは賢者の家の時と違って、雰囲気……オーラがあって『ここはなにかまずい』と本能に訴えられる。

 封印されているのに、こんなにも空気を変える影響力があるとは……。

 確かに、この雰囲気を感じたら賢者を敬う気持ちが分かる。


「これが邪神の封印されている場所……」

「……何か物凄く雰囲気があるわ」

「なんかこわいです……」


 リノアがこわいと言いながら自然に俺の腕を掴んでいるけど、誰もからかう雰囲気はない。

 それほどまでに、あの山が存在感を放っているのだ。


 でも、これはこれで何か雰囲気が暗すぎる。


「これで行くのが違う場所だったら笑えるよな!」

「「「……」」」


 沈黙が馬車の中を包み込む。

 俺は空気を変えようとしたけど、滑ってしまった。

 視線がイタイ……。

 唯一の救いは俺の腕に感じるリノアの存在だけだった。


―――


「ここが賢者様が邪神を封印した山、ウォルグ山だ。邪神はこの山の山中にある洞窟に封印されている。ここは観光地として公開はされているが、入っていいのはここまでだ。ここから先は王国から派遣されている魔法使いや騎士たちが見回りされていて、中に入ったものは問答無用で処刑される。それに魔物も発生しているからな。魔法使いや騎士たちは物音にすごく敏感だ。危険だから絶対入らないように!!」

 

 ダグラス先生はみんなの前でそう言って、あからさまに俺の方を見てくる。

 いやいや、俺だって理由もなく無茶な事しませんてって。

 それに、こんな場所に入っていくメリットなんてないし。


 俺達は馬車に揺られ、話して見ていた山と違う山ではなく、やはりその山へと着いた。

 そして、山のふもとにある観光スポットで馬車から降りて、先生から説明を受けたのだ。


 そして、ダグラス先生の説明が終わると生徒はグループ行動となった。


「それにしてもダグラス先生、俺達だけじゃなくて他の生徒も見なくていいのか?」


 俺達の後ろを少し離れて、ダグラス先生がついて来ている。

 そこまで監視しなくても……俺だって邪神をどうこうして何か得する事もないし、するつもりもない。


「まぁたいがいの生徒は昔からその辺は親に教育されているからな。その辺りはちゃんとしておかないと貴族として個人だけじゃなく、家として責任というか、すべてはく奪されるからな。というか、邪神が復活したらそれどころの問題じゃないがな。それにライト、『俺達』じゃなくて『俺』だ。一緒にされては困る」


 くそ、アレクに言われ放題だ。

 それでも言い返せないのが悔しい……。

 本当なら、俺よりアレクの方がいらない事する可能性高いのに。


「まぁ、そんな事より早く見学に行くぞ!」


 そんな事って……ちょっと扱い酷くないですか?


―――


「本当になんか嫌な感じがするわね……」

「不気味です……」

「封印されていてこれほどの存在感を放つとは……」

「……賢者様はやはりすごいお方ですね」


 俺たち五人は立ち入り制限区内いっぱいまで近寄り、ウォルグ山を見上げる。

 空がどんよりしているのもあるかもしれないけど、そのせいもあって余計不気味に感じる。

 もちろんそれだけじゃなくて、何とも言えない気持ち悪さが漂っている。

 こんな気配を感じたら、誰も封印を解こうなんて思う人はいないだろう。

 明らかにヤバイ気がする。


「そう言えばここら辺りはいつも天気が悪いんだよな?」

「そうだ。いつも空はどんよりしていて、晴れるといった事はないらしい。もっともそれが邪神の封印による影響か地形や場所による影響かははっきりしてないけどな」

「そっか……」


 でも、この空気を味わえば邪神の影響だって思ってしまうよな。

 明らかに空気が違うし、晴れないなんてのも普通じゃない。


「ん? あれは……」


 アレクが呟きながら何かを見ている。

 なんだ?

 俺もその方へと視線を移す。


「ちょ、ちょっと待ってよ」


 あれはリースちゃん……。

 リースちゃんは同じグループ行動していたであろう、女の子達からシカトされ置いて行かれている。そして、同じグループだと思う男も他の女の子に頭が上がらないのか、リースちゃんを気にしながらも声をかけようとかはしない。


「もしかしたらあの子、ライトに告白するのに抜け駆けしたからシカトされているんじゃないのか?」


 えっ? まさか……。

 よくよく見ると、リースちゃんのグループの女の子は俺の放課後に包囲網を形成する女の子だった。しかもかなり積極的に誘って来るタイプの女の子だ。

 リースちゃんは必死に声をかけているけど、シカトされている。


「まぁ昨日の件はあの子が直接な原因じゃないけど、大事になりましたからね。抜け駆けしたのがバレたんでしょう」


 マジか……。

 俺が原因でそうなってしまっているのか……。

 なんか後味悪いけど、俺はもうリースちゃんに下手に優しく出来ない。

 それは余計にリースちゃんを苦しめるだろうし、リノアにも悪い。


「ちょ、ちょっとリノアどうしたの!?」


 急にセリスが声を上げたからびっくりして、そっちに顔を向けるとリノアがリースちゃんに向かって歩き出していた。

 えっ……? この展開はなに……?


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