案の定からかわれました
「ライト君、おはようございます」
「リノアおはよう」
「……ライト君大丈夫ですか? 疲れているように見えますけど……昨日は本当にごめんなさい」
「いやいや! 違うんだ! 昨日ちょっと久しぶり本気の戦いをして興奮しちゃってさ! 寝不足なんだよ」
もちろん嘘だ。寝不足ってのは本当だけど。
俺はあの後、シリウスに「国王様に向かって、父さん呼ばわりとはさすがに許されない!」とこんこんと小言を言われ、それが落ち着いたと思ったら学園長が問題収拾にかけつけたみたいで、とりあえず事情を聞くという名目で呼び出されたけど、内容は静かなる説教だった。
『あなたのした事は世間一般的には物凄い功績です。しかし、学生としては頂けません』『あなたは特別な能力を持っているのは分かっていますけど、過信しないように』と言った感じで、頭ごなしに怒られるんじゃなくて、ボディブローのようにジワジワと怒られた。
まぁでも、最後は『ウェルホルム王国としては助かった。との言葉を国王様より頂いています』という形で締めくくられ、お咎めはなしだった。
それで、部屋に戻ろうとしたらダグラス先生に呼び止められもう一度説教された。
あの先生は見かけによらず、意外とねちっこい。
とまぁ説教されまくって寝るのが遅くなったのだ。
「そうなんですか……無理しないでくださいね。体調が悪くなったら言ってくださいね?」
そう言ってリノアは俺の顔覗き込む。
少したれ目の大きな瞳が俺の目と合う。
……可愛い。
「大丈夫、リノアの顔見たら元気出たよ」
「も、もう! 何言ってるんですか!? ……でも、私もライト君の顔見たら落ち着きます」
「リノア……」
「ライト君……」
俺とリノアは見つめ合う。
「はいはーい! そこ二人!! 朝から見せつけないでくれる!!」
と、俺とリノアがいい感じのところでセリスが現れる。
「いいじゃないかセリス、これくらいイチャついてくれてる方が昨日みたいな事は起きないだろう」
「アレク!?」
こうもタイミングよく俺とリノアの天敵が現れるとは……二人ともタイミング計ったな!?
「全く……馬車で移動だから時期にアッレクス様やセリスも現れるって分かっているだろうに……」
シリウスがアレクとセリスの後ろで頭を左右に振って呆れている。
……そうだったよな。
今回の件で中止になるかと思ったけど、バグデスファミリーの脅威もなくなったし、事件もあとは衛兵やウェルホルム王都からの応援で、進められるようだし、リノアも元気という事で続けられることになった。
「さぁおまえたち、早く馬車に乗るんだ。特にライト」
「はーい」
そう、見張り付きで。
馬車にこそ同乗しないけど、、馬車の外でずっとダグラス先生が俺を見張る事になった。
なんだか物凄い問題児扱いだ。
ふと、リノアを見ると顔をまだ赤くしながら俯いている。
でも、その姿さえも可愛い。
「……ライト、惚気るのもたいがいにしろよ?」
「の、惚気てないわ!!」
危ない危ない……そう言えば俺、アレクに心読まれやすいんだった。
注意しないと……。
そうして俺達は馬車に乗り込んだ。
―――――
「でも、いいよね!! ピンチに駆けつけてくれる王子様! あぁ、憧れるわ!! リノアが羨ましい!!」
「も、もうセリス!! からかうのやめてよ!」
「いや、あの時のライトはかっこ良かったな。サッと俺達の元から去ったからな。なぁシリウス?」
「はい、アレックス様。 あの時のライトはまるでおとぎ話に出てくるヒーローのようでした」
「アレックス様にシリウス君まで!?」
「おまえらいい加減にしろぉぉぉおおおおお!!」
覚悟はしていたけど、馬車に乗ってから散々俺とリノアはからかわれている。
シリウスに至っては、珍しく乗り気だ。
あいつきっと昨日、俺が国王の事をアレクの父さんよばわりしたのを根に持っているな?
だいたい、俺がヒーローとか王子様って、元々の原因を考えたらなんでもない。
俺がリースちゃんの告白をちゃんと断れなくて、リノアに変な誤解を与えたから起きた事件であって、その原因を考えたらヒーローでも王子様でもなんでもない。
まぁ、セリスはともかくアレクはその辺も理解した上で言っているんだろうけど……。
「いいじゃないか。こうやって二人が仲良くやっている内は、今回みたいな事は起きないだろ? それにしてもバグデスファミリーもライトがリノアに誤解を与えたのがきっかけで壊滅される事になるとは思ってなかっただろうな」
「そうですね。まさか彼女を救う為に来た男一人に壊滅させられるとは思ってなかったでしょう。さすが魔法戦士、怒らせると恐いものです」
「囚われた自分を救う為に愛する彼が、自分を捕えた組織を壊滅させる……あぁドラマだわ!!」
うっ、アレクの奴、ここでぶっこんでくるか……。
それに、シリウスまで悪乗りしやがって……。
リノアに至ってはセリスに、「自分の為に悪の組織を壊滅させる彼氏なんていないわよ! すごく愛されているわね!」と言われ顔を真っ赤にしている。
くそ、この馬車の中は俺とリノアにとって完全アウェーだ。
なんとかして空気を……っ!
「あっ、あれが邪神の封印されているところじゃないか!?」
俺は馬車の外を指さしてあえて大きな声で叫んだ。




