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怒りが爆発しました

 …………ここはどこ?

 ゆっくりと目を開けると、薄暗い部屋らしいところに私はいた。

 見えるのは天井のようなもので、私はどうやら横になっているらしい。

 なんでこんなところに……?


 ……そうだ、私はライト君と女の子の事を見て、宿屋から出たんだ。

 そして、走っていたらどこにいるのか分からなくなって……っ!?

 早く逃げないと!!

 

「――っ!?」


 何!? 動けない!? 

 どうなっているの!?

 私は起き上がろうとしたけど、腕と足がどこかに縛られているのか動くことができない。


「へへへ、起きたか?」


 首だけは動かせるようで、声のする方を向くと私が気を失う寸前に見た男の顔があった。

 そして、その男は下卑た表情をしながら私に近づいてくる。

 なに……? いや……っ!

 私はこわくなり、反対の方へと顔を背ける。

 

「おいおい、そんなに避けるなよ。ちゃんと起きるまで待ってたんだぜ?」


 男は顔を背けた私の顔の方へと回り込み、覗き込むような感じで私に言葉をかけてくる。

 私はこわくて再度反対へと、顔を向けたけど、顎を掴まれ、向き直される。

 そして、私の目に男の顔が映る。


「やめ……てくだ……さい」


 私はなんとか声を出し、必死に訴える。


「いいねいいね、その怯える顔!」


 男はそう言って笑う。

 私は必死に抵抗しようとするけど、手と足は全く動かない。

 なんで……? なんでこんな目に? こわいよ……。


「じゃあもっと楽しませてもらおうか!」


 男はそう言うと、私の顔に顔を近づけてくる。

 いや! 気持ち悪い!


「やめて!」


 私は必死に顔を反らして抵抗する。


「そうだそうだ! もっと抵抗しろ! まぁ無駄だけどな!」


 男は抵抗する私を抑えるように上に乗ってくる。

 嫌……嫌っ!!


 私の脳裏にライト君の顔が浮かぶ。

 ライト君――助け……いや、ライト君は他の子が好きなんだ。

 その時、ライト君の顔が浮かぶと同時に、宿屋の裏で女の子と抱き合っているライト君のがフラッシュバックした。


 ライト君には違う女の子がいるんだ、私が自分でなんとかしないと!

 でも、どうやって……そうだ! 無詠唱!

 無詠唱で魔法を使うしかない!!


 私は抵抗しながら魔法をイメージしようとするけど、恐怖の方が勝っているのか全然イメージできなくて、魔法が発動しない。

 えっ、なんで!? 


 そもそも、うまく出来ていた訳ではないけど、少しの火くらいなら出せる事も出来たはずだ。

 ちょっとだけでも男が驚いて飛びのいて、慌てているうちに隙をついて詠唱魔法をつかえればなんとかなるはずなのに……。

 なんで……なんで!?


「へへへ、そろそろ俺も限界だからな」


 男はそう言うとさっきまでより力を入れて私を押さえつけてきた。

 ……私こんな形で……嫌……ライト君助けてっ!!


『ゴォォォォオオオンンン!!!』


「なんだ!?」


 突如、轟音が鳴り響き、私の上に乗っている男は轟音のした方を見る。

 なに? 何が起きたの?

 私も首を動かしそっちの方を見ると、ドアが破壊され埃が舞い、靄のようになっている中で立つ一人の人影が見えた。

 あれは……!?


「リノアの元から退け!! じゃないと殺す!!」



――――


「来たぞ!! 迎え打て!!」


 屋敷に入るなり、次は魔導具を構えた男たちが待ち構えていた。

 そして、いっせいに俺に向かって魔法を放ってくる。


 ちっ、ここでも待ち受けているとは。

 こっちは急いでいるってのに!!


 俺は飛んでくる魔法を防ぐために、マルコとの決闘で使った『秘儀 たたみがえし』と同じ要領で、目の前に土の壁を出現させる。


「なに!?」

「なんだと!?」

「そんなバカな……」


 魔導具で魔法を放った男たちは、俺の出現させた土の壁に魔法を遮られ、驚愕の声を上げる。

土の壁は下手に堅い岩とかよりも耐久力があるしな。


「俺は急いでいるんだ!」


 俺は驚愕し、呆然としている男たちに向かって、重力魔法を放つ。


「な、なんだ……」

「体が……」

「何かに……乗られて……いる……ような……」


俺の重力魔法を食らった男たちは、威力を増した重力に逆らえずに地面へと伏す。「安心しろ! 死にはしない!」 


 『今のところはな』と心の中で付けたし、俺は男たちの持っていた魔導具を一つだけ取り、後は闘気を発動させ破壊する。

 さて、隠し階段は……?


「邪魔くさい!」


 周りを見渡したが、それらしきスイッチがなかったから、俺は発動させている闘気で階段下の床を殴る。

すると、地面が割れ地下へ続く階段を見つけ、俺は一気に駆け降りた。


「な、何者だ!?」

「今の音は貴様か!?」


 階段を駆け下りると、一段と大きな扉の前に男二人がいた。


「ぐっ…………」

「体が……」


 俺は男二人が何かするよりも先に意識がなくならない程度に威力を弱めた雷魔法を放つ。


「ドナルド=バグデスはその中か!?」


 俺はもしかしたら、まだ敵がいるかもしれないと思い、居場所を吐かす為に脅しように持ってきた魔導具を突き付ける。


「や、止めてくれ!」

「だったら答えろ! リノア……女の子とドナルド=バグデスはこの中か!?」

「……」

「答えろ!!」


 俺は魔導具の引き金にかける指に力を入れる。


「そ、そうだ! だからやめてくれ!」


 俺は男の言葉に扉の方を向く。

 そうか、この中にリノアが……。


「で、でも無駄だぜ! その扉の鍵はドナルド様が持って中にいるし、その扉は頑丈にできているし! 外からじゃ開けられない! もちろん防音もバッチリだからドナルド様が納得して出てくるまで開かないぜ!」


 『今頃女は……』ってニヤリとしながら言葉を続けた男を、俺は蹴り飛ばし、扉の方へ向いて闘気と気功を発動させる。

 リノア……待ってろ。


「うぉぉぉおおおおお!!」


 俺は闘気と気功を発動させた右手で扉を殴る。

 すると、扉は轟音とともに粉々に散った。

 そして、中の様子が見える。

 リノア……。


 中に浮かぶ光景は、リノアがベッドに手足を縛られて寝かせられ、そしてリノアの上に男が乗っているという光景だった。

 こいつがドナルド=バグデス……。


 リノアの上にいる男がそうだろう。

 俺はその男を見た瞬間に心が憎悪に染まる。


「リノアの元から退け!! じゃないと殺す!!」


 こいつは絶対に許さないっ!!!!


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