〜目撃しちゃいました〜
今回はリノア視点です。
「もう! セリスったら最近、私の事からかいすぎだよ!」
「はは!! ゴメンゴメン! でも、いいじゃん! 幸せなんでしょ?」
「そりゃまぁ……」
「このぉ~! すぐに惚気るんだから」
「だってセリスが言って来るからでしょ!? 私ちょっと出てくる!」
私はセリスにからかわれるのが恥ずかしくて、逃げ出すように部屋を飛び出した。
その際に、セリスは「ライト君に会いに行くの? ちゃんと朝までには帰って来てね!」って言ってきた。
それってどういう事!? って聞き返そうとしたけど、余計にからかわれる気がして止めて「すぐに戻るわよ!」って言って出てきた。
本来は四人部屋のはずなんだけど、私とセリスはライト君やアレックス様と行動しているせいか、みんなから少し距離を置かれているのか、最後に二人余ってしまったのだ。
セリスは「どうせ嫉妬でしょ? ほっといたらいいのよ。貴族ってそんなもんよ? 私たち……いや、リノアがうらやましいんでしょうね」って言っていた。
まぁ、確かに入学してすぐの光景を見たら分からなくもない。
クラス……いや、学年どころか、学園で一、二を争うような人気者と一緒にいるんだから。
でも、セリスはそんな真面目な話の時でも私をからかってくる。
最近のセリスは私をからかい過ぎだ。
まぁでも、セリスとは昔からの仲良しだから、本気では怒ってないけど。
それにしても、みんなから距離を置かれるのは少し堪える。
まぁでも、私はその学園の人気者の一人、ライト君に大勢の目の前で告白されて付き合っているんだから仕方ないかもしれない。
でも、その時の事を今思い出すだけでも、恥ずかしい……。
しかも、私も言っちゃったし……。
……ダメダメ! 思い出しちゃダメ!
恥ずかしくて死んじゃいそう!!
「でも、嬉しかったな……」
あっ、私なに一人で呟いちゃってるんだろ!?
こんなところセリスに聞かれたら、またからかわれちゃう。
私は告白された時、告白した時の事を思い出して呟いてしまった。
恥ずかしい……。
でも、よくよく考えると、私はライト君と付き合っているだけじゃなくて、その後、ライト君直々に魔法の無詠唱……アレックス様が言うには十人しか許可されないものを教えてもうらうようになったんだから、反感を買うのもそりゃそうか。
みんなから距離を置かれるのも辛いけど、ライト君と別れるなんて選択肢は私にはない。
今回だけじゃなくて、前に街で男の人に絡まれた時も、ライト君は颯爽と現れて助けてくれた。
その時に私はなんとも言えない胸の高鳴りを感じた。
そして、その人と付き合えるなんて夢の様だ。
私は今ものすごく幸せ。
「でも、セリスにからかわれるのはね……」
だって、セリスはからかいすぎなんだもん。
私は誰に言うでもなく呟いてしまった。
「ん? なに?」
廊下を歩いていると、何やら外からどさって音がした。
なんだろう……?
私は気になって窓から外をのぞいて見た。
「っ!?」
私は外の光景を見て驚き、口を抑えて後ずさる
そんな……そんな……。
私の目に入ってきた光景はライト君が横になっていて、上に女の子が乗っているところだった。
そんな……何かの間違いのはず……。
私は勇気を出してもう一度確認してみる事にした。
きっと何かの間違いのはず……。
「っ!?」
私の目に入ってきた光景はライト君の手が女の子の背中に回っている光景だった。
うそ……なんで……?
私は自然と目から涙が出てきて、その場所がいるのが辛くなって走りだした。
「あっ、リノアもう戻って――ってどうしたの!? どこいくの!?」
走っていると、セリスの姿が見えたけど、私は立ち止まる事なく、走り去った。
何……訳が分からないよ……。
どうして? ライト君……?
そして私は走り続け、宿屋を出た――。
――――
いったいどれくらい走っただろう?
何も考えずにただ走っていたから、正確な場所が分からない。
「たぶんそんなに遠くまでは来てないと思うけど……」
周りには人が行きかっているし、まだ観光地の周辺だと思うけど……。
それにしてもライト君……ううん、今は何も考えたくない。
「お嬢ちゃんお困りかい?」
声に振り返ると、そこには下卑な表情を浮かべる三人組の男がいた。
「い、いや大丈夫です」
私はそう言って立ち去ろうとする。
あの表情……嫌な気がする。
早く逃げないと……。
「そんな避けなくてもいいじゃん! 俺達が助けてやるからよ?」
立ち去ろうとする私の腕を一人の男が掴んで、あとの二人が私を囲む。
なに? なんなの!?
「やめてください!」
私は手を振り解こうとしたけど、男の力が強くてそれが出来ない。
なに? こわい……。
「ちょっと静かにしてろ」
男が低い声で言うと同時に、私は布を鼻にあてられる。
えっ!? なに!?
すると、眠気が襲ってきた。
私はそれに抗うけど、睡魔に勝つことができない。
これはいったい……私はどうなるの……?
薄れゆく意識の中で、目に映るのは下卑に笑う男達の顔。
嫌……誰か助けて……。
そして、私は意識を失った。




