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手紙をもらいました

「ライト、それでリノアとはどこまでいったんだ?」

「いや、何もねぇよ! だいたい告白もたいがい勢いだったのにこれ以上、先を急いでたまるか! 軽い男に見られるだろ!」

「軽い男じゃないのか?」

「アレク、おまえなぁぁぁあああああ!!!!」

「アレックス様……少し発言が……」


 今日泊まる部屋は四人部屋で、俺とアレク、そしてシリウスの三人が一緒の部屋だ。

 本来は四人一組なんだけど、男子生徒は俺たちのメンツにみんな恐縮して誰も一緒の部屋になりたがらなかった。

 まぁ半分以上、アレクのせいだろうけど。

 

 王子と一緒の部屋なんて、気を使うだろうし、シリウスが後ろから目を光らせているからな。最近は俺にこそ、少しマシになったけど、相変わらずアレクに何かないようにいつも護衛のように見守っている。


 アレクと仲良くなりたい生徒は多いが、シリウスの目力に恐れをなしているようだ。

 でも、これぐらいでビビッてたら戦士学校に行ったらどうなる事か……。

 それこそ失神するかもしれないな。

 そう思うと、本当にこの魔法学園は、お嬢様とかお坊ちゃんとかいった言葉が良く似合うかもしれない。

 戦士学校に通う生徒も貴族の子供が大半だけど、同じ貴族でもここまで違うとは……。

 

 それにしてもアレクの発言よ。

 本当に一国の王子の発言か?

 シリウスが言うのも分かる。

 俺からしたら普段といい、普通の生徒と変わりないんだけど。

 

「そう怒るな、学生の旅行とはこういうものだろ?」

「「……」」


 アレク……それは間違いないけど……。

 やっぱあれか?

 王子だからって庶民の生活に憧れるというやつか?


 ……そうだとしたら、これからもアレクはいろいろやってくれそうな気がするな。

 なんだか先が思いやられる。


 横を見ると、シリウスも同じような気持ちなのか、いつもと若干表情が違う。

 なんだか今は少し、シリウスと心が通じている気がする。


「ん?」


 俺とシリウスが固まっていると、アレクがドアの方を見て何かに気づいた。


「なんか気配がしたと思ったら……なんだあれは?」


 見ると、ドアの下のスペースから、何やら手紙みたいな便箋が中に入って来ていた。


 アレクが気になってそれを取りに行こうとすると、シリウスが「もしかしたら何かのトラップかもしれません。ここは私が……」と言ってアレクを制止し、便箋の方へと歩き出した。


 俺はシリウスの行動を見て「そんな事ある訳あるか! どう見てもただの手紙だろ!」と思ったけど、口にはしなかった。

 でも、俺からしたら、ただの手紙に注意深く歩み寄るシリウスの光景はあまりにもシュールだった。


 だいたい、戦争とか国王が暗殺されかけたとか、物騒な話は聞いた事ないし、そんな事ないだろう。

 いや、水面下であるのかもしれないけど、もしあったとしたらアレクの護衛はシリウスだけじゃなくて、SPみたいなのがいっぱいいるだろう。

 それどころか、こうやって学園に通う事すら許されないだろうしな。


 でも、シリウスが護衛として全うするなら、アレクの反応に呆気にとられて、人の気配に気づかないってのはいけないだろうに。

 シリウスもまだまだよのぉ~。


「これは……」


 俺がそうこう考えているうちに、シリウスが恐る恐る便箋を開け、中から紙を出す。

 ほら、手紙じゃん。


「シリウス、なんて書いてある?」


 アレクも手紙だと認識したようで、何が書いてあるのか気になったのか、シリウスに歩み寄る。

 俺も手紙が気になったので、アレクに続いてシリウスに近づく。


 普通こういう時やり方の手紙の相場って、女の子からの呼び出しな気がするけど。

 アレクか? それともシリウスか?

 それとも、裏をかいて『果たし状』的なものだろうか?


「どれどれ」


 俺は覗き込むようにして手紙を見る。


『ライト君、宿屋の裏で待ってます。リノア』


 えっ!? 俺!?


「くくく、さすがライト、モテるな」


 アレクはニヤリとしながら俺の方を見る。

 そして、シリウスは『やれやれ』といった感じで俺に手紙を渡してくる。


 そこには確かに俺に宛てたように、俺の名前も書いてあるし、リノアっても書いてあるけど、リノアってこんな事するだろうか? 

 まぁ、字は女の子が書いたっぽいけど。


「どうした? 行かないのか? もしかしたら昼間の話で、ライトが変な目で見てたからじゃないか?」

「そんな事……っ!! ……してねぇよ」


 完全に否定できない自分が悔しい。


 とりあえず、こうやって呼び出された以上、行ってみないといけないだろうな。

 シカトして本当にリノアだったとしたらえらい事だ。

 まぁそれに、この手紙がもし、男が偽装で作ったもので『果たし状』的なものだとしても問題ないだろう。

 何人いても一緒だ。

 それに最悪、空飛んで逃げてやるし。

 

 ……なんだろう?

 そう考えると悲しいかな、男子生徒にいろいろ嫉妬を買っていそうな俺としては、その線が強いように思えてしまう。

 それに俺は絡まれ体質だしな。

 はぁ~。


 まぁでも、とりあえずは行ってみないとどうしようもないので、俺は手紙をポケットにしまい指定された場所へと向かう事にした。

 そして、部屋を出る時、アレクに「どっかから見といてやろうか?」って言われたけど「この部屋から出るな!」と言って部屋のドアを勢いよく閉め、部屋を後にした。


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