一学期最大のイベントがやってきました
「リノア、おはよう」
「ライト君、おはようございます」
俺とリノアは教室で朝の挨拶を交わし、微笑み合う。
もうこれも日課になってからそこそこ経って、リノアとの関係もよそよそしいのはなくなった。
あのリーゼルたちとの決闘から二ヶ月弱、一学期も半分が過ぎた。
あの決闘の後に告白して、オッケーの返事をもらって俺は有頂天になっていたが、有頂天になって場所を忘れていた。
腕の中にいるリノアの幸せを感じていたけど、しばらくして我に返ると、穴に入りたい気分だった。
ふと、周りを見るとアレクやセリスはもちろん、観客も全員無言で生暖かい目で俺とリノアを見ていた。
そして、俺だけじゃなくリノアも我に返って、その様子に気づくと、みんなから一斉に歓声が上がった。
それと同時に、俺とリノアはアレクとセリスにからかわれまくった。
今思い出しても恥ずかしい……。
まぁ、でもみんなの前で告白してオッケーをもらった事で、俺の放課後の包囲網は縮小されたし、リノアに変に絡む男もいない。
リノアに絡む男がいなくなったのは、俺の力を見て手を出したらこわいと思ったのだろう。
でも、そのせいでアレクやマルコ、その取り巻き以外の男子生徒からは疎まれて、良い関係は築けていない。
時々、睨んでくるような視線を感じる事があるけど、俺はそれを華麗にスルーしている。
それが余計気に入らないのか、舌打ちされる事もあるけど。
だから、男友達は今のところこれ以上は望めないだろう。
まぁでも、ここ以外に前の学校で男友達はいるしな。
一個年上だけど。
今のところ大きな問題はないけど、あれだけみんなの前で告白したにも関わらず、まだ俺の包囲網が完全になくなっていないのが問題か。
数は少なくなったけど、その分、残っている女の子は意思が強いのか、誘い方とかも強引になっている。
まぁ俺はその度に『リノアと付き合っているから』と公言し、それでも引かない時はアレクの王家パワーで逃げている。
この包囲網は少し厄介だけど、でも良い事もある。
それは、リノアがやきもちを焼いてくれるからだ。
俺が包囲された後にリノアに会うと「ちゃんと断ってくださいね?」って上目遣いで頬を膨らませながら言ってくる事がある。
その姿を見る度に俺の心はメロメロにされている。
とにかく今、幸せだ。
「朝からイチャつなかいでよね」
「そうだぞ。学生は学生らしく健全な付き合いをしろよ」
ニヤニヤしながらセリスとアレクがやってくる。
そして、その後ろにはおなじみのシリウスがいる。
いや、健全な付き合いしろって……。
「ただ挨拶をしてただけだろ!」
まったく、この二人は……。
いつも何かあると俺とリノアをからかってくる。
最近ではシリウスも時々「アレックス様の親友なら、それに恥のない付き合いをしろよ」とか言ってからかってくる。
まぁシリウスの場合は顔が真顔だからからかってるんじゃんくて、本気かもしれないけど。
「いや、イチャついているように見えたよね? シリウス君?」
「あぁ、そうだな」
……やっぱりこいつは真顔で冗談をいうタイプなのかもしれない。
「……シリウス、冗談で言ってると思うから真顔はやめてくれ」
あの決闘の後、『こういう事があったら危ないから』というもっともらしい理由をつけて、リノアとセリスを無詠唱の特訓に誘う事に成功し、俺の目的は達成された。
その際に小声で「良かったな」とアレクに言われたけど。
そうして、一緒に行動するようになってマルコ達を含めた七人は仲良くなった。
セリスとリノアも慣れて、最初はシリウスを『様』づけしていたけど『君』に変わった。
ただアレクだけは『アレックス様』だ。
さすがに王家の、しかも王子相手に馴れ馴れしくは出来ないらしい。
だから、あいつの事を呼び方も含め、普通にしているのは俺くらいだろう。
アレクは「俺も普通に呼んでくれていいぞ」と言っていたけど、セリスやリノア、それにマルコ達も全力で顔を左右に振っていた。
そして、俺はここぞと言わんばかり「そりゃ王子だから仕方ないよな」と言ってやった。
あの時のアレクは『くそっ』って顔をしていて、その顔を見てしてやったりな気分になったな。
まぁ、俺以外のみんなは『なんて言い方を!?』みたいな顔をしていたけど。
とまぁ、無詠唱の訓練を通じて、だいぶみんな仲良くなってきた。
肝心の無詠唱は、まだ完璧には出来ていないけど、男連中は簡単な魔法なら出来るようになってきた。
一番進んでいるのはアレクだ。
少し気に入らないけど。
リノアとセリスは、まだうまく発動させるまでには至っていない。
少し火がポッと出たりするくらいだ。
まぁ、元々二人は治癒系の魔法の方が得意みたいだしな。
いずれは治癒魔法の無詠唱も教えたいと思うけど、治癒魔法の方がイメージが難しいから、まずはイメージしやすい攻撃魔法からだな。
「まぁそんな事より明日からは楽しみだな」
そんな事よりって……自分からからかい出したくせに、アレクのやろう……。
「そうですね! 明日から一泊二日の旅行ですもんね」
「いやセリス、旅行じゃないと思うけど……」
明日から一泊二日で、邪神を封印した賢者の生まれた場所と、邪神の封印されている場所を実際に見るという目的で、一泊二日で出かけるイベントがあるのだ。
両方ともウェルホルム王国内にあるけど、この街からは離れている為、一泊二日で行くらしい。
賢者の生まれた場所と邪神の封印されている場所は、両方とも観光名所になっていて、厳重な警備がされているけど、見る事が出来るみたいだ。
「まぁでも、楽しみだな。ライト、問題を起こすなよ?」
「いやいや、アレクこそいらん事して問題にしないでくれよ?」
まぁでも確かに楽しみだ。
これが一学期で一番のイベントらしいし、これが終われば夏休み。
…………夏休み……フラン……どうしよう……?
俺は頭の中にフランにリノアの事を話さないといけないという事を思い出したけど、頭を左右に振って振り払い、明日からの事を考える事にした。
今日も更新できました!
ちょっと夜長起きして執筆したり、時間の合間縫って執筆時間増やして書けました。
でも、いつまでもつか分かりません。
出来る限りこの時間の使い方で頑張ろうと思いますが、おそらくどっかで限界がくると思います。
出来る限り頑張りますので、毎日更新が途絶えても読んで頂けたら嬉しいですm(__)m